転生したらロボットの中だった(ただし、出る事はできません)

ファーストなサイコロ

運命という世界線を壊せ 399

『くくくく……あははははははははははははは!! よりよい負の感情、そしてあふれ出る力の奔流。心地よい……心地よいぞ!!』

 なにやらこの町全体にそんな声が響く。ようやく勇者がなんとかなったと思ったら、地下の、更に地下が盛り上がってた。何かが出てこようとしてる? 
 多分だけど、勇者がああなったのには何かがあるんだとは思ってた。その原因かな? そう思ってると、建物の一つから人の姿が……

「王様達がここには……避難を……」

 そういえばそういう状況だったね。中央から王様達を連れ出してたなか、いきなりこの埋もれた都市へと落ちたんだ。だからここには王様達も居るんだよね。全くもって忘れてたよ。
 まあこの世界には大切な人々なのかもしれないけど……私にとっては別に……だからね。サンクチュアリをポンッと差し出してくれる王族様なら、重要度がめっちゃ上がるんだけど、その可能性は低いしね。

『はあ~、避難と行ってもあれだけの人数を一気には無理です』
「ですが!」
『だから、原因を潰しましょう。速攻で』

 そう言って私は勇者に手を向ける。するとその周囲に円上の陣が現れる。

「これは……」
『助けたいんでしょう? ここまで頑張ったんですし、私も力を貸しましょう。貴方は何ですか勇者?』

 これまで私は勇者と魔王、二人で完全な私専用の武器になると思ってた。けど聖剣という武器を使ってみて、勇者だって単体で武器になるのでは? と思った。いや、勇者の中には聖剣もあるし、ある意味、二人なのは変わんないし……まああの聖剣を使う――ってのはちょっとイヤではある。なにせ私には声聞こえるし……そういえば聞きたいことがあった。

『そういえば勇者、貴方って聖剣の声を聞いたことある?』
「どうでしょう……明確にはないですね。でも……心は通じてる気がします」

 なるほど……よかったね。絶対に聞かない方が良いよ。そこまでは言わないけどね。この世界には知らない方が良いことだってある。今の状態がきっと勇者と聖剣の関係性的には良いと思う。

 さて、あんまり時間も無い。なにかがこの更に下の方から起き上がろうとしてる。その前触れとしてか、この空間の端っこから黒光りする腕が八本くらい出てきてる。大きさから言ってG-01よりもかなり大きい。

 このまま出ると、この空間では収まらないと思う。そうなると完全に地上に出ることに……こいつを地上に出すとヤバそうだ。

「私は貴方の剣です。だから、どうぞ使ってください!!」

 そういう勇者は光となって私の手元まで来た。そしてその光が形を変えていく。

 ピッピピ

 なんかそんな音がして、私の見てるモニターには勇者の武器候補がいくつか現れる。選択制とは驚きだ。私はとりあえず――

「一番かっこいいのが良いね」

 ――というわけでそれを選んだ。それは二刀の刃。二つに分かれた勇者は金と銀の片刃の剣になった。二つの剣は光る糸で繋がってるが……これは使いやすいのかな? わかんないが、とりあえず武器は得た。

 私は一度高く飛び上がり、二つの剣を下に向ける。そしてただ無造作に下に突き刺す。その瞬間だ。

「ぐきゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」

 という声というか、咆吼が響く。二つの剣は光り輝き、地面に綺麗な陣を描く。そして青白い閃光がほとばしった。

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品