旅の記憶

ある

8年前の夏休み 上

 24年目の夏、私は久々にこの町にやって来た。駅は昔と変わっていない。街の雰囲気も変わらない様だった。

 私がここにやってきた理由は一通の手紙である。その手紙の差出人は赤坂 彩葉(あかさか いろは)。私の昔の友人だ。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

旅日記1ページ〜4ページ

電車に揺られてからもう何時間経ったのだろう。腕についていた時計を見ると家を出た時から針が7時間分進んでいた。この車両には自分しか乗っていない。
「次は敷波間町(しきはまちょう)、敷波間町〜」
 車内放送に目的としていた場所を知らされた僕は降りる準備をした。これが初めての一人旅。電車が駅に着くと胸を高鳴らせてその地に足をつけた。

 着いたのはいいもののそれ以降はノープランだった。歩きながら宿を探すが田舎の方すぎるからなのか見つからない。人通りもない。
 夏に一人道の上。暑い。辺りも少しずつ暗くなってきてしまっている。一旦木陰で休む。長い移動で疲労が溜まってしまったようだー少しだけ寝ようーー

 はっと目が覚めた。見慣れない天井が見える。状況を確認するために辺りを見渡した。ずらりと並ぶ骨格標本、骨、骨。その光景に思わず悲鳴をあげる。これはまずい、とてもまずい。逃走を図ったが後ろから声をかけられた。
「起きたのかい」
 少ししわがれた声が少し空いた戸の向こうから聞こえてきた。戸を開いたお婆さんのその手には包丁ーーではなくお茶の入ったコップをのせたお盆があった。

お茶を飲みながら話を聞くところ、これらの骨格標本は亡くなったお婆さんの夫の趣味らしい。それからどうして夜に木の下なんかで寝ていたのか聞かれたので、宿が見つからなかったと言うと
「こんな家でもよかったら使いな、あの子のためにもなるかもしれん」
という事だったので泊めてもらうことにした。
 お婆さんはいつの間にか目の前からいなくなってしまっていたので、あの子が誰なのかは聞きそびれてしまった。

 昼の4時頃、扉がガラ、と開く音。
ただいまぁ、と声が家中に響く。どうやらお婆さんではないようだ。
玄関へ向かうとワンピースを着た女の子が買い物袋を持っていた。歳は見た目的に14、15といったところか。彼女は僕を見ると少し驚いた顔をしていたが、すぐに理解した様子で昨日運ぶの大変だったんだよ、と言って調子をきいてきた。

 彼女は赤坂 彩葉と言う名前で、両親は仕事で外国にいて家にはおらず、元々祖父、祖母もいて5人暮らしだったようだが、いまはどちらも亡くなっているので1人のようなものだといい、僕にこの家に泊まった方がいいとも言った。
ん?・・・・・・何かが引っかかる。
 お婆さんが既に亡くなっている!?確かにこの目で見たはずだと彼女に伝えたが信じて貰えなかった。

 夜ご飯は、やはり二人分しか出てこない。彼女は料理が上手だった。ペロリとたいらげてしまえた。宿泊の許可は2人から取れたからよしとしよう。
 明日はどうするのか聞かれたので特に予定もないと言うと遊びに行こうと誘われた。
 



 

コメント

コメントを書く

「冒険」の人気作品

書籍化作品