転生したらロボットの中だった(ただし、出る事はできません)

ファーストなサイコロ

運命という世界線を壊せ 659

「えっと、誰もが言ってますよ。教会はサーザインシャインインラを見捨てたんだと」

「そんなことはない!!」

 ヌメリアさんが事実を言うと、若い神父はそれまで温厚だったのが嘘のように怒鳴った。それに目もなんか血走ってるし……瞬間的に「こいつやばいな」って思ったよ。こういう一見大人しそうなやつほど、凶暴な本性ってやつを隠し持ってるっていうね。

「貴方もそんな狂言に踊らさせてるのですか? 教会はこれまでどれほどこの街のために尽くしてくれましたか? それを忘れてはなりません。これは試練なのです」

「試練?」

「そうです。教会を我々を救うに値するか……楽園に誘うに相応しいかを試しているのですよ」

 なんかやばい妄想をしてるな……って私は思った。いや私だけじゃないね。きっとヌメリアさんも「こいつ何言ってるの?」とか思ってると思う。勝手にそこまで好意的に捉えれるんだね。ある意味でうらやま……しくはないね。だって教会にとってはめっちゃ都合いい信者じゃん。

 だってなにやったってこういうやつって勝手に都合よく捉えてくれるんだろう。それってもう何でも出来る。間違ったことを受け入れちゃ駄目でしょ。

「この波を乗り越えてこそ、私たちには救われる価値があるということですか?」

「ええ、ただ救いを待つだけなんて傲慢だと思いませんか? 我々も生きる力を見せなければいけません。教会は素晴らしいと、この状況でも信じてこそ、救われる価値があると示せるのです。一緒に祈りましょう」

 そう言って若い神父はヌメリアさんの手をとる。そしてその手をめっちゃさわさわとしてる。てを取るのなら、ただ手を取ればいいのに、めっちゃ指を動かしてヌメリアさんのすべすべの綺麗な手を堪能してる。いやいや、煩悩! それ煩悩ですよね!? 

  チラチラとヌメリアさんはどうしようかとこっちをみてる。この狂信者はかなりヤバそうでは有るが……切り札の事をしってるし、その情報はほしい1もうちょっと付き合ってもらうしか無いか……外の状況は勇者が出たから、そこらの砂獣は勇者が倒すからそこそこ持つはずだ。勇者の相手になりそうな存在なんてあの黄金の鬼くらいだ。まあヌメリアさんが産んだ砂獣がどんな物なのか……特別な個体となってるのか……それはわかんない。けどそれでも都市核も無いような存在にはさすがの勇者は遅れは取らないと思ってる。勇者だって成長してるからね。

「分かりました。でも私……その恥ずかしいのですが、これまでそんなに信心深くなくて……どうしたら良いか不安で……」

「分かります。それならばお互いに触れ合ってお祈りしましょう」

 そんな事をいう若い神父の顔に私はうわーと思ったよ。これがエロいことを考える男の顔か……録画しとこ。これが鼻の下を伸ばす顔ってやつね。真面目な事を言ってるのに、その顔に下心が丸見えである。いや本人は気づいない。多分至って真面目な顔をしてると思ってるだろう。けどね……もうめっちゃ出てるんだよ。

 きっとそれにはヌメリアさんも気づいてる。けどヌメリアさんは嫌悪感なんて出さずに両手を組んで、目を閉じさせられる。そして若い神父はその両手を自分の両手で包んで、ちょっとだけ「ふひひ」とかいってた。もうね、キモチワル!!

 そして二人は互いに額を合わせてお祈りを始めた。それ本当にある祈り方だろうな? とか思ったよ。

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