時空の王者

ゼノン

第1話「祝え、新たなる王者の刻……かもしれない」


ーー???ーー

「我が魔王よ。まもなく人間世界に辿り着きます」

    私に背負われた11、2あたりの歳に見える少年は、気を失っているかのように喋らない。

    その瞳も光を失っているようにハイライトがなく、少年を背負う私は、重い足取りで歩きながら軽く舌打ちをする。
    

「なぜ、は今を狙った。なぜ、今なのだ!?」

     誰かに叫ぶかのように私は吠える。

    そうしなければ、この怒りの沸き立つ心を押されられそうになかったから。

    長いこと歩き続けた私の前に、一つの大きな扉が現れる。

「おぉ、我が魔王。ようやくあなたをお救い出来ます」

    私は嬉しさのあまり涙を流す。

    だが、そんな時間を過ごしているわけにはいかなかった。

「おいおい、どうして逃げるんだい?」

「ようやく追いついたわ〜」

「さぁ……そいつを渡してもらおうか?」

    現れた扉に手をかけようとした時、後ろから三人の男女が突然現れる。

    よりにもよっていま現れるとは。よほど、我が魔王の首が欲しいと見える。

「お前たちに我が魔王を渡すわけがないだろう?」

    私は現れた三人を睨みつける。

「なにを言ってるんだい?    渡す渡さないの関係じゃないんだよ。もう渡すしかないんだ」

「そうね。そしたらアンタは、もう終わりね」

「できれば、お前を殺さずにしたかったが、強大なる力を持つ王に絶対の忠誠を誓ったお前が、はいそうですかと簡単に渡してくれるわけもなし、か」

     三人のうち一番年上の男が、やれやれとでも言いたげに私に言う。

「くっ……我が王だけでも、人間世界に」

「人間の世界に送ってどうすると言うのだ?    あの世界は我らが王ゼシリス・デュラムリント様が、住む価値もないとおっしゃった世界だ。その世界に……仮にも人の姿をしているとは言え、魔神族の王であり神でもあるそいつを送りつけるのか?」

    男の言葉に私は何も言い返せない。

    確かに、この三人が王と敬うゼシリスは、我が王の命により一度人間世界に行った。その世界で何を見たのかは私は知らないが、彼は我が王に「存在価値もない」と言った。

    潔癖の奴が言うのだから、我が王を人間世界に送っていいもなのだからうかと、私もここにたどり着く前まではずっと考えていた。

    だが、そうだとしても。

「貴様らに渡すぐらいなら、我が王の命に従い、私は人間世界に送る」

「やれやれ、本当にどうしようもない奴だ」

    男は掌から赤い気弾を作り、私に向かって放つ。

    それを軽々と避けた私は、後ろの扉を開ける名称を心の中で呟く。

(次元の扉よ。王の代わりに命ずる。世界の扉を開き、我が王をこことは違う平和な世界へ送れ)

    私の心の声が聞こえたのか、次元の扉はゆっくりと開きだす。

「ほう……。王のみが知る扉の開け方を、お前は知っていたのか」

「感心してる場合じゃないわ。逃げられるわよ」

扉が開いたのを見て、感心したように男が言う。

それに対して長い髪をウザっそうに掻き上げた少女がツッコム。

私はその一瞬の隙を突き、背中に背負っていた少年を扉の中へと放り込む。

今まで黙り込んでいた少年は、僅かに瞼を開け、

「今まで、共に歩んでくれてありがとう」

そう感謝の言葉を言って、扉の光に巻き込まれて消えていった。












    平成天皇が寿命で亡くなり、新たな世代として作られた令和の時代。

    俺ーーゼノラル・ラフォードは、日本東京都で経営している店「タウマストンテイオポリオ」の二階にある自室にいた。

    俺は五年前ぐらいにこの店の店長である桐ヶ崎幸之助きりがさきこうのすけに拾われて以来、ずっとここに住んでいる。

    
 まぁ、俺のことを拾ってくれた幸之助には感謝はしているが、

「3年前からちっと帰ってこないんだよなー」

   そう。俺を拾ってから2年後にどっかに消えやがった。

    まぁ、とりあえず会えたら殺すか。

「それにしても暇で暇で仕方ない」

    今の時代、令和に生きる子供達は学校に行かなくても従業を学ぶことができる。

    なんでも、どっかの大企業者が開発したらしい自律型家庭用アンドロイドが、言葉を覚え始めた子供達に家で家庭教師をしているからだ。

    毎日決まった時間に、平成時代?と言うらしい時代と同じように。

    つまり、平成時代にあったらしい学校という時間に合わせてあるらしい。

    まぁ、俺記憶無いし、二度と話すの二人だけだし、外なんかほぼで無いから、かなり曖昧なんだけどな笑笑笑笑。

    さてさて、俺ももうベッドから降りて、流石にお店手伝わないとな。

    ってか、お店に書いてある名前の「タウマストンテイオポリオ」ってどういう意味なんだろうか?

    昔から疑問に思ってたんだが、まぁ、気にしないでおこうか。うん、そうしよう。










ワイワイ、ガヤガヤ。

    そんなこんなで俺が一階に降りると、今日も大人やオタク?って言う種族の奴らで賑わっていた。

    さぁ、俺も手伝うとしますかね。

「理衣魔さん。なんか俺手伝うことは?」

   いつものように店にやってきた客から注文を受けて厨房にやってきた桐ヶ崎理衣魔きりがさきりいまは、笑顔でこう言った。

「うん。無いから二階で寝てやがれ☆」

「ア、ハイ。ソウデウヨネアリマセンヨネゴメンナサイシツレイシマシタ」

    と言うわけで、喋らなければかなり美少女に入る理衣魔は、いつものように俺に辛辣な言葉を投げてくるとふん!とそっぽを向く。

    ホント、黙ってたら清楚系美少女に思われるのに、この言動が全てを無駄にしている。

   なんかオタクどもは、「そんな理依奈さんも憧れます。踏まれたいです。ブヒブヒっ」って言ってたけど、理衣魔のやつ、変なことされてないよな?

    別に心配するわけじゃ無いが、一応俺は幸之助の家に居候?させてもらっている身であるから、あいつの一人娘である理衣魔になんかあったら申し訳ない。

    えーと、なんなだっけ?

    見た目清楚系中身少年と言う二つ名を持ってる理衣魔、なんか可哀想に思えるが、見た目が確かに清楚系だから、少し口の悪い少年みたいな中身している理衣魔になぜか似合ってるらしく、ちまたではそのキャップ?がいいと評判らしい。

    あぁ、ギャップか。間違えた。
    
「さてさて、どうしたものかな」

    何となく二階には上がらずに外に出た俺は、これから何をしようかなって少し考える。

    仕方ない。逢魔桜に行くか。











ーー???ーー

「奴は見つかったか?」

    群がるように道路や道を歩く人々を避けるように、三人の男女が裏道に降り立つ。

「無理ね。この世界では人間の数が多すぎて、空飛んでても透明になってても探すのにかなり時間喰らうわ」

「そもそも、人一人探すのに、このゴミの群れは邪魔だと思うんだよね僕は」

    壁に背を預ける男に、長い銀髪をウザったそうに掻き上げる少女は様々な場所を回ったらしく、少し息切れを起こしている。

   それに対して地面に座り込んでいる少年は、どこかでサボっていたのか少しも疲れていない。

「だがまぁ、かなり薄まっているが、奴の魔力は感じられる。この世界のどこかにいることは間違いないだろう」

「そうだけどさー。どうやって探す?    王に仕えていたアイツもゴミどもと同じ姿しているの…… 僕らぐらいだよ?    無理があると思うよ」

    そう言った少年は、面倒くさそうに地面に寝転び、表情とは裏腹に鋭い目線を男に送る。

「まぁ、そうだろうな。だが、だとしてもやらなければならない。それが我らが王の命であるから」

「わーってるよ、そんなこと」

   王の命令は絶対。

   それが、彼らの世界の常識であり、逆らえば今代の王により、即首を刎ねられてしまう。

(まだある意味先代の方が良かったな)

    誰にも聞こえないようにぼそりと呟くと、少年はその場から人差し指の力だけで起き上がる。

「ま、仕方ないし。僕ちょっくら探してくるよ」
そう言って透明になった少年は、人混みの中へと足を踏み入れた。










    逢魔桜と呼ばれる桜の木々が立ち並ぶ公園に来ていた俺は、ブランコに座って空を眺めていた。

    逢魔桜とは、かつてこの世界に現れたと言われている魔王が残した桜の種であり、その種が土の中で成長した木の事である。

    見る者の心を奪うぐらいに美しく、春夏秋冬関係なく咲き続けると言われている。

    ちなみに、話に出てきた逢魔とは、未来の世界から来た魔王であるという説があるが、誰もこの話を信じていないので本当かどうかは知らない。

    というより、この話を信じている方が少ない。

    まぁ、その気持ちもわからんでもない。俺だってこんな話信じられるわけがないって思ってるけど、なんか否定もできない。

    まぁ、俺が記憶を失っていることとなんか関係がありそうな予感が、ずっと俺の中で渦巻いているのだもん。

    きっと何かあるに違いない。
    
「おぉ!    ようやく再開を話すことができましたぞ!    我が魔王よ!」

     ……全言撤回します。

    やっぱり俺は信じない。

     だって……

「この時を何年待ちわびたか……さぁ!    私と一緒に奴らを倒しましょう!」

厨二病が現れたんだもん!!!!!!!!!

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