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テクノロジカル・ハザード ~くびきから解き放たれたトランスヒューマンは神か獣か~

和多野光

第31話「Not war,but...」

「――うぉぉぉぉぉらぁぁぁぁあ!」
一人目が来たか。
成程。早いな。人間にしては、だが。流石に動きが直線的すぎる。それでは『躱してくれ』と叫んでる様なものだぞ!
迫り来る敵の大振りな一撃を躱し、私は問うた。
「貴様が勇者か?」
「……ああ」
「名は?」
「(立花)ハガネ(鋼)……」
「そうか。私はミズメだ。宜しくな」
「……」
ん?
「どうした?」
「いや……人の言葉を話せるんだな、と思っただけだ」
何?
「我等の事を言葉も解さぬ魔物だとでも教えられたか?」
「……」
憐れな。レンから貴様等の境遇を聞いてはいたが、帝国はこの者達を本当に生物兵器としか考えておらんのだな。
同情はするが、此方にも此方の事情がある。
悪いが……邪魔をするなら排除させて貰うぞ!
「ッ!」
む!?避け……いや、何だ?まるで私の手が意思に反して勝手に除けた様な……
「無駄だよ。そんな物理的な攻撃は俺には当たらない。あんた等にこんな事言っても分かんねぇと思うけど、俺の力は『マグネット』。俺は認識したものを強制的に『N』と『S』に分類出来るんだわ。まぁ、分かりやすく言うと……」
 蹴り、か?そんな見え見えの構えで当てられると――
「強ければ強い程その攻撃は俺を避けていくし、応用すればただのパンチや蹴りをコイルガン並の威力に出来るんだよ!」
 っ、早い!?
「ストライクシュートォォ!」
「ぐはぁぁっ!?」
 馬鹿な!先程のアレすら耐えたレンの防壁が破られただと!?
ただの蹴りが……なんという威力だ……!
「悪ぃな……こんな事してもただの憂さ晴らしにしかならないって事は分かってるんだけどよ、この紋章のせいであんた等にしか当たり散らせねぇんだわ。だから、大人しく殺されてくれや!」
く、まさか帝国の勇者達の実力がこれ程とは……
「すまない、レン……」
どうやら私はここまでの様だ。
迫り来るあの拳が届けば今度こそ私は命を落とすだろう。
「謝るくらいやったら暴走せんと、ちゃんと役割くらいしっかり果たし。何の為に僕が別行動しとる思うねん」
ああ、これは今際の際の幻聴なのだろうか……レンの声がこんなにも近く聞こえる。あれだけあった痛みが嘘の様に消えて……
「うぎぁぁぁぁぁぁ!?」
眼前に迫っていた拳が冗談の様な速度で真っ直ぐ反対方向へと千切れて飛んで行った。
「ジヤさん、不本意やろうけどこの子連れて国に戻っといてくれます?」
レ……!?
「宜しいので?」
「これで何も学ばん様ならもう見込みは無いやろ。ルドラのオッサン(身内)でもそう言うと思うわ」
一体……何……
「お優しい事ですな。貴方様の御手を煩わせる様な無能等、生かしておいても害にしかならないと愚考致しますが?」
「僕もそう思うわ。まぁでも僕魔王ちゃうし、今回も戦争しに来たんとちゃうから別にええやろ」
「ふふ、『魔王』ではないと……確かにそうですな。分かりました。貴方様がそう仰るのであれば不本意ではありますが、従いましょう」
「頼んます。じゃあ僕は本来の行動に戻りますんで」
「畏まりました。どうぞご存分に」
「ほな」
「待っ……!」
レンの姿が消えると同時に腕が千切れて苦しんでいた立花某ナニガシは全身の肉をグズグズに溶かしながらその身を地に倒した。
「ほう。あれはお嬢様の毒ですな。あの一瞬でそこまで仕込まれていましたか。いやはや……何とも恐ろしい方だ」
サラ様の毒!?では私達も早くこの場から去らなければただでは……!「ひっ……!?」
等と考えていたら隣から恐ろしい程の殺気が私に向けて放たれた。
「心配せずとも貴様にもレン様は防壁を貼り直して下さっておる。あの方の慈悲に感謝しろ小娘。次は無いぞ」
それがキュアデウス家に長年眷族として仕えているジヤ殿の殺気だと気づくまでに私は少々の時間を要した。
普段あれ程までに温厚な人物がこれ程濃密な殺気を纏わせるなど誰が想像出来よう。
この魔力、下手をすればルドラお爺様より……
結局、私とは一度も目を合わすことのないままレンはこの場から姿を後にした。
私は足手まとい以外の何者でも無かった。
敵戦力を過小評価し、感情に身を任せ、レンの作戦を台無しにした。
これが戦争であれば死罪も免れないだろう。
兵は結果を出してこそ兵なのだ。
結果も出せない命令違反の兵等、最早敵兵に等しい。
「成程。貴様の様な者にとってこの仕打ちはある意味『死罪』より重い罰と成りうるか。自身の事を『魔王』ではないと仰られていたが中々どうして。存外、人をよく見ておられる」
「……」
「立て。傷はもう癒やして頂いている筈だ。行くぞ!」
「は……!」
こうして私はその場を後にした。
後悔と無力だけを残して。

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