転生したらロボットの中だった(ただし、出る事はできません)

ファーストなサイコロ

運命という世界線を壊せ 634

「はじめまして。話は聞かせてもらいました。教会が貴方へとした所業。許すことは出来ません。それにこの街の人々も簡単に見捨てることも出来ません。出来るだけのことはしますので、あんまり思いつめないでください」

 勇者は姿を表すと優しい笑顔でそういった。大抵の女なら今の勇者に落ちるだろう。それだけ勇者はイケメンだし、自分のピンチに現れる男性なんて、女から見たらそれこそ王子様みたいに見えると思う。

 けどそれは単純で馬鹿な女だけみたいな? あとある程度、可愛そうな私を見て……とか思ってる女とかね。流石にヌメリアさんはそこらへんを超えてしまってる。ガチ凹んでる状態だから……いきなり現れた勇者にもあんまり動揺してないし、どこか遠くを見る様な目をして勇者のことを見てた。

 やっぱりきっと信じられなんだと思う。そして頭の中ではきっと自分を責めてる。だからこそ、外からの声が響きづらいんだろう。それはどうやら勇者もわかってるようだ。てか勇者だもんね。そういう人たちをずっと彼は救い続けてきたはずだ。だから彼は焦点が合ってないような彼女の手を自然にとった。

 そして強制的に意識を自分に向けさせて視線を合わせる。でもそこでイケメン顔にヌメリアさんはポッとなるわけではなくて、逆に青ざめる。

「ダメです! 触らないで!! ……ふふ」

 そう言うや否やだった。変化が一気に出てきた。さっきまでビクビクしてたのに、その雰囲気が一気に妖艶なものになっている。口角をあげて、更にはその唇をペロっとすることでその舌と潤んだ唇を見せつけてくる。

 そして怪しい光が宿った瞳は細められて勇者に微笑みかけてる。そんなヌメリアさんを見て「おい……」とおじさんが声を出す。あまりの変化に思わずって事だったんだと思う。そんなおじさんの「おい」に反応して彼女……ヌメリアさんだけどヌメリアさんじゃないそのなにかはそっちを見ようとした。けどそれを勇者が防いだ。いきなり彼女の頬を両手で包んで、おじさんの方を向かないようにする。

「嫉妬深いのかな?」

 そう言ってヌメリアさんが微笑む。その魔性の笑みはまるで周囲に花が咲いたようにみえるし、なんか臭って来そうだった。臭うとか言ってもくさいとかじゃないよ? 勿論めっちゃいい匂いがしそうというか、実際してるというか。ドローンは高性能だからね。匂いまでかんじられ……ううん? 匂いまで感じられたかな? でも今、ふわっとなんか甘い匂いがした気がしたが……まさかだけど魔法か? 

 たしかに彼女はめっちゃ美人だ。大抵の男は彼女の姿に、微笑みに虜になるだろう。抱きたいと思うのもわかる。けど人にはいろいろな趣味趣向があるはずだ。世の中にはブス専なんてのもあるくらいである。

 なら彼女を誰もが抱くのはおかしい。そう仕向けるような魔法が発動してるとしたら? 勇者はそれがわかってたから、抵抗策がうてないおじさんの方を向かないようにしたのかも。それならよくやったと褒めてあげよう。

 いやまじで女の私も彼女を見て興奮しちゃうもん!! 男が我慢できるわけない。

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