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テクノロジカル・ハザード ~くびきから解き放たれたトランスヒューマンは神か獣か~

和多野光

第20話「男が休憩中の女性陣と話そうとする場合は手土産を忘れるな!」

「……ズズズ」
 はぁ〜、お茶が美味い。
「そう言えば、エルカトルって結構色んな人種の方がいますよね」
勿論、大半は普通の人間?種の方達ではあるのだがイングランスと比べると見た目からして亜人種の様な人達をよく見かける。
ゴルディさん然り、ミルガーさん然り。
「やっぱり種族間での揉め事とかってあったりするんですか?」
 そんな疑問を休憩室にいたセントラルの職員の皆さんに聞いてみた。
「勿論ありますよ〜。流石にここ(セントラル)では滅多に見ないですけどね〜」
 と答えてくれたのはかつて『月の魔女』と呼ばれた事もあるという、おっとり系職員のローレルさんだ。俺が持ってきたお茶請け(ミニ大福)を嬉しそうにパクつく姿からは想像も出来ないが、これでもエレメンツというイングランスでも屈指の魔法使いに贈られる称号を得ていたのだとか。
「エルカトルの北部に行けば割と頻繁に見られますよ〜。あそこはガルデニアやオトギリとも隣接してますからね〜」
「オトギリ?」
 おや、知らない国名が出てきたぞ。
「ガルデニアの隣にはオトギリ教国と呼ばれる宗教国家があるんですよ〜。ガルデニアと並び立つ大国でもあるんですが〜、イングランスとは国交を断絶してるのでジュウゴさんは見た事がないかも知れませんね〜」
「こ、国交を断絶ですか。過去に戦争でもあったんですか?」
「いえいえ〜、そんな生やさしいものではないですよ〜。彼等は〜、私達魔女の事を異端と称して虐殺していた過去があるんです〜。拉致や監禁は当たり前〜、中には子供や妊婦まで虐待していたという記録さえ残っています〜。幾ら過去の出来事だとはいえ〜、そんな畜生達と仲良くなんて出来ると思います〜?」
 思わない。全くもって思わない。
 なんと恐ろしい話だ。この世界には未だ魔女狩りの様な異端審問を行う馬鹿がいるのか。
「オトギリもそうですが、ガルデニアも中々ですよ?あそこは徹底的なまでの人至高主義ですからね。獣人なんかは普通に獣と同じ扱いを受けます。違法な奴隷制度も残っていますし、正直ジュウゴさんの様な見た目の方にはオススメ出来ませんね」
 次いでそんな助言をくれたのはウェアリア(獣人の国)出身の獣人、バイフーさん。
 バイフーさんは獣人の中でも珍しい白虎の獣人らしい。
 個人的な意見を言わせてもらえるのならば、虎の耳が生えてる以外は白髪なだけの普通に綺麗な女性に見えるのだが、彼女曰くそんな事はないらしい。
 お茶請けにゴロゴロと喉を鳴らしている所も可愛らしいのだが、本人はあくまでクールビューティーを装いたい様なので触れないでおく。
 話をまとめてエルカトルを中心に考えると北方にガルデニア帝国とオトギリ教国(北北西)があって、そのオトギリと隣接する様な形でイングランス王国(北西)が。そして西方の山間部にイミルミゼット(ドワーフの自治領)があって、南西の森林部にヴァナルス(エルフの自治領)。南方にはウェアリア共和国があると言う事か。(※因みにリスラーブ大森林は北部各国のそのまた上に存在しています)
 ふむふむ。
「逆にルシア皇国なんかはそこ等辺寛容だったりするよね〜、フーちゃん」
 ルシア皇国。魔族の国と呼ばれている所か。
「ええそうね、ロー。ルシア皇国はガルデニアと正反対の亜人種至高主義なので、割と魔物に近い容姿の方も普通に歩いています」
「勿論、見た目が人と何ら変わらない普通の魔族の人達もいますよ〜?」
 へぇ〜。それはそれで凄いな。だとしたら人と魔族の違いとは何なんだろう。
「単純に内包する魔力の差だけだとも言われてますが〜、詳しい事は分かってないんですよね〜。身体的な特徴から魔女と獣人のハーフが魔族だって説もある位ですし〜。な〜んて、ジュウゴさんの表情から疑問に答えてみました〜」
 なる程〜。つまり謎なんですね〜。あははは〜。
「あれ?じゃあ竜人も亜人って分類なんですか?」
「その疑問は〜、フーちゃんに任せます〜」
「ジュウゴ様、先ず第一に竜人様を亜人と呼ぶのはお辞め下さい。竜人様は獣人にとって神にも等しい方々になります。今後ウェアリアに立ち寄る気があるのであれば、絶対に言ってはいけない文言の一つとなりますのでご注意を」
 りょ、了解です。
「そして、それを踏まえた上でご説明させて頂きますね。竜人様とは神をも滅ぼす力を持った竜が人と交わり産み落とされた新たな種族だ、とも言われております」
 おお、神をも滅ぼす力を持った竜ですか。
「『竜人に手を出せば国が滅ぶ』。有名な諺ですが、これは誇張でも何でもなく史実を元に作られたものなのです」
 ふむふむ。
「では実際に滅ぼされた国が?」
「ありました。ジザクライス大帝国というオトギリとガルデニアの前身ですね。千年以上も続いた大国だったのですが、竜人様の逆鱗に触れ僅か七日足らずで歴史からその姿を消す事になったそうです」
 ひぇ〜、それなんて巨神兵。
「逆鱗って、一体何をしたんですか?そのジザクライスって国は」
「ジザクライスは異界から勇者と呼ばれる不思議な力を持った者達を喚び、当時平和を唱えていた竜人リルラ様を害竜として殺害したのです。そしてそれを知ったリルラ様の父であるガンド様が激昂し、破壊の限りを尽くした……とウェアリアでは伝えられています」
なる程〜。まぁドラゴン退治は異世界転生/転移モノにおけるテンプレみたいな所があるからその勇者(日本人)達の気持ちも分からんではない。が相手が知的生命体である以上、誰をどうすればどうなるかなんてちょっと考えれば分かりそうなもんだが……あれ?じゃあ彼奴等も何か目的があって召喚されたのか?
「バイフーさん、実はイングランスで勇者を名乗る子供達を見たんですが……」
「何ですって!?」
 問題……ありそうっすね。
「落ち着いて〜、フーちゃん。ジュウゴさん、喋ってる途中〜」
「……っ、失礼しました」
「あいつ等ガルデニアから来てたみたい何ですけど、本物なんでしょうか?」
「ガルデニア……ジュウゴ様が見た子供達と言うのは手の甲に十字の紋様がありましたか?」
「ありました」
「そんな……まさか歴史から抹消されたとされる召喚魔法が残っていたとでも?」
「でも〜、何でその子達はイングランスに居たのかしら〜?と言うかジュウゴさん、その子達何処で見たの〜?」
「グリアセルト魔術学院という所です」
「え〜!?ジュウゴさん、どうやってあそこに〜?幾らセントラルのギルドカードでもすんなり通してくれる様な場所じゃない筈ですよ〜?」
「何やかんやあってペンドラゴンさんって人に紹介状みたいなものを書いてもらったんですよ」
「わぁ〜、あのマーちゃんがそんな事するなんて珍し〜。流石、ジュウゴさんね〜」
 ま、マーちゃんって……知り合いなのか?
「ロー、今はそんな事よりも勇者の話です!それで?ジュウゴ様、彼等はグリアセルトで何をしてたんですか!?」
 ち、近い!可愛い!近い!
「え、え〜っと……グリアセルトの生徒さん達にボコボコにされてましたけど……?」
「は……?」
「あら〜♡」
「自分が彼等を見たのはグリアセルトの生徒さん達との交流戦で。その内の一人は最後、プラーラさんに暴言を吐いてぶん殴られて気絶してましたよ?」
「ぷっ、あはははは。あのプーちゃんに暴言吐くなんて命知らずね〜。流石、勇者〜」
「……伝え聞いていた話とはかなりかけ離れた勇者の様ですが、その方達は何か見たこともない力を使っていましたか?」
「使ってましたね。自分が見たのは何か特殊な力を宿した剣を顕現する能力です」
「特殊な力?」
「詳細は分かりませんが、相手が放った魔法を吸収或いは無効化していた様に思えます」
「ロー、知っていますか?」
「さぁ〜?魔剣の類なら楽団出身のスタッフの方が詳しいんじゃないかしら〜?でも確かに封魔の剣や吸魔の剣の類を自在に出せるんだとしたら厄介ね〜。初見の魔法使いは油断しちゃいそうだわ〜」
「確かに……そこら辺はどうだったのですか?」
「一人。ローレルさんが言うように初見でやられてしまった子がいましたが、それをみてキレた子がいまして」
「あら〜」
「思わず勇者の一人を殺しそうになった所をプラーラさんが止めて。で、そんな状況をよく分かってなかった勇者の一人がプラーラさんに向かって『ババア』と……」
「わぁ〜。よくプーちゃん、その子を殺さなかったわね〜。大人だな〜」
 実際には早期回復が間に合っただけで、死んでてもおかしくはなかったんですけどね。
「それで……剣は?」
「あ、そう言えば気絶と同時に消えてましたね」
「ならばその能力はその勇者にのみ適用されると言うことですね?」
「恐らく」
「むぅ、話を聞く限りでは未だ大国の脅威になる程の実力は無い様に思えますが……」
本国ガルデニアにはもっと優秀な奴等がいる様な事も言ってましたよ?」
「それは本当ですか!?」
 だから近いって!顎の下を撫でてみてもいいですか!?by心の声。
「え、ええ……それもかなりの数がいるらしいです」
「それは一大事ね〜。弱いとはいえグリアセルトの生徒達を相手に戦えるレベルの子が捨て駒(知られてもいい存在)として出てきたって事は〜」
「ええ、ガルデニアはまず間違いなく何かを企んでいるとみていいでしょう。流石に二度も同じ過ちを犯すとは思えませんが……」
「否定しきれないのが面倒な所よね〜。ガルデニアってジザクライスの生き残り貴族が作った国だから〜」
 つまり、かつての逆恨みに走る可能性もあるって事か。
「召喚魔法の存在も気になりますね。隠していたのか、見つかったのか、はたまた復元出来たのか」
「でも〜、アレって確か条件付きの超特殊大型魔法よね〜?流石に連続発動は無理だとしても〜、どうやってそんなに人数を喚んだのかしら〜?」
「分かりません。召喚魔法そのものが消滅したものと思われていた魔法ですからね」
「知るはガルデニアのみ、って事ね〜」
「貴重な情報をありがとうございます、ジュウゴ様。私はとり急ぎ、ギルドを通じてウェアリアに報告して参ります」
「いってらっしゃ~い」
 あれ〜?俺はただ世間話しに来ただけなのに大事になってる気がするぞ〜?あれ〜?
「よ〜し、じゃあフーちゃんの分も私が頂き〜!」
 こっちはこっちでマイペースだし。大丈夫なんだろうか……
「大丈夫よ〜。昔と今じゃ状況が違うし〜。私達みたいな存在ギルドもあるんだから〜。よっぽどの事がない限りは対処出来る筈〜」
 それは……俺もそうであって欲しいが……
「それにしてもジュウゴさんって本当に不思議ね〜。普通なら誰でも知ってる様な事も知らないのに、そのくせ誰も知らない様な事をピンポイントで拾って来るんだから〜」
 ギクリ。
「私としては〜、勇者なんかよりジュウゴさんの方がよっぽど気になるな〜」
 うぅ……ポワポワしてる様に見えて以外と真っ直ぐに核心を突いてくるなぁ、この人。
「ははは……そんな、偶々ですよ。偶々……新作のお茶請け、いります?」
 秘技、カラフルあられ餅!
「うふふ、お姉さんそういう誤魔化し方大好きよ〜。じゃあ、この可愛いお茶請けに免じて許してあげましょ〜」
 あはは……ありがとうございます。



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