俺が作った世界は融通が利かないようです。
決意したこと
    ユンナの料理を頂き、お腹も満たされたところで。
  「どうでしたか?お味のほどは」
  「あぁ、美味かったよ」
  「それはなによりで」
  「このあとはどうするんだ?」
  「そうですね、今日はシャワー浴びて寝るくらいですかね」
  「ん、了解。じゃあ、お先にどうぞ、心配なら俺を縄で縛ってから入るといいよ」
  「いえ、あくまで勘ですが、ナノさんはガチの変態ではなさそうな気がするので大丈夫です」
  「思ったより高評価で安心したわ」
  「いまのつっこむ所なんですが……」
    その後、ユンナが先にシャワーを浴び、次に俺がシャワーを浴びた。
    もちろん覗いてはいない。
  「ふぅー、さっぱりした」
    俺がシャワーを出た時には、辺りはもう暗くなっていた。
   「大した事もしてないけど、すごく疲れたな……」
    夜空を見上げながら呟く。
   「星ってこんな綺麗だったんだな……」
    村にいた時も星ぐらい見上げればいくらでも見えた。ただ、今見えている夜空はとても美しく見える。
    いつも見えていたものも、見る場所や心境の変化でこうも変わるのかと思った。柄にも無くそんな事を考えていると……。
  「意外とロマンチストなんですね」
  「うわ!?」
    隣にユンナがいた。全然気づかなかったし、大いに油断していたので心臓が止まるかと思った……。
  「いきなり現れないでくれ、心臓に悪い」
    溜め息を「はぁー」とつきながらユンナに注意する。
  「すみません、実は気づいてるかと思いまして」
   ユンナがクスクス笑いながら言った。
  「ったく……もう寝てろよな」
  「私夜行性なので」
  「見た目通りだな」
    ユンナは、全体的に黒い服装なので、昼か夜かどちらかで言えば夜が似合う。
  「まだ眠くないですよね? とりあえず座りません?」
    さっきまでわりと眠かったが、さっき驚いた時に少し目が覚めたので「あぁ」と言いながら了承した。
    たまたま近くに、いい感じの切り株が二つあったので二人でそこに腰を掛けた。
  「今日はお疲れ様でした」
    俺の右側の切り株に座ったユンナが、顔をこっちに向けてそう言った。
  「まぁ、何もしてないけどな俺は。というかユンナがいなかったら数日以内に絶命してただろうな」
  「そうですね、さすがに準備もなくいきなり路頭に迷うのは致命的ですしね」
  「いや、準備もそうだけど、他にも色々とな」
    モンスターとの戦闘もそうだが、冒険初心者の俺が準備万端整っていたとしても、素人に毛すら生えてないので五里霧中だっただろう。
  「まぁ、まだまだこれからですよ、頑張りましょう!」
  「ほんとユンナは強いな」
  「いえ、私そんなに強くないですよ。虚勢はってるだけです」 
  「そうなのか?まぁ、無理してる感はあるが」
  「本当はナノさんの気持ち痛いほど分かるんですよ、多分逃げ出したい気持ちは一緒です」
  「じゃあ、なんで?」
  「……やると決めたからです」
  「何をやると決めたんだ?」
  「ここが人生の分かれ道だと思ったんです。おばあちゃんにはナノさんと一緒に行きなさいと言われましたが『最後はユンナが決めるのじゃ』と言ってくれましたからね、別にナノさんと行かないという選択肢もあったんです」
  「ふむ、ユンナのおばあちゃん俺には選択肢くれなかったけどなぁ……」
  「あはは……それで、直感的にここが私のやる時なんだーって思いまして、やるからにはやろう全力でと思ったんです」
  「やっぱ根が強いわ」
  「なんだか私だけ思い込んでいて迷惑ですかね?」
  「いや、いい」
    そう言って俺は、立ち上がって自分の顔を両手で叩いてからユンナに言う。
  「やるよ俺も。何ができるか分からないけど、ここで引いたら俺の中にある僅かな志が消え去る気がするし、それに……」
  「それに?なんです?」
  「いや、なんでもない」
    この間見た夢……あれがどうも気になる、この先その夢の事がわかる気がした、根拠はないけど。
  「そう言えば気になってる事があるんだけど聞いていいか?」
    もう一度座り直してユンナに聞く。
  「はい、なんですか?」
  「ユンナのスキルはなんなんだ?」
  「はい。別に隠していたわけじゃないんですけどね、使うタイミングがなかったので」
    するとユンナは立ち上がり、目を瞑って両手を前に出した。
 「私も自分のスキルの事まだよく分かってないんですが」
    そう言うと、ユンナの足元に、人一人分くらい入れるの青色のサークルが現れた。
 「えいっ」
    なんとも可愛らしい掛け声とともに、サークルから何かがゆっくりと出てきた。
 「えーっと、なにこれ」
    サークルの中から出てきたものが俺には何かわからなかった、皿の上に乗っているあたり食べ物なのだろうか?
 「これは、ワッフルです」
 「……ワッフル?」
    見た事も聞いたことないな。
 「これは、あくまで予想なんですが、私のスキルは別のどこかの世界の物を取り寄せる事が出来るのではないかと思います」
 「えっ、凄いなそれ。スキル名は分からないのか?」 
 「スキル名は不明だったんです。ごく稀にある事なんですけどね」
 「そういうパターンもあるのか……もしかして俺もそうなのか?」 
 「いえ、ナノさんはスキルが覚醒したかすらも不明なので私よりもタチが悪いです」
 「あー……そうか……ちなみにユンナはどうやって自分のスキルを知ったんだ?」
 「それは企業秘密です」
 「なんでだよ! いや、わりと参考にしたいからさ、頼むよ」
 「えっ? マジなんですか?」
 「いや、冗談言うとこじゃないでしょ」
 「えー……」
    ユンナが身体をモジモジさせながら悩んでいる。
    その後、ああだのこうだの教えたくない理由を言ってきたが、俺があまりにもしつこかったので諦めたみたいだ。
 「お腹すいたなーって考えてまして」
 「うん」
 「疲れてたから甘い物食べたいなーって」
 「うん」
 「それで……出てきたんです」
 「なんか内容抜けてない?」
    あからさまにギクッて顔したな。
  
   
   
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