クリティカル・リアリティー
第七話 三人後編
二日間、いや、ずっと前からだったか。無茶苦茶な事を、永遠とし続けているのは。
俺は何をすればいい? 健人と共に戦うか? それとも真凛と俊樹を守って逃げるのか? 考えろ。俺一人じゃ無理なんだから。
……こんな時に弘成がいれば…………
「ね、ねえ! 知音どうするの⁉」
真凛の声が頭の中で響いている。どうすればいいんだ。どうすれば。頭の中で様々な考えを巡らせる。その時だった。
――――――聞こえるか? お前だよ。お前。
どこからか聞こえる声。さっきまで聞いた声だ。その声は、怪物。今対峙している怪物ではない。俺の中にいる怪物。
―――お前、悔しくないのか?
悔しい? 悔しいってどういうことだよ。
―――簡単に言わせてもらうぜ。お前は今、操られている。
操られている……誰に? お前にか?
―――俺だけじゃない。ここにある全てだ。
全て……
「この状況。お前の仲間。それだけじゃない。お前自身にでさえ。知音という人形なんだ。今のお前は、意思を持っていない。偽りの自分に操られているんだ。今だって、誰かに操ってもらえるのを待っているんだ。」
何が言いたいんだよ!
……え?脳内会議は一度解散する。外の様子は変化していた。
「下がれッ!」
鬼のような形相をした健人は俺を押し退け壁をつくる。戦う前の健人から感じたあの殺意は抜け落ちていた。彼も人形なのか?
俺は気づいてしまった。俺との違いに。俺は操られている。健人は、重なっている。さっき助けてもらっただけの怪物と、呼吸を合わせ、ものにしている。
声は俺に問いかける。
―――お前もああなりたいんだろ?だったら、俺に合わせろ。俺についてくるんじゃない、俺と共にだ。
…………そうか。お前が俺を操ってたんだな?
……偽りの俺。表に出ている俺。強がってる俺。弱い俺。その声は怪物の声でもあり、俺の声でもある。
「さあ、どうするんだ?『お前』の声で話してみろよ。」
俺は……俺は‼
……何が正解か分からない。それでも。
「……俺は、少なくともお前には操られない。そんな答えはダメか?」
「……やはり、お前を選んで正解だった」
「怪物、それは違うぜ。俺がお前を選んだんだ」
「俺の仲間としてな」
そう言うと、怪物は優しく微笑んだ。今度は俺の番だ。
「健人! 俺に任せろ!」
知音が俺の肩を掴む。
いつもの目とも、さっきまでの目とも違う、目から一筋の光が刺さっているようにも見えた。
変わったのか。
体が軽い。
「来てみろ! お前らのような子供に負けるわけがない!」
体は光を纏っている。中身はドロドロで薄汚れている。悪でしかない。
距離としても目の前。残念だが、詰めるって手は愚策だったようだな。
俺は怪物の前に殴りかかった。お前の弱々しい光なんか喰らうわけがない。
「な、なにぃ‼」
「油断したな?」
「知音、これを使え!」
空気を固めた、剣を渡すためにこちらへ投げられる。
俺は殴りながら剣を浮かせ、剣を怪物に切りかかせる。
俺の拳も剣も効いている。これで弘成達に会えるのだろうか。
「……お前だけには負けたくねェ……お前だ、創!」
「今戦ってる相手は知音だ!それが俺なんだ!」
剣を手元に寄せしっかりと握り締める。
そして振り下ろす。重い、一撃。
その剣は怪物を頭部に当たり、鈍い音を立てながら血を流している。構造は人間そっくりなのか?
「……さすが人間様ダァ……! 甘いぜ……フンッ」
―――ガシッと音と衝撃が走る。
俺の胴体を掴んで力で押し潰そうとしている。苦しい。
だが、こいつも焦りからか一つ忘れていたな。
―――お前が付けているグローブだって操れるんだぜ?
グローブを動かし、思いきり跳ね除けた。
んっ? こいつの手とグローブ、一体している……?
怪物の両手が吹き飛び、雄叫びを上げる。
「知音、そいつから離れろ!」
「いや、俺が倒すッ!」
「そうじゃない!危ない!」
まさか……手から放つわけじゃないのかよ⁉
怪物の全身が光りだす。
この感じは
―――ハッタリだ。こいつはもう打てない。そんな気力は残っていない。刺さったままの剣を頭を引きずりながら掴み直す。そしてもう一度、今度は頭に突き刺した。
意外にも脆く、貫いた。
光は、ゆっくりと消えていく……
「ま、負けかよ……」
「な、なんでお前らはこいつらの味方になってんだよ……」
俺達はじりじりと退き出す。
「―――俺達は仲間、友……だったよな……?」
誰も返答しない。
「……けどよぉ……俺はお前らみたいになるつもりはないぜ……?」
「……誰かに生かされるってのはカッコ悪いぜ」
虫の息だった呼吸が聞こえなくなった。
荒々しい呼吸が四つ聞こえる。
対して、冷静な呼吸が二つ、聞こえた。さらに、三つ、そして指では数え切れない程、声は聞こえないが、体中に染みていくように感じられた。生きてることが。
……弘成。お前も生きてるってことだよな。
―――その前に謝らないといけない相手がいる。
俺は状況が読めていない利名子の所へ向かい店から出る。
「利名子」
「……ど、どうしたの?」
「ごめん」
「え、え⁉」
「お前の体使って酷い事をしてゴメン!」
「え! ひ、酷い事⁉ え、え⁉」
「もしかしてだけどさ、利名子、なんか勘違いしてないか?お前の身体を盾にしてすまなかったごめんな。」
「あ……な、なーんだ! ……多分死んでた……ってことだよね?別にそれ位いいよ。あービックリした!」
「ありがとうな」
なんだか久しぶりに笑顔になれた気がする。釣られて利名子も笑顔になる。後ろからも声が聞こえだした。
「おいおい知音、一人でテンション上げるなよな、こっちは不安でしょうがなかったぜ」
「不安も何も……その場にいなかったじゃないですか! レオさん」
奥では少し不安そうな表情の健人と、緊張が緩んだ顔の真凛、俊樹がいた。全員無事そうだ。
「とにかく……ここは色々と危険そうだ。移動しよう」
「どこか安全なところにですか?」
「いや――戻ろう」
「弘成達がいる所に……ですよね」健人の言うとおりだ。
「ああ、戻ろうか」
この時はまだ知らなかった。ここから大変な事が起きるなんて。
俺は何をすればいい? 健人と共に戦うか? それとも真凛と俊樹を守って逃げるのか? 考えろ。俺一人じゃ無理なんだから。
……こんな時に弘成がいれば…………
「ね、ねえ! 知音どうするの⁉」
真凛の声が頭の中で響いている。どうすればいいんだ。どうすれば。頭の中で様々な考えを巡らせる。その時だった。
――――――聞こえるか? お前だよ。お前。
どこからか聞こえる声。さっきまで聞いた声だ。その声は、怪物。今対峙している怪物ではない。俺の中にいる怪物。
―――お前、悔しくないのか?
悔しい? 悔しいってどういうことだよ。
―――簡単に言わせてもらうぜ。お前は今、操られている。
操られている……誰に? お前にか?
―――俺だけじゃない。ここにある全てだ。
全て……
「この状況。お前の仲間。それだけじゃない。お前自身にでさえ。知音という人形なんだ。今のお前は、意思を持っていない。偽りの自分に操られているんだ。今だって、誰かに操ってもらえるのを待っているんだ。」
何が言いたいんだよ!
……え?脳内会議は一度解散する。外の様子は変化していた。
「下がれッ!」
鬼のような形相をした健人は俺を押し退け壁をつくる。戦う前の健人から感じたあの殺意は抜け落ちていた。彼も人形なのか?
俺は気づいてしまった。俺との違いに。俺は操られている。健人は、重なっている。さっき助けてもらっただけの怪物と、呼吸を合わせ、ものにしている。
声は俺に問いかける。
―――お前もああなりたいんだろ?だったら、俺に合わせろ。俺についてくるんじゃない、俺と共にだ。
…………そうか。お前が俺を操ってたんだな?
……偽りの俺。表に出ている俺。強がってる俺。弱い俺。その声は怪物の声でもあり、俺の声でもある。
「さあ、どうするんだ?『お前』の声で話してみろよ。」
俺は……俺は‼
……何が正解か分からない。それでも。
「……俺は、少なくともお前には操られない。そんな答えはダメか?」
「……やはり、お前を選んで正解だった」
「怪物、それは違うぜ。俺がお前を選んだんだ」
「俺の仲間としてな」
そう言うと、怪物は優しく微笑んだ。今度は俺の番だ。
「健人! 俺に任せろ!」
知音が俺の肩を掴む。
いつもの目とも、さっきまでの目とも違う、目から一筋の光が刺さっているようにも見えた。
変わったのか。
体が軽い。
「来てみろ! お前らのような子供に負けるわけがない!」
体は光を纏っている。中身はドロドロで薄汚れている。悪でしかない。
距離としても目の前。残念だが、詰めるって手は愚策だったようだな。
俺は怪物の前に殴りかかった。お前の弱々しい光なんか喰らうわけがない。
「な、なにぃ‼」
「油断したな?」
「知音、これを使え!」
空気を固めた、剣を渡すためにこちらへ投げられる。
俺は殴りながら剣を浮かせ、剣を怪物に切りかかせる。
俺の拳も剣も効いている。これで弘成達に会えるのだろうか。
「……お前だけには負けたくねェ……お前だ、創!」
「今戦ってる相手は知音だ!それが俺なんだ!」
剣を手元に寄せしっかりと握り締める。
そして振り下ろす。重い、一撃。
その剣は怪物を頭部に当たり、鈍い音を立てながら血を流している。構造は人間そっくりなのか?
「……さすが人間様ダァ……! 甘いぜ……フンッ」
―――ガシッと音と衝撃が走る。
俺の胴体を掴んで力で押し潰そうとしている。苦しい。
だが、こいつも焦りからか一つ忘れていたな。
―――お前が付けているグローブだって操れるんだぜ?
グローブを動かし、思いきり跳ね除けた。
んっ? こいつの手とグローブ、一体している……?
怪物の両手が吹き飛び、雄叫びを上げる。
「知音、そいつから離れろ!」
「いや、俺が倒すッ!」
「そうじゃない!危ない!」
まさか……手から放つわけじゃないのかよ⁉
怪物の全身が光りだす。
この感じは
―――ハッタリだ。こいつはもう打てない。そんな気力は残っていない。刺さったままの剣を頭を引きずりながら掴み直す。そしてもう一度、今度は頭に突き刺した。
意外にも脆く、貫いた。
光は、ゆっくりと消えていく……
「ま、負けかよ……」
「な、なんでお前らはこいつらの味方になってんだよ……」
俺達はじりじりと退き出す。
「―――俺達は仲間、友……だったよな……?」
誰も返答しない。
「……けどよぉ……俺はお前らみたいになるつもりはないぜ……?」
「……誰かに生かされるってのはカッコ悪いぜ」
虫の息だった呼吸が聞こえなくなった。
荒々しい呼吸が四つ聞こえる。
対して、冷静な呼吸が二つ、聞こえた。さらに、三つ、そして指では数え切れない程、声は聞こえないが、体中に染みていくように感じられた。生きてることが。
……弘成。お前も生きてるってことだよな。
―――その前に謝らないといけない相手がいる。
俺は状況が読めていない利名子の所へ向かい店から出る。
「利名子」
「……ど、どうしたの?」
「ごめん」
「え、え⁉」
「お前の体使って酷い事をしてゴメン!」
「え! ひ、酷い事⁉ え、え⁉」
「もしかしてだけどさ、利名子、なんか勘違いしてないか?お前の身体を盾にしてすまなかったごめんな。」
「あ……な、なーんだ! ……多分死んでた……ってことだよね?別にそれ位いいよ。あービックリした!」
「ありがとうな」
なんだか久しぶりに笑顔になれた気がする。釣られて利名子も笑顔になる。後ろからも声が聞こえだした。
「おいおい知音、一人でテンション上げるなよな、こっちは不安でしょうがなかったぜ」
「不安も何も……その場にいなかったじゃないですか! レオさん」
奥では少し不安そうな表情の健人と、緊張が緩んだ顔の真凛、俊樹がいた。全員無事そうだ。
「とにかく……ここは色々と危険そうだ。移動しよう」
「どこか安全なところにですか?」
「いや――戻ろう」
「弘成達がいる所に……ですよね」健人の言うとおりだ。
「ああ、戻ろうか」
この時はまだ知らなかった。ここから大変な事が起きるなんて。
「現代アクション」の人気作品
書籍化作品
-
-
337
-
-
768
-
-
75
-
-
221
-
-
314
-
-
147
-
-
440
-
-
755
-
-
63
コメント