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テクノロジカル・ハザード ~くびきから解き放たれたトランスヒューマンは神か獣か~

和多野光

第16話「エルカトルEast市場」

 あ〜、女性が三人寄れば何とやらとはよく言うがセントラルのギルドの女性陣はそれ以上だったな。
 前回は和菓子だったので今回は洋菓子路線でいこうと考えたのが間違いだった。
 ミスターでクリスピーなカラフルドーナツを作ってお土産として出したら、前回以上に女性陣が殺到。量?全く足りなかった。そして暴動とまではいかないが、食べれなかった職員がストライキを起こす程の騒動に発展。今回もリオンさんにお願いして調理スタッフと食材を確保してもらい、
結果としてちっちゃな馬車が埋まる程の種類と量を用意した事で事なきを得るに至った。
 え〜、手伝ってくれた皆さん。本当にありがとうございます。そして、すみませんリオンさん。今回も色々とお手数をお掛けしました。あ、このレシピですか?どうぞ、どうぞお使い下さい。迷惑料としてとっておいてくれればこちらも気が楽なんで。
「……ウチのスタッフが本当にすまない。普段であればこの様な事はないのだが、その……すっかり君の作る食べ物のファンになってしまった様でね。前回と同じくレシピの使用料は手数料や税を差し引いて、きちんと君のギルドカードに振り込んでおくから」
 ありがとうございます。いつの時代も女性を敵に回しては世が回らないとも言いますし、お気になさらないで下さい。
「達観してるね、君は」
 傍観してるだけですよ。思考を放棄してるとも言います。
「イングランスは楽しめたかね?」
 ええ、それなりに。縁あってグリアセルト魔術学院という所にも入れましたし、学院生と他国の子供達の交流戦の観覧やライブラリーの閲覧等も出来たので概ね満足しています。
「……君は本当に私を驚かせてくれる。あの有名なグリアセルト魔術学院に入れてもらえた上にライブラリーの閲覧まで許可されたのかい?」
 旅先でたまたま学院のOG(卒業生の女性)の方に出合いまして、推薦状を書いて貰えたんです。
 確か名前はマリン・ペンドラゴンさんって言ってたかな。
「それはまた……」
 ご存知で?
「いや、流石に会った事は無いな。風の噂で伝え聞いた事がある程度だよ」
 う〜む、リオンさんのこの反応……やはり結構有名な人物だったのか、あの人。
「それで、今後の予定はどうするんだい?」
「今後の予定、ですか?」
 と、言われてもエルカトルに戻って来たばかりだし暫くは(空の上にある)自室に籠もって撮りだめした映像でも見ながらのんびりするつもりなのだが。別にこの人に報告する程の事ではないし、するつもりも無いのだが何故そんな質問を……?
「「「「……(ざわっ)」」」」
 はっ!?殺気!?なんだ?急に静かになったぞ!?
「……と、まあ先程も言った様に職員の中には君のファンが非常に多くてね。ギルドの性質上、詮索や束縛はしたくないのだが参考までに伺っておきたいのだよ」
 ぐぬぬ、餌付けが過ぎたか。
 だがそうは言ってもこれ以上の飛び道具(目を引くお菓子)は早々ないぞ?
 うん、分かってるから料理人の方達は此方に視線を送らないで欲しい。大丈夫。もうレパートリーはないから!
「そう言われましても、これ以上のレパートリーはちょっと思いつかないのですが……」
 その発言と同時にドーナツを咥えながら絶望に打ちひしがれる女性職員の皆さんに、ホッと胸をなでおろす料理人の皆さん。何とも対照的なリアクションだ。
「そうか。(それを聞いて)安心したよ。幾らギルドとはいえ、冒険者の自由まで害してしまっては本末転倒だからね」
 うん、うん。ですよね。
「リオンさんの様な良識を持った人がこのギルドのマスターで良かったです」
「はっはっは、それは光栄だ。『良識』なんて言葉で称されるのは初めてだよ」
 えぇ〜?あ〜、まぁギルドマスターともなればそういう事もあるのかな?
「一応、暫くはエルカトルをぷらぷらしてますよ。試したい事もありますし」
「……そうか。個人的には君の『試したい事』が何なのかが非常に気になるが、また人員が必要な時は近くの支部に言って欲しい。出来れば早めに」
『出来れば早めに』をもの凄く強調されてしまった。はい。そうですよね。すみません。
 そんな一幕を終え、俺はエルカトルの東部へ向かった。
 理由?勿論、そこに海があるからだ。
 あ、いや、うん。勿論、そんな格好良い理由ではない。敢えて言おう、魚が食べたいと!
 米?そんなもん後、後。例え存在してたとしても米に期待は出来ない。
 年月をかけて品種改良された日本米に、そんじょそこらの異世界の自生米が勝てるかバカ野郎この野郎!
 だから先に魚だ。魚と言えば和食!は過言かも知れないが、和食と言えば魚とは言い切れる程、和食にとって魚は切っては切れない関係に位置していると俺は思う。
 島国のそのまた島暮らしだったからかもしれないが、無性に魚の塩焼きが食べたい時が来るのだ。
 そう。今の様に。
「フカツナ、あがったよ!一尾金貨5枚からスタートだ!」
 おお、何だあれ!サメみたいなマグロ?いや、マグロみたいなサメか?おもしれー。金貨5枚からって事は50万円スタートか。するね〜。よっぽど人気の魚なんだな。
「金貨7枚!」
「金貨8枚!」
 どんどんと競られてんな〜。フカツナか、覚えておこう。え?買わないよ?一尾丸々買った所で俺一人じゃあ使い途がないもん。
「こっちはウマアジだよ!見てくれ、この金色のタテガミ!立派だろう?金貨10枚からスタートだ!」
 うおおおお、なんじゃありゃぁ!?
 ウマアジって事は鯵なのかアレ。本当に馬みたいなタテガミが生えてるし、大きさもブリよりデカイぞ。地球でいうロウニンアジクラスじゃねぇか!
「なんの!こっちはグルクマムーンパッファだ!見ねぇこの青さ!月の様に青いだろう?栄養を蓄えてる証拠さ!金貨10枚からスタートだよ!」
 こっちは丸々と肥ったフグの様なサバか?大きさは40cm位だが、金貨10枚からって事は相当な高級魚に違いない。
 う〜む、面白い。流石は異世界って所だな。見た事もない様な魚が目白押しだ。
「おう、なんだい兄ちゃん見ねえ顔だな?漁協の奴じゃねえのにセリ場に来るなんざ、珍しいじゃねえか」
「ああ、すみません。決して冷やかすつもりはないんですが、物珍しくてつい」
「がははは、良いってことよ。寧ろセリに参加しようってもんなら叩き出してた所だ」
 デスヨネー。アンシンシテクダサイ。ワタシ、空気の読めるニホンジン。忙しい市場の皆さんの邪魔はシナイ。ココロエテマス。
「それで、何だって兄ちゃんみてえな若えのがこんな場所に来たんだい?」
「ちょっと魚を食べたくて(東部に)来たんですが、どんな魚が美味しいのか分からなかったので勉強も兼ねて見学しに来ました」
「なる程な!若えのによく分かってんじゃねえか。確かに此処に来りゃあ、どんな魚が高く買われていくか一目瞭然だからな。するってぇと兄ちゃん、まだ飯食ってねえのか?」
「ええ、未だですね」
「なら話は早え!兄ちゃんさえ良ければウチ寄ってきな」
「ウチ、ですか?」
「おおともさ。ギルド『バブルネット』といやあ東部1の漁協ギルドよ。ウチのかあちゃんが仕切ってんだがよ、飯も出してるんだ。美味えぞ〜?兄ちゃんさえ良ければ案内してやるよ」
 おお、漁協さんがやってるごはん屋さんか。いいね〜。ジュルリ……
「でも良いんですか?おじさん、此処で仕事があるんじゃ?」
「がはははは、心配すんな。仕入れはもう若えのに任せてんだ。俺も兄ちゃんと一緒よ。こうして毎日来ては目利きを衰えさせねえようにしてるって訳さ」
 なる程。某少年誌の漫画で聞いた事のある様な話だ。納得。
「ジュウゴ・イカリです」
「おう、俺はエドガーってんだ。エドガー・モビーディック。よろしくな」

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