転生したらロボットの中だった(ただし、出る事はできません)

ファーストなサイコロ

運命という世界線を壊せ 708

鬼の肩から刃が食い込んで胸のところで止まった。本当ならそれこそ一刀両断するつもりだった。勿論一刀両断出来るかどうかは五分五分だったと思ってた。でもそれでも一気に全力を出してた。なにせ相手は格上だ。力の差はそれこそ桁違い。そんな奴に様子見?

 そんなことはしない。そんな出し惜しみは余裕があるやつがするものだろう。格下だと自分たちはわかってる。なら出来ることを全部をやる。そして最初に全力を出すことによって、どれだけの力の差があるのか実感できるというものだ。

 ある意味でそれで全く効かなかったら、それこそ絶望が襲うかもしれない。でもそれも覚悟の上だ。勇者として戦って来た中で絶望なんてのはいくらでも襲ってきた。勇者として、最初から自分は強かったわけじゃない。

 たくさんの人に支えられて、ここまで来たんだ。いや、まさか全く別の世界に来るとは思ってなかったが……でも一つの世界だけじゃなく、他の世界を知ることで故郷を救うすべが見つかるかもしれない。

 なにせあの世界、定期的に魔王が目覚めて、そして魔界を統一した魔王が人間界に攻めてくる……というサイクルをずっと繰り返してる。それは世界の仕組み……としてしょうがないものだったかも知れないが、何か……それこそ魔王と勇者が手を取り合えれば、世界はもっともっと良くなるはずなのに……そのヒントが数多ある世界の中にはあるかもしれない。

(でも世界はそれぞれ問題を抱えてるものなんだな)

 そんなことを思いながら、前を見据える。傷はつけられた。それだけでも、可能性は見える。鬼は全然それを気にしてなんてない。まあそれはそうだろうな。なにせ刃が止まった部分からなんか再生してるし……それかもっとやばいのはその有り余る力をこっちに流して来ようとしたことだ。それによって何がおきるのか……そのバカみたいな容量の力をこっちに流すなんて敵に塩を送る行為だと思うかもしれない。けどそんな訳はない。

 なにせ大きすぎる力を使う――それにはそれ相応の器が必要だ。考えてみて欲しい、皿にはその皿が受け入れられる容量しか乗らないだろう。グラスに水をいれるとしても、そのグラスが受け入れられる水の容量は決まってる。

 流石にそういう物よりも人の体というのは柔軟性がある。そしてそんな人の身体よりも更に今のこの体は柔軟性が高い。 それこそ人の体のときよりも数百倍くらいの力を今は内包できてるだろう。

 けどそれでも……だ。それでも足りないくらいの力が流れてきたら? 流石のこの体でも受け入れる事はできない。それこそ風船みたいにこの体でも弾け飛ぶだろう。その前にその力を流されてるのは聖剣でもある。

 だから聖剣が耐えられないってのはある。勿論すぐに引き抜いた。

「危なかったな」

『この状態ではなかったら絡め取られてました』

 聖剣が危なかったと告げる。今、聖剣はその姿を曖昧にしてる。自分にはその存在をたしかに感じるが、見えないしそして相手にとっては感じることさえ難しいだろう。そういう状態だから、逃れることが出来た。あの鬼……どうやら自分の身体を囮にしてたみたいだ。一度深く食い込むと、その力で絡め取って、その後に自身の有り余る力を流して相手を爆散させる。

 それだけで大抵の存在は死ぬだろう。様々な小細工さえも無効化させて相手を殺す……そういう戦略だと思うと……この状態にしてて良かったと思った。

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