クリティカル・リアリティー

ノベルバユーザー390796

第二十三話 それはなんだ

「食らえッッッ!!!!」
 空振る。だが、奴の背後から伸びた蔦がすっぱと切れる。地面を蹴り直し、奴の目前まで迫り、1mもない程の距離まで詰める。
「今度こそ……!!」
 強烈な一撃が奴の腹部を切り裂く。真っ白い肌が露出し、血が溢れだす。さらにもう一撃、と首元目掛けて斬りかかる。勢い良くそれは裂け、赤い花弁が散った。


 首から溢れ出て来る物に両腕を掴まれ、俺の首を掴み持ち上げる。


「グゥッ……ガ……ハッ……」


「どうでしたか?♪ 私の綺麗な薔薇バラはぁ♪」


 飲み込まれていく。植物としか言いようがない物によって全身を包み、目の前に女が立っている。


「さようなら。また、思い出してね」


「……忘れる訳……ねェだろうがッ……!! まだ、離しちゃいけない……!」


 右腕に巻き付く物を振り解き、即座に首を掴んでいる物を斬り解く。
 必死に暴れ全身の拘束をほどき、女と距離を取る。


「……多分だけど、そろそろ日付が変わるね。残念だよ……」


「私は、消えたくないな」


「……え?」


 突拍子のない台詞に俺は気が付くと右手からナイフを落としてしまった。
 激しい金属音が微かに聞こえ、耳に残る。そのまま意識が朦朧となっていき、目の前が真っ暗になっていた。








































































































 ――五分前。




 オレは地下室へと篭り、今日が終わるのを待っている。誰の為流しているのかわからないテレビをただ、見つめていた。
『「――今回の世満事件によって僅か二十日ほどでガラリと変わりましたね。どう思いますか?ゲストの晋也さん」「……そうですね、私は世満出身で家族、特に妹の安否確認をしたいです。」「晋也さんには妹さんが居るんですね! 初めて知りました。」「はい。まだ中学生ですがとても立派で、……いけないいけない、語り過ぎるところでした」』
 ……くだらない野郎だ。どうせ女遊びしまくって金遣いも荒いんだろうが。メディアに露出してからしばらくこいつとは会ってないが、人は変わるもんだ。
 映像は続く。


『「そして、世満事件に感化されたと言われる暴徒による襲撃は未だに続き、大都市オオサカでは死傷者が10万人を超えてしまいました。特に、逮捕された暴徒によると、一部の暴徒は非常に危険で特殊な装置を使い暴れているそうです。――! どうやら中継が繋がったようです。そちらはどうなってますか山寺さーん!」「はい。こちらはオオサカです。先程暴徒に襲われ生還した男性にお会いしましたので、今インタビューしてみます。……右肩は暴徒にですか?」「……はい。……引き裂かれました。――後ろ!! 後ろ見てギッ」ァァァァァァ!! カメラ止……………………「…………中継先が襲われて……しまったようです。」』


 一瞬だけ映った暴徒の腕。あれは人ではなく、どちらかというと狼のような腕をしていた。
 言葉が漏れでる。


「やらかしたな……正に”致命的”としか言いようがない……!」
 そう言いながらも俺は、興奮を覚えていた。


 ……今度彼らに会うときは……殺す時だ。まず、彼らを倒して、黒幕も俺が……殺してやる。

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