クリティカル・リアリティー
第二話 救世主
俺と利名子で山を降り、数分経った今、冷静になった。俺は弘成達のことを見捨てたのだ。木が倒れるような音が聞こえる。
「なあ」
「何?」
「一回、落ち着こう」
利名子は足を止めた。
「あ、あのさ、一回戻らないか?」
「もどるって……なんで?」
「弘成達が心配だ」
「……嫌だよ、健人とかいるし」
「なんでそこまで嫌うんだよ?」
「しつこいの。家族は絶対生きてるよとかどうでもいいのに」
「どうでもいいってなんだよ……」
声が遠くから聞こえる。
「あれ、さっきの大学生?」
「呼んでみる?」
「怖いなぁ…………」
怖い? 何処がだ? ……女子は皆怯えていた。何かしたのだろうか。
とにかく、呼ばなきゃ駄目だろう。ここは危険な気がする。
「大学生さーーん」
彼はこちらに気が付き俺達の元まで走ってきてくれた。
「生きてたんだ」
なんだよそれ。そう言いかけたが抑える。
「あの変なやつはどうしたんですか」
「逃げたよ」
本当だろうか。
「本当のこと話さないとか」
利名子が不満を垂らし、彼は戸惑った顔をし、覚悟を決めた顔になる。
「……なんであいつらが人を襲うのか、知ってる所まで教えるよ」
雰囲気が変わった。あの明るさは作っていたのか?疑念が残る。
「どういうことですか」
俺の声は少しだけ震えた。
大学生は答える。
「まず、あの怪物達はこの島の人を全員殺すつもりだ。」
俺達が住んでいるこの島は、広くないが田舎ってほどでもない。いわば、観光スポットだ。でも、こんな所でなんで……
利名子の体は震えている。改めて知らされた事実に俺は膝が震え出しそうになる。
「私は事情があってここにいたんだ。それは、キミ達の先生とキミらを助けるためだ」
どういうことですかと口を挟もうとしたが話によって遮られる。
「……俺はずっと前から逃げていたんだ。この世界は繰り返される。……大体三週間、来月の6日、24時にまた三週間前の今日に戻る」
利名子は黙っている。俺も声を堪える。
「俺は今回で15回目なんだ」
そんな話、信じられるわけがない。そう言いたかった。でも、その話はとても真実味がある。
「そして、このループする世界では化物に殺されなければいいんだ。
人に殺されようが、自殺しようが、事故死でも、一日で生き返る」
「怪物は六体いる。そして、それぞれが違う能力を持っている。さっきのやつは『生物に変化する』みたいな能力だろう」
能力? 話に追いつけない。話は続く。
「生き残る事は不可能に思えるだろうね。でも、対抗策はある。……私には一つ、特技があるんですよ。それは、『モノを加減速させる』」
「これだけじゃ伝わらないと思うが……とにかく。
私を信じてください」
夜が明けた。結局、あの大学生に付いていくことにした。名前はレオと言うらしく名字はまだ聞いていない。山を降りて町に向かう。レオさんの時計を見ると7時だった。
レオさんに目的を尋ねる。すると、
「妹を探しているんだ。一回目からいなくなってて、この島を捜しまわってる。」
なんとなく利名子が嫌がる理由がわかった。この人は妹と重ねているんだ。
そんなのはどうでもいい。
「もしかしたらさ、妹は誰かに攫われたのかもね……」
そう語るレオさんに利名子が尋ねる。
「……ずっと聞きたかったことがあるんです」
「もし……あの怪物を倒したら……どうなるのかを」
「どうなるか……ねぇ……。もしかしたら出来るかもしれないけど。でも、幾ら何でも私一人で勝つことは無理ですね」
「救世主でもいないかぎりは」
どこからか物が崩れ落ちる音が聞こえだす。
「ヤバそうだ……隠れよう」
レオさんに従い、適当な店に隠れる。二分ほどで聞こえなくなり、外へ出る。
危険じゃないか尋ねたが、どうやら音の主の怪物が分かるらしく、今のは『物を操る』怪物で大丈夫らしい。
利名子の提案で物音の近くまで行くことになり三人で向かった。
* * *
そこでは建物の破片や血の匂いが漂っていた。
死体がある。見たことのある制服だ。
その死体は真凛だった。他にも俊樹の死体、健人の死体があった。
腹部には血の跡が残っている。
「‼ これはッ……!」
レオさんは健人の隣に落ちている何かのの破片のようなものを掴む。
「これは……『空気を操る』奴のか……」
どうやら、健人は怪物に守られ死んだらしいが、信じられない。レオさんも一度あるというがあり得るのだろうか。
あの、怪物が。
レオさんが言うには怪物同士の衝突に巻き込まれて死んでしまったようだ。
三人にお別れを告げ、離れようとした時だった。
背後から何かが立ち上がる音が聞こえた。
振り返るとそこには健人がいた。
以前の健人とは違う目、雰囲気をしている。まるで生き返ったような。
――生きてたのか、悪口のように言う。
健人は黙っている。
レオさんは驚いた様子で健人を見ている。利名子もだ。
健人はゆっくり口を開ける。
「……『俺』はあの怪物を許さない……‼」
熱い殺気でむせ返りそうになった。
「なあ」
「何?」
「一回、落ち着こう」
利名子は足を止めた。
「あ、あのさ、一回戻らないか?」
「もどるって……なんで?」
「弘成達が心配だ」
「……嫌だよ、健人とかいるし」
「なんでそこまで嫌うんだよ?」
「しつこいの。家族は絶対生きてるよとかどうでもいいのに」
「どうでもいいってなんだよ……」
声が遠くから聞こえる。
「あれ、さっきの大学生?」
「呼んでみる?」
「怖いなぁ…………」
怖い? 何処がだ? ……女子は皆怯えていた。何かしたのだろうか。
とにかく、呼ばなきゃ駄目だろう。ここは危険な気がする。
「大学生さーーん」
彼はこちらに気が付き俺達の元まで走ってきてくれた。
「生きてたんだ」
なんだよそれ。そう言いかけたが抑える。
「あの変なやつはどうしたんですか」
「逃げたよ」
本当だろうか。
「本当のこと話さないとか」
利名子が不満を垂らし、彼は戸惑った顔をし、覚悟を決めた顔になる。
「……なんであいつらが人を襲うのか、知ってる所まで教えるよ」
雰囲気が変わった。あの明るさは作っていたのか?疑念が残る。
「どういうことですか」
俺の声は少しだけ震えた。
大学生は答える。
「まず、あの怪物達はこの島の人を全員殺すつもりだ。」
俺達が住んでいるこの島は、広くないが田舎ってほどでもない。いわば、観光スポットだ。でも、こんな所でなんで……
利名子の体は震えている。改めて知らされた事実に俺は膝が震え出しそうになる。
「私は事情があってここにいたんだ。それは、キミ達の先生とキミらを助けるためだ」
どういうことですかと口を挟もうとしたが話によって遮られる。
「……俺はずっと前から逃げていたんだ。この世界は繰り返される。……大体三週間、来月の6日、24時にまた三週間前の今日に戻る」
利名子は黙っている。俺も声を堪える。
「俺は今回で15回目なんだ」
そんな話、信じられるわけがない。そう言いたかった。でも、その話はとても真実味がある。
「そして、このループする世界では化物に殺されなければいいんだ。
人に殺されようが、自殺しようが、事故死でも、一日で生き返る」
「怪物は六体いる。そして、それぞれが違う能力を持っている。さっきのやつは『生物に変化する』みたいな能力だろう」
能力? 話に追いつけない。話は続く。
「生き残る事は不可能に思えるだろうね。でも、対抗策はある。……私には一つ、特技があるんですよ。それは、『モノを加減速させる』」
「これだけじゃ伝わらないと思うが……とにかく。
私を信じてください」
夜が明けた。結局、あの大学生に付いていくことにした。名前はレオと言うらしく名字はまだ聞いていない。山を降りて町に向かう。レオさんの時計を見ると7時だった。
レオさんに目的を尋ねる。すると、
「妹を探しているんだ。一回目からいなくなってて、この島を捜しまわってる。」
なんとなく利名子が嫌がる理由がわかった。この人は妹と重ねているんだ。
そんなのはどうでもいい。
「もしかしたらさ、妹は誰かに攫われたのかもね……」
そう語るレオさんに利名子が尋ねる。
「……ずっと聞きたかったことがあるんです」
「もし……あの怪物を倒したら……どうなるのかを」
「どうなるか……ねぇ……。もしかしたら出来るかもしれないけど。でも、幾ら何でも私一人で勝つことは無理ですね」
「救世主でもいないかぎりは」
どこからか物が崩れ落ちる音が聞こえだす。
「ヤバそうだ……隠れよう」
レオさんに従い、適当な店に隠れる。二分ほどで聞こえなくなり、外へ出る。
危険じゃないか尋ねたが、どうやら音の主の怪物が分かるらしく、今のは『物を操る』怪物で大丈夫らしい。
利名子の提案で物音の近くまで行くことになり三人で向かった。
* * *
そこでは建物の破片や血の匂いが漂っていた。
死体がある。見たことのある制服だ。
その死体は真凛だった。他にも俊樹の死体、健人の死体があった。
腹部には血の跡が残っている。
「‼ これはッ……!」
レオさんは健人の隣に落ちている何かのの破片のようなものを掴む。
「これは……『空気を操る』奴のか……」
どうやら、健人は怪物に守られ死んだらしいが、信じられない。レオさんも一度あるというがあり得るのだろうか。
あの、怪物が。
レオさんが言うには怪物同士の衝突に巻き込まれて死んでしまったようだ。
三人にお別れを告げ、離れようとした時だった。
背後から何かが立ち上がる音が聞こえた。
振り返るとそこには健人がいた。
以前の健人とは違う目、雰囲気をしている。まるで生き返ったような。
――生きてたのか、悪口のように言う。
健人は黙っている。
レオさんは驚いた様子で健人を見ている。利名子もだ。
健人はゆっくり口を開ける。
「……『俺』はあの怪物を許さない……‼」
熱い殺気でむせ返りそうになった。
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