転生したらロボットの中だった(ただし、出る事はできません)

ファーストなサイコロ

運命という世界線を壊せ 398

「すみませんジゼロワン殿」
『勇者……あなたは本当に勇者ですか?』

 私はそう言いつつも、いつもの見た目になった勇者が本物だって事はわかってる。なぜなら色々と私には見えるからだ。内部だってスキャン出来るからね。なにせ私というかG-01は勇者の上位存在。てか勇者自身が私の分離パーツのような物だ。それに意思を与えて自由を許してる? みたいな? だから大抵の権限はこっちにある。まあけどまさかあんなことになるとは思ってなかったけど。

 権限があってもどうしようもない事ってあるんだね。

(待てよ……そもそもこっちの権限を使って勇者の体の活動自体を止めたらもっと楽だったのでは?)
『もっと貴女が上手くG-01を使えてたらそれも出来たでしょうね。ですがまだまだ未熟だから、そのパスを切られてたんですよ』
「むむむ……」

 AIがそんな突っ込みをしてくる。結局の所、権限があっても私の未熟さで色々と穴は多い……ということらしい。やっぱりまだまだ精進が必要だね。そもそもがG-01の力の10パーセントも引き出してないしね。ちょっとずつ色々と解析はしてるし、勉強もしてる。
 でもそれも一割くらい? もしかしたらもっと少ないかもしれない。だってそれだけマニュアルだけで膨大な量があるんだもん。それを脳細胞を酷使して理解していくのは……正直勉強嫌いな私としてはとてもだるいんだよね。

 脳に直接印刷取るとかして強制的に知識を与えるとかしてくれないのだろうか? それくらい出来そうだが……

『前にも言いましたが、それをやると廃人になる可能性が40パーセントくらいはあります』

 らしい。なら成功率は60パーセントあるじゃん……といいたいが、非推奨らしいからね。やらせてもらえない。でも考えてることはある。一気にが無理なら、ちょっとずつやれば良いじゃない――とね。

 まあそもそもそれをやるための知識がね……って状態だけど。まあそんなことよりも勇者だ。

『もう大丈夫なのですか? さっきの存在は……アレですよね? 貴方がこの世界の力の返還のために取り入れた――』

 確かそんなことを聞いてた。威厳を意識して私は勇者に語らいつつその情報をあげてくる。勇者や魔王は直接的に力を返還する機能って奴はない。だからこそ今までは私がこの世界の力を内部で変換したのを定期的に勇者と魔王に渡してたのだ。この世界での勇者と魔王は単体では活動限界というのがある。

 でもそれを勇者は克服した。それが現地の特殊な存在を取り入れることでなしえた物だったのはしってる。でもそいつが暴走した結果がこれだよ。

 地下に広がる都市はかなりボロボロになってるね。私と勇者の戦闘のせい……

(いやいや、よく考えたらここは元から砂に埋もれた場所だし、これがデフォルトなのでは?)

 てか誰にも文句なんて言われないだろうし、別に気にする必要も無いか。

「そうですね。でももう大丈夫です。今はおとなしくなってるので」
『また暴走したら……』
「そんなことには成りません。上手くやって見せます」

 そういう勇者は何やら自信があるように見える。それにちょっとイケメン度が増したような……勇者はどうやら自分の中の存在を消したりはしてないようだね。
 そのくらい多分出来るだろうに……まだ利用価値があるからなのか、それともただ勇者の優しさか。私的には後者の気がするね。勇者って甘いし。でもそれこそ勇者という気がする。
 大丈夫というのなら……まあ私は信じましょう。

『わかりました。そこは貴方を信じますよ』
「ありがとうございます」

 とりあえずこの件はこれで決着した。

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