俺が作った世界は融通が利かないようです。

SiRoAliceSs

旅立つ前日


  「そっかぁ……  じゃあスキルが何なのか分からないけど何かは覚醒してる可能性が高いんだね」

    心配してきてくれたシスカに事の顛末てんまつを話した訳だが、説明してると徐々に頭痛がし始めた。  思い出すだけでも気分が悪い。

    スキルが覚醒するのなんて確率的に考えてみても、まさか自分がと思っていただけに辛い。  まぁ、だいたい○○だろうと考えてるやつほどこういう事になる、世界の闇である。

  「ただ、身体的に変化もないし普通というか、いつも通りの俺なんだよなぁ今のところは」

    問題はどんなスキルなのかが分からない事だ。  おそらく覚醒してから数時間は経つがヒントの欠片も出てこない。

    正直知りたくはないが、こうなった以上こういう事は早めに把握しておきたい。

  「私の知り合いに冒険者マニアな子がいるんだけど、その子が言うにはスキルが発動する型みたいなのがあるらしいよ?」

   なにその子、やばいね。

  「……そうなのか、例えば?」

  「えーっとね、聞いたの全部覚えてるわけじゃないんだけど、常動型とか突発型とか成長型、あとは危機回避型っていうのもあるみたい。後は忘れちゃったな……」

  「そっか、結構いっぱいあるのか。とりあえず俺は常動型ってのではなさそうだな。」

    数時間経って何も変化無いからな、多分何も発動してなさそうだし……

  「その危機回避型ってどんなのだ?」

  「うーん……人によるみたいなんだけど、文字通り危機的状況になったら身体が炎に包まれて身を守ったり、体から激臭を放って威嚇するとかって聞いたよ」

  「二つしか例を聞いてないけど嫌だわそれ……」

    そもそも危機的状況にならないとってのが辛すぎる……毎回劣勢スタートでしょそれ。

  「まぁ、きっとナノなら大丈夫だよ」

  「何が大丈夫なのかわからないんだが」

  「ほら、昔から困った事とか嫌な事とかから上手に避けてきたじゃない?」

  「……否定はできないな」

    大したことでもないが昔から俺は嫌な事とかから逃げるのは上手かった。

    めんどくさい嫌な行事があったときはだいたい雨だの台風だので中止になるし、何かの当番とかに任命された時にはだいたい病気にかかって休まさずを得ないことになったり、ちなみに仮病ではないから辛いのだが。

    という感じに天性の回避性能だけは自負している。

    まぁ、それもここ一番の時には役に立たなかったみたいだけど……

  「きっと大丈夫だって自信持って!それと明日から出発だよね?準備とか大丈夫?」

  「あー……何にもしてないな」

  「えーっ、ダメだよ、早く準備しておかないと」

  「自慢じゃないが準備する気力すらない」

  「じゃあ買い物行くよ!」

  「マジか……もう少し絶望の余韻よいんを味わってからでも」

  「そんな余韻いらないよ!」

    という事で買い物に行くことになった。



   買い物行くことになったわけだが、面倒な事にレコスタまで来ていた。

  「はぁ……一日に二回も来る羽目になると思わなかったわ」

  「だってスキル試験の後すぐ帰ってきたでしょ?」

  「そりゃ帰るでしょ、うつだし」

  「気持ちはわかるけど……スキル覚醒した人はみんなその街で旅の必要な物揃えるみたいだよ?」

  「まぁ、そういう時のために街には旅支度用品とか取り揃えてるもんな、だいたいスキルが覚醒した次の日からって出発って横暴おうぼうにも程があるだろ」

  「昔は1ヶ月くらい余裕あったみたいなんだけどね、なんでもその間に気が変わったり逃げ出したりとか色々あったから変わったみたいだよ」

  「あー、すげーわかるその気持ち」

    俺も逃げ出すわ。ん?  どこに逃げるんだ……? 

  「というか何を買えばいいんだ?」

  「そうだね、この【冒険初心者のための旅立つ前に揃えよう百選】によると……」

    そう言ってシスカは辞書くらい分厚い本を取り出してページをめくりはじめた。

  「なんだよそのマヌケそうな本は……」

  「なになに……まず最初に旅に出るには何かと必要な物が多いのでそれを入れるバックを買いましょうだって」

  「バックってあれか、冒険者だけ持てる特別製のやつか?」

  「そうそう、ちょうどあそこのお店で買えるみたいだよ」

    シスカの指さした先には【the バック】と主張が強めな看板のそこそこ大きいお店があった。

    両開きの大きな扉を開けて中に入ってみると、棚には綺麗に陳列されたバックがたくさんある、ウエストポーチにバックパック、リュックサックも小さいものから特大サイズまである。

  「冒険者様はカウンターへって書いてあるよ」

  「棚にはないんだな」

    カウンターに着くと店員さんが名前と出身を聞いてきたので答えたのだが様子がおかしい。

  「えーっと、アルタリア・ナノイース様はまだ登録されてないみたいなのですが……」

    あー……あれか、まだ覚醒したとは断言できないから登録されてないのか。

  「ちなみに登録されてないとバックは買えないんですか?」

  「すみません。冒険者用バックは、とある覚醒者の方がスキルを使って作る特別製なので数に限りができてしまうので一般の方にはお売りできないものでして……」

  「なるほど、では仕方ないですね。よしシスカ、俺は一般の方だから明日から引きこもるぞ」

  「えーっ、ちょっと待ってよ!もうちょっと考えよ!というか一般の人としても引きこもるのはおかしいから!」 

    シリカからツッコミを頂いてから、とりあえずここで考えてもしょうがないので一旦外に出る。

    しかし実際問題結構困ったことになってる。まぁ、用意もしようとしていなかった俺が言うのもあれなんだが、冒険者用バックってのは中々に便利で冒険には必需品らしい。

    というのも、冒険者は村や街の外で過ごす事が多い為、テントに調理器具等の大きめの荷物も必要になりその他細々した物も必要なので、そんな大荷物を抱えながら魔物と戦闘になったり歩き回るのは大変という事で冒険者用バックというものができたらしい。

    ちなみに一人用テントも収納時には手のひらに収まるくらいになるらしい、普通に欲しい。

  「とりあえず明日考えるってのはどうだ?」

  「そんなダメな人の典型的な発言は却下だよ……」

   その後、二人で色々考えてみたが良い方法が思いつかずその日はやむ得ず帰ることにした。
  



  



  
  

  
  


  

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