転生したらロボットの中だった(ただし、出る事はできません)

ファーストなサイコロ

運命という世界線を壊せ 391

「駄目だそいつの声に耳を傾けるな!!」

 自分はそう言ってテーブルをたたく。けど、それには何の意味も無い。のどかで懐かしい、そんな空間に居るが……はっきり言って全然居心地が良くない。

 心がこんな場所に居てはいけないと言ってるのに、この家からでる事が出来ない。懐かしの実家は、今や自分を縛る牢獄と化してた。

「一体どうすれば……」

 どうやらジゼロワン殿は聖剣をどうにかしようとしてくれてるみたいだ。あの方なら、自分を壊すことなんて簡単だろうに、あれだけ苦戦してるのは、自分もそして聖剣も助けようとしてるからだろう。
 切り捨てるって事ではなく、あくまでも助けようと……このままでは駄目だ。このまま救われるのを待ってるなんて、自分はなんなんだって事だよ。

「僕は……勇者だ! こんな場所で、懐かしさで使命を忘れるほどふぬけちゃいないぞノア!!」

 とりあえず興奮して力を高める……事をしようと思ったが、もっと冷静になった。なぜならそれは自分らしく……いやもっと賢いやり方を最近学んだんだ。それに興奮するよりも、静かに燃やす方が力が高まるような気がする。
 確かに、魔王のように叫べば叫ぶほどに力が高まるタイプってのはいる。心と力が直結してるんだろう。だがどちらかというと、自分は戦いの中でも常に冷静なままだ。だからこそ……そう、だからこそ自分はその場に脚を組んで腰を下ろしてた。

 肩の力を抜いて息を長く吸って、そして長く吐く。何を取込んでるのかはわからないが……そうすることで自分の意識が内に向くような気がする。そう……外に発することはない。なぜならば、ここは既に自分自身の中なのだから。

 なのでより突き進むのは外にではなく、中へ……より奥へ。意識を沈めるように意識する。するとある瞬間に、浮遊感が襲ってきた。

(ここは……)

 あれだけでれないと思ってた実家が頭上にあった。なぜにでれたのかわからない……でもこれは自分の考えが間違ってないと言うことだろう。目指すべきは奥なんだ。家があった方から光が差し込んでる。そっちに行きたくなる。
 けど……向かうべきは深淵。もっと暗い、光が届かない場所。沈む感覚に身を預ける。するとその深淵から沢山の感情が伝わってくる。それはきっとノアの奴の感情だったり、聖剣の気持ちだったり、そんなのだ。でもきっとここにあるのはまだ二人の表層の声なんだろう。もっと奥に行けば、きっと本音というか、隠してる声だって聞こえるような気がする。
 そしてそれが必要なんだと、自分はただ落ちていく。

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