転生したらロボットの中だった(ただし、出る事はできません)

ファーストなサイコロ

運命という世界線を壊せ 636

「教会は教義を守っていれば、幸福の世界に行けると言ってるはずだが……行くのは自分たちだけなのか?」

「そうですね。あなた達は勘定に入ってないようですよ」

 ヌメリアさん……の中にいるこの人格はそう断言する。この人は一体どこまでしってるのか? もしもめっちゃ情報を持ってるのなら、たくさん引き出したいところだよね。

「自分も中央に行きましたが、あそこの教会の人たちは、中央以外はどうでも良さそうでした。中央は地上から離れて住んでる方が地位が高くなってますよね? 地上にいる人々のことを見下してると感じました」

「それは……私たちもわかっていることですよ」

 勇者のその言葉に、そう言っておじさんは悔しそうな顔をする。教会の援助を必要としてる地上の人々は、そんなことをわかってても教会を拒否するなんてことは出来ない。だってそうしたらこの世界で生きていけないからだろう。

 それは私も勇者もそんなに長くこの世界にいるわけではないが、わかってる。それを突破したというか、そのくさびを断ち切ったのが、今はアズバインバカラとジャルバジャルだけなんだ。他の街はいけ好かないと思ってても、自分たちが見下されてるとわかってても、教会にしっぽを振るしか無い。

 見捨てられないように、たくさんのものをきっと彼等は捧げてたはずだ。けど結局は、教会の奴等は地上の町の人々を楽園? 的な所に連れて行く気なんてのはない。やるせないよね。おじさんだってきっと品行方正なことだけをしてきたわけじゃないだろう。

 それこそこのサーザインシャインインラを守るために教会にこびてきたはずだ。それは上層部の奴等のように私利私欲のためではなくて、本当にこの街の為で、この街の人々のためだったのかもしれない。

 きっとひどいことだって……少数を切り捨てて、大勢を守る……みたいなことだってしてただろう。こんな世界だもんね。綺麗事だけでは、やっていけないのもわかる。それでもこの人はこの街を……いや家族を守ろうとしてたはずだ。少なくとも、イシュリ君に対する愛情は本物みたいだしね。

 でもそれらを教会はなんともおもってなんかない。そんなのは結局奴等にとっては当然で、いくら捧げたところで、地上の民の価値は彼等には変わらないのだ。

「そんな悲しい顔をしないでいいじゃないですか。そんなの忘れて、楽しみましょう。それがこの世界で生きていくコツですよ」

 そう言って彼女は徐に……というか、いつの間に? という表現が正しいと思う速さでなんか全裸になってた。ええ? いつ脱いだのよ!? 早業過ぎてびっくりしたよ。彼女の妖艶な肢体が目に入る。

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