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テクノロジカル・ハザード ~くびきから解き放たれたトランスヒューマンは神か獣か~

和多野光

第30話「Death stranded」

「ほ、報告致します!魔族が……魔族が帝国に侵入したとの情報が!」
「何だと!?場所は!?数は!?」
「場所は帝国東部!か、数は魔王クラスが数名との事です!」
 馬鹿な!下級ならともかく魔王クラスだと!?
「結界はどうした!?」
「そ、それが……何故か作用しなかった模様で……」
 ちぃぃ……何という事だ。一大事だぞ。
「状況は?」
「東部の軍だけでは殆ど足止めにすらなっておらず、死者多数!被害は甚大です!」
 だろうな。相手が本当に魔王クラスなら只の一般兵等、塵芥を吹き飛ばすに等しい筈だ。
 東部は最も侵入が困難な海側にある為にまだまだ未熟な新兵を配属する事が多い。そこを狙われたか。
「それと奴等は真っ直ぐに此処、帝都を目指しているそうです」
 はあ……?何だそれは?幾ら何でも冗談だろう?
「幾ら魔王クラスとはいえ、真正面からたった数人で帝国に勝てるとでも思っているのか……?」
「し、しかし……報告によりますと、現れた魔族共は逃げも隠れもせずに本当に真っ直ぐ帝都へと歩いて向かっている様で……」
 ……陽動?いや、だが魔王クラスを陽動に使うメリットがない。何だ……?向こうの奴等は一体何を考えている……?
「奴等が帝都へ着くまでにどれ程の時間的猶予がある?」
「凡そ数刻との目算です」
 短すぎる。
 今から各所へ通達したとて魔王を相手に出来る程の兵が集まるまでにどれ程の時間が掛かるか……
進行速度の遅さは此方を警戒しての事だろうが、足止めすら出来てない現状では何時その歩を早めるか分かったものではない。
「やむを得ん。勇者共を出すぞ。ランキング上位の者達を叩き起こせ!」
「は、はい!」





「っく……ぁぁ……」
まさか向こうの方から攻めて来るとはね〜。それもこんな朝っぱらから。
「デビュー戦が魔王ラスボスとかwww」
『マジウケる』じゃないよ佐々木さん。
「てか、本当にそいつ等を殺せば俺達は帰れるのかねぇ?正直どういう原理なのか俺にはサッパリなんだが……」
それは言わない約束でしょ立花君……
「(こ、コレが勇者の中でも十傑と呼ばれる英雄達なのか……?)」
「『まだ年端もいかぬ子供ではないか……』なんて顔されても困るんだけど?私達を喚んだのはそっちじゃん」
「(な、心を読ん……!?)」
「でなんか無いよ?ただオジサンがそんな分かりやすい顔してるってだけのは・な・し♡」
コラコラ……葉月ちゃんの役割は索敵でしょ?下級兵なんかに無駄なリソースを割かない。
「は〜い♡」
ったく……うちのクラス、ランカーの癖が強すぎるよ。
「じゃあ手始めに一発デカイのかまそうか。魔王って生物がどれ位の耐久値持ってるか分かんないし。それで殺られてくれれば良し。殺れなくてもダメージを負わせられれば尚良しって事で」
「「「「異議な〜し」」」」
……で、誰が撃つ?そう聞くと皆が一斉に手を挙げた。
だよね……被害を気にしなくていいレベルの力の放出なんて今までしてこなかったから皆やりたがるよね。ん〜、でも『初撃を当てる』って意味では……
「佐々木さん、お願い」
光の速さ(雷撃)なら流石に向こうも躱しきれないだろうし。
「オッケ〜b、任せて。『最大級』の落とすから。結花(葉月)、ソナー座標の感覚共有yrよろ
「ッケー♪」
「じゃあ……やるよ〜(。>﹏<。)+++……」
いや、ちょ……佐々木さん、君どんだけの力で撃つ気!?超サイヤ人3みたいにバチバチ言ってるけど!?
「皆!早く――」
離れ……てるね。
「サンダァァ……ロッドォォォ!」
そして、半径数キロにも及ぶ極太な質量の光の柱が形成された。


★★


あら……今のは……
「伯父様?」
「うむ、恐らく此方の位置を探られたな。来るぞ」
そんな伯父様の言葉と共に回避不能の速度で光の柱が頭上から降り注いだ。
「……」
流石ね。レンの予想通り、奴等は初手に回避不可能な速度の一手を打ってきた。
確かにコレは対策をこうじていなければ幾ら私達とはいえ纏めて殺られていたかもしれない。
「(シュマ、聞こえる?)」
「(は、はい!ご無事ですかサラ様!?)」
「(ええ、レンの魔導具のお陰でね。そっちは?)」
「(此方も無事です。しかし……)」
「(そうね……うまい具合に散らされたわ。合流しようにもこの粉塵じゃあ難しそうだし。したらしたでまた同じ様な攻撃をしてくる可能性が高い。此処からは各自別行動で行きましょう。ルドラ伯父様は無事として、クダンちゃんやミズメちゃんは大丈夫かしら?)」
「(サラ様。奴等も覚悟の上、無理を言って同行して来たのです。余計な心配は……)」
「(その通りだ。我々も覚悟の上、此処へ付いて来ている。心配は無用だ)」
「(相変わらず可愛げがないわねクダンちゃんは)」
「(ガハハハハ、流石は我が血族よ)」
「(伯父様、ミズメちゃんは?)」
「(おお、ミズメならこの粉塵に紛れてもう飛び出して行きおったぞ?)」
あの娘ったら本当に……
「(ジヤ……)」
「(畏まりましてございます。私めはミズメ様の援護に)」
「(頼んだわよ。私達の役目はあくまでレンが目的のモノを手に入れるまでの間、勇者達や帝国の奴等の目を此方に向けさせる事。殺すのは良いけど、殺されるのだけは勘弁してね?今ので理解してると思うけど、敵にも私達と同等かそれ以上の危険度の奴等がいるんだから)」
「(うむ。分かっておる!)」
「(は!)」
「(委細承知!)」
それと……
「(オミナ様は其処で待機をお願いしますね?)」
「(……っ、承知した)」
危ない、危ない。
やっぱり私が注意しなければ動こうとしてたわね、あの娘。
幾ら修行(放浪)中の身とはいえ、貴方は他国の貴族位にあたる人物なんだからミズメちゃんみたいな真似はしちゃ駄目よ。
貴方の様な人には、この戦場は未だ早すぎるもの。
「(さ、それじゃあ戦争を再開しましょうか)」
もうこれ以上、奴等に『あの方』を使わせ無い為にも……ね。


★★★


「うっそ!?なんで?!あの中からこっちに向かって来てる高速移動体が1……いや、2体いる!多分、敵!」
嘘だろ……アレを耐えるのか。という驚きもあるが、それ以上に何体か殺れたかもしれないというのに僕等に何も起こって無い事の方が余程ショックだ。
やはり、帝国の言う事はデタラメだった。
奴等には僕等を帰す気なんて微塵も無かった。
分かっていた……分かっていた筈なのに……
「改めて現実として突き付けられると、ちょっと……キツいなぁ……」
思わず口に出してしまった。
魔王を倒して帰るという選択肢が無くなってしまった今、僕達に残された道は『戦って死ぬか』『奴隷として生きるか』の二択しかない。
そして……前者はこの瞬間を逃せば次はいつ訪れるか分からないと来たもんだ。クソったれ!
「うっし……じゃあ俺、行ってくるわ」
悲嘆に暮れる僕等を余所目に立花君が突然そんな事を言いだした。
行く?何処へ?
残念ながら思考停止に近い僕には彼の言っている意味がよく飲み込めない。
「まぁ、薄々分かってた事なんだけどよ……いや、分かってたからこそか?逆に目ぇ覚めたわ。うん」
……?
「俺はこの世界で生きていく!生きていくしかねえんだなって事だよ」
「立花君……」
「でもな。流石にこのまままた戦争用の兵器としての生活にただ戻されるっていうのも癪だからよ、ちょっと憂さ晴らしでもしてくらぁ」
それだけ言うと、彼は笑いながら城を後にした。
「万が一、俺が負けた(死んだ)ら後は任せたぜ。和部!」
そんな無責任な言葉を僕に遺して。



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