クリティカル・リアリティー
第五話 逆転
……クソッ……健人まで倒れてしまった。レオさんは武器を持ちながら戦っている。利名子のためにも俺がしなくちゃいけないことは……!
俺は怪物の横を通り抜ける。
「なっ……! 何をしてるんだ‼」
まずは物を避けてやるよ。そう思っていたが何も飛んでこない、ラッキーだ。
「……何だお前」
外のやつが話しかける。
俺に出来る事。
「俺が相手してやるよ、こい」
囮になることだ。
「何言ってんだお前……ありがとな。さっさと死んでくれ」
挨拶代わりに放ってくる。俺は左に避ける。
知音、近づけないために囮になってくれたのか?
俺達を信じてくれてるってことだよな。こんな、ボロボロで、もう死にそうな俺を。……久しぶりだ、この気持ちは。
……健人、お前のためにも。
「うおおおおお! もっと深くに!」
加速は自分自身には使えない。ならば。
俺はこいつの肩に触る。そしてこう言った。
「遅くなれ」
弾丸のような攻撃が、殴るような速さになる。
「……こうなったら、俺の覚悟を見せてやるよ」
一体何を……
「崩れろ!」
その瞬間に天井は崩れる。向かいの店も崩れこちらに倒れ込む。いや、建物ごとこの店に突っ込んでくる!
全身にありとあらゆる物が当たる。威力は凄まじく、俺は目を失い、片足はもう使えない。もう死ぬ。
だが、鉾だけは離してはいない。離しちゃいけないんだ。妹の為にも。残った足で地面を蹴り、崩れていく建物に怪物を挟み全身の力を入れ突っ込む。
俺は生きる。
『俺はこんな所で死ねない!』
二人の言葉が揃う。
……何故、怪物のお前がそんなことを言うんだ?
だったら、なんで人を殺してんだよ。
考えた一瞬のうちに勝敗は決した。
全身を見る事はできないが、鋭利な物が複数ヶ所刺さっているだろう。激痛が走っている。
怪物の体にも複数箇所刺さっただろう。
お互いの体は動かない。レオは音だけ聞こえる。
お互いの荒い息遣い、崩れていく建物の音、砂煙の匂いがする。
「……終わりか」
「……まだ……生きたかったぜ」
「あの少年みたいに」「なりたか……
一分くらいだろうか? ずっと鬼ごっこをしている。ごっこで済む状況ではないし、遠距離でタッチできるチート鬼との。
遠くから崩れる音が聞こえた。
「くそっなかなか当たらねえな」
歓楽街だろうこの街は複雑な道のお陰で向こうは当てられない。
レオさんはどうなったのだろう。勝ったのか?
もうしばらくすると、崩れた場所からか、何か生まれたような不思議な音や、変わった音がする。気になる。
道を曲がる。
人がいた。
「うぉっ!?」
驚いた。いきなり老人が現れた。
「……一体何があったんだ?」
「怪物が追ってきます! 逃げましょう!」
そういったが、この人は年を取っている。逃げ切るのは厳しそうだ。
「やっぱり隠れてください」
「わかったよ」
そういって急いで隠れていく。
俺はこの人を守るために追われないと。
「お、待ってくれてたのか? ありがとよ死ね!」
間一髪、避けきった。あの人が逃げた先にも飛ばなかった。
道を曲がる。……そもそもなんで人がいるんだ?
まあいい。自分優先だ。
「あっ」
意識がそれてしまい、段差に躓いてしまう。追いつかれる。
気づけば、ほとんど一周して戻ってきていた。
三分か四分は稼げたはず。……後は……二人のために…
「死ね!」
……やっぱり、死にたくないな。
光が向かってくる。
グジャァ……
恐怖で俺は目をつぶっていた。溶けるような音がした。
「お、おいお前!」「こっちだよ!」
聞いたことのある声だ。
「間に合った……」「よくやったよ」
この二人も。
「……おいおいふざけんな」
「なんでアイツが死んでて」
「なんでお前らは生き返ってンだよ」
目を開けた。間違いない。健人は本当のことを言っていた。
俺の視線の先には俊樹、真凛、健人、レオさんがいた。
生きていた。生き返ったんだ。
「ありがとう」
「三人とも、俺の後ろにいてくれ」
さっきまでいた建物を見る。瓦礫の下に利名子が見えた。光が見えた。
俺は利名子を助けようと向かっていく。
「アイツを殺してやるよ!」
敵は俺と利名子に向かって撃つ。健人はそれを防ごうとする。
「これは本気だ」
膜が割れる音が聞こえる。
「嘘だ……破れるわけがない」
健人の壁を破られたことで俺に一直線に向かってくるも、咄嗟に下がってなんとか避けられた。が下敷きになっていた利名子はボロボロになり、肌がさっきより露出する。
酷すぎる。俺だって反撃したい。でも、手段が無い。誰か助けてくれ。
足元を見た。何かある。光っているわけでもなく、汚れているわけでもない。
不思議と生きている感触がある。手に取ってみる。
「クソッこっちにくるな!」
健人は空気を固め、飛ばしているが飛距離もなく、か弱い。
「邪魔すんなよ、裏切りモンが」
健人は同じようにバリアを貼るが一瞬で破られて肩にぶつかる。
ずっと手に握っていた物が溶けていることに気づいた。地面にはおちず体に染み込んでいく。
「な、なんだよこれ」
力が湧いていく。心も落ち着かない。中毒症状に似ている気がする。
なぜだろう。さっき死んだであろう怪物の声が聞こえる。
「俺はお前を信じてる。」
そう聞こえた気がした。
俺しか俺を守れる奴はいないんだ。
ゴミを浮かせ、ここの瓦礫全てを怪物に投げつけた。
「危ない!俊樹、真凛避けるぞ!」
健人は俊樹と真凛を掴んで避ける。レオも同じく避けている。
ここの道は車も通るほどの広さだが、ここのゴミは多すぎるようで向こう側がほとんど見えなくなった。
利名子だけが残る。利名子は死んでいるので操れるようだ。利名子の腰を立たせる。今じゃ人形のように操れる。
利名子を抱くように肩をつかむ。
ゴミの向こうから光筋が見えた。
俺は死体を盾にして守る。
そして、怪物と目が合った。目の前の怪物は弱っている。
俺が救世主にでもなってやる。
俺は怪物の横を通り抜ける。
「なっ……! 何をしてるんだ‼」
まずは物を避けてやるよ。そう思っていたが何も飛んでこない、ラッキーだ。
「……何だお前」
外のやつが話しかける。
俺に出来る事。
「俺が相手してやるよ、こい」
囮になることだ。
「何言ってんだお前……ありがとな。さっさと死んでくれ」
挨拶代わりに放ってくる。俺は左に避ける。
知音、近づけないために囮になってくれたのか?
俺達を信じてくれてるってことだよな。こんな、ボロボロで、もう死にそうな俺を。……久しぶりだ、この気持ちは。
……健人、お前のためにも。
「うおおおおお! もっと深くに!」
加速は自分自身には使えない。ならば。
俺はこいつの肩に触る。そしてこう言った。
「遅くなれ」
弾丸のような攻撃が、殴るような速さになる。
「……こうなったら、俺の覚悟を見せてやるよ」
一体何を……
「崩れろ!」
その瞬間に天井は崩れる。向かいの店も崩れこちらに倒れ込む。いや、建物ごとこの店に突っ込んでくる!
全身にありとあらゆる物が当たる。威力は凄まじく、俺は目を失い、片足はもう使えない。もう死ぬ。
だが、鉾だけは離してはいない。離しちゃいけないんだ。妹の為にも。残った足で地面を蹴り、崩れていく建物に怪物を挟み全身の力を入れ突っ込む。
俺は生きる。
『俺はこんな所で死ねない!』
二人の言葉が揃う。
……何故、怪物のお前がそんなことを言うんだ?
だったら、なんで人を殺してんだよ。
考えた一瞬のうちに勝敗は決した。
全身を見る事はできないが、鋭利な物が複数ヶ所刺さっているだろう。激痛が走っている。
怪物の体にも複数箇所刺さっただろう。
お互いの体は動かない。レオは音だけ聞こえる。
お互いの荒い息遣い、崩れていく建物の音、砂煙の匂いがする。
「……終わりか」
「……まだ……生きたかったぜ」
「あの少年みたいに」「なりたか……
一分くらいだろうか? ずっと鬼ごっこをしている。ごっこで済む状況ではないし、遠距離でタッチできるチート鬼との。
遠くから崩れる音が聞こえた。
「くそっなかなか当たらねえな」
歓楽街だろうこの街は複雑な道のお陰で向こうは当てられない。
レオさんはどうなったのだろう。勝ったのか?
もうしばらくすると、崩れた場所からか、何か生まれたような不思議な音や、変わった音がする。気になる。
道を曲がる。
人がいた。
「うぉっ!?」
驚いた。いきなり老人が現れた。
「……一体何があったんだ?」
「怪物が追ってきます! 逃げましょう!」
そういったが、この人は年を取っている。逃げ切るのは厳しそうだ。
「やっぱり隠れてください」
「わかったよ」
そういって急いで隠れていく。
俺はこの人を守るために追われないと。
「お、待ってくれてたのか? ありがとよ死ね!」
間一髪、避けきった。あの人が逃げた先にも飛ばなかった。
道を曲がる。……そもそもなんで人がいるんだ?
まあいい。自分優先だ。
「あっ」
意識がそれてしまい、段差に躓いてしまう。追いつかれる。
気づけば、ほとんど一周して戻ってきていた。
三分か四分は稼げたはず。……後は……二人のために…
「死ね!」
……やっぱり、死にたくないな。
光が向かってくる。
グジャァ……
恐怖で俺は目をつぶっていた。溶けるような音がした。
「お、おいお前!」「こっちだよ!」
聞いたことのある声だ。
「間に合った……」「よくやったよ」
この二人も。
「……おいおいふざけんな」
「なんでアイツが死んでて」
「なんでお前らは生き返ってンだよ」
目を開けた。間違いない。健人は本当のことを言っていた。
俺の視線の先には俊樹、真凛、健人、レオさんがいた。
生きていた。生き返ったんだ。
「ありがとう」
「三人とも、俺の後ろにいてくれ」
さっきまでいた建物を見る。瓦礫の下に利名子が見えた。光が見えた。
俺は利名子を助けようと向かっていく。
「アイツを殺してやるよ!」
敵は俺と利名子に向かって撃つ。健人はそれを防ごうとする。
「これは本気だ」
膜が割れる音が聞こえる。
「嘘だ……破れるわけがない」
健人の壁を破られたことで俺に一直線に向かってくるも、咄嗟に下がってなんとか避けられた。が下敷きになっていた利名子はボロボロになり、肌がさっきより露出する。
酷すぎる。俺だって反撃したい。でも、手段が無い。誰か助けてくれ。
足元を見た。何かある。光っているわけでもなく、汚れているわけでもない。
不思議と生きている感触がある。手に取ってみる。
「クソッこっちにくるな!」
健人は空気を固め、飛ばしているが飛距離もなく、か弱い。
「邪魔すんなよ、裏切りモンが」
健人は同じようにバリアを貼るが一瞬で破られて肩にぶつかる。
ずっと手に握っていた物が溶けていることに気づいた。地面にはおちず体に染み込んでいく。
「な、なんだよこれ」
力が湧いていく。心も落ち着かない。中毒症状に似ている気がする。
なぜだろう。さっき死んだであろう怪物の声が聞こえる。
「俺はお前を信じてる。」
そう聞こえた気がした。
俺しか俺を守れる奴はいないんだ。
ゴミを浮かせ、ここの瓦礫全てを怪物に投げつけた。
「危ない!俊樹、真凛避けるぞ!」
健人は俊樹と真凛を掴んで避ける。レオも同じく避けている。
ここの道は車も通るほどの広さだが、ここのゴミは多すぎるようで向こう側がほとんど見えなくなった。
利名子だけが残る。利名子は死んでいるので操れるようだ。利名子の腰を立たせる。今じゃ人形のように操れる。
利名子を抱くように肩をつかむ。
ゴミの向こうから光筋が見えた。
俺は死体を盾にして守る。
そして、怪物と目が合った。目の前の怪物は弱っている。
俺が救世主にでもなってやる。
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