クリティカル・リアリティー

ノベルバユーザー390796

第四話 能力対怪物

 
「でもどうやってその怪物を呼ぶの?」


 利名子が聞く。


「うーん……」


「知音と利名子が囮になればいいだろ?」


「えっ……」「は?」


「まだ近くにいるだろ。烈王さんが言っていたが、俺はそこまで遠くには行ってないと思う。」


「……ご名答」


 少し遠くから声が聞こえた。とてつもなく低い声だ。


「……居たのか……」


 振り向くと、見たことのない二体の怪物がいた。


「に、二体!?」


「スマネエナァ、ガキ共が死ねエッ!!」


 すると近くの建物が崩れ、様々な物が飛んでくる。


「えっ⁉」


 俺は利名子の体を掴み、間一髪横の建物まで倒れ込む。健人とレオも建物に逃げる。


「ふっ、雑魚の癖して生意気だな!」


「おいなんだよ」


「お前いつもよりテンション高いな」


「お前いきなり冷静なんなよ!こえーな」


 あいつらも話せるのか。健人は少し不機嫌そうだ。
 レオは小声で話す。
「いいか。能力を持ってることに気づかれる前に倒す。一撃で決めないと無理に近い」


「最悪相討ちでいいんだ。絶対に倒そう」 


 怪物はまだ喋っている。


「出てこないなら仕掛けるぜ?」
 そういって左手を開き、前に突き出す。光が見え、音が聞こえる。そしてその一瞬で何が起きたか理解した。


 俺達の建物の店に打ち込んできた。木製の部分は完全に消滅している。
 あと少し左に撃たれていたら俺に当たっていた。――そのほうが良かっただろう。


 その光は利名子の胸の真ん中を貫いた。利名子は何か決意したような目で俺を見てくる。彼女は手を伸ばそうとするが、俺に手は届かず胸は地面につく。
 死への恐怖、利名子を殺したアイツらへの憎しみ。ここでもし何も出来ず全滅したら。しかし、引くことはできない。


「――――知音、レオさん、俺に任せてくれ」






















































「まずは、一人。女か」


 怪物の馬鹿にした声は俺達のもとまで届いている。もしかしたら、俺が能力を使えることを知らないのかもしれない。


「とりあえずお前は落ち着け。俺がいく」


 レオさん……‼ その指示に従い待ち構える。
 ゆっくりと真凛達を殺した怪物が近づいてくる。今……か?


「まだだ」


「あと少し」


 怪物と俺達の距離は約五m。死角にいるためまだ気づかれない。俺達は利名子の死体を置いて建物の奥に下がる。


「隠れてるのか?」
 怪物はすぐそこまで来ている。
 俺の能力は空気を操る。つまりここの空気ごと固められる。今の俺だと一度に複数、広い範囲は
 厳しいだろう。だったら一撃でやるしかない。


「いきますよ」


 レオさんの声を合図に俺は拳で空気を思い切り殴る。その瞬間に空気を固めて、俺の手に固定、突き出す。先端は矛になり、三叉に似た形に変える。
 ……出来た。


「……!」


 「気づくのが少し遅かったな。怪物め」
 矛は怪物を貫こうとするも、怪物の斜め後ろから物が飛んでくる。守ろうとしている。





 俺の肩にレオさんは触れる。その瞬間!殴るように向かう矛は弾丸のような速さになり、一瞬で怪物の頭を貫いて殺したと思えた。


 しかし、
 木片が俺の頭をカスり、ガラスは俺の肩、腹、胸に刺さる。
 手の力が抜け、手に近い空気が溶けるように見えなくなる。
 しまった。


 レオさんは消えゆく矛を掴み、先は残った。
 化物は致命傷を負ったがまだ生きている。右手をレオさんに向かって振って、能力を使おうとしている。


「……おいおいどうした!」


 もう一人の怪物がゆっくりと近づこうとしている。決めるなら今しかない。だが、俺の体はもう……動かない。

「現代アクション」の人気作品

コメント

コメントを書く