転生したらロボットの中だった(ただし、出る事はできません)

ファーストなサイコロ

運命という世界線を壊せ 691

「うわああああああああああ!」

 進化体の刃が市民の剣を叩き割ってその刃が体へと迫るその瞬間だった。間一髪でその間に自身の剣を滑り込ませる隊長さん。しかもそれで終わらないのが彼である。軌道を変えてその勢いを利用して、三回進化体を切り刻む。緑色の鮮血が舞った。 

 でもそこは進化体、まだいきてる。

「大丈夫ですか?」

「メリアス様!!」

「おお、メリアス様が来てくれたぞ!!」

「俺達の……サーザインシャインインラの希望だ!!」

 なんとか間に合ったメリアス・アルドパルトさんはこのサーザインシャインインラで唯一まともな部隊をつくりあげてまともな兵たちを率いてた隊長さんだ。まあその部下の殆どが既に心折れてしまってるが……それでも彼の影響力は市民たちにまで光をもたらすほどだ。

 

「隊長……すみません……俺たちは……」

 そんな風に頭を下げる部下の人達。それとともに彼の部下ではないけど軍の生き残りも頭を下げてる。不甲斐ないと……きっと皆思ってるんだろう。市民に戦わせて、自分たちは震えてるだけ……一体この人からどんな叱責が飛んでくるのか……とか思ってそう。けどメリアスさんはそこらのやつとは違うようだ。

「頑張った皆。ゆっくり休んでいればいい。君達は十分戦った。誰がそれを責められる? だから安心していろ」

 その言葉に気まずくなるのは役立たずと軍の人達を見下して調子乗ってた市民の人達だよね。いや、あからさまにそんな事を言ってたやつはいない。なにせ戦闘中だ。ただ口だけ出してくる奴にかまってる暇はなかったからね。けど誰もその言葉を聞いてなかったのは事実。

 だからちょっと皆さん顔を反らしてる。でもそんな空気、メリアスさんは感じてないらしい。

「皆さん……私達が不甲斐なくて済まない。けど、出来るなら一緒に戦って欲しい。君達の力が……私達には必要だ。我々のためじゃない。このサーザインシャインインラを護るために! 故郷を護るために!!」

 そう真摯に言われた市民の人達はメリアスさんに視線を向けて「勿論です!」とか「自分たちだって同じ気持ちです!」とか「やってやりますよ!」とか言ってくれてる。心が折れてしまってた者たちもメリアスさんの登場に希望を見出してる。それだけこの人はサーザインシャインインラの人達に好意的に観られてるってことなんだろう。

 今回の戦いだけじゃない。きっとこれまでの行動を彼らは観てたからこそ、メリアスさんなら……って思ってるんだ。いうなれば彼はこの街の勇者なのだろう。

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品