転生したらロボットの中だった(ただし、出る事はできません)

ファーストなサイコロ

運命という世界線を壊せ 390

「頭が痛い」
『まだそんなに頭使ってないでしょう?』

 うっさいわ。AIの無慈悲な突っ込みにも今の私は突っ込み返しが出来ないくらいには口ポカーンしてるよ。なぜかって? それは勿論聖剣のアホさ加減にびっくりしてるからだ。まさか……まさか、あんな頭ゆるゆるのお花畑みたいな人格が聖剣の中に入ってるとは思ってなかった。

 ちょっと力を感じれば見た目白い勇者に戻ってるとしても中身が別だとわかってる筈なのに……それでいいの? 本当にそれでいいの? って聞きたい。最初は拒否してたじゃん。それでこっちに対してアシストしてたじゃん。その賢い聖剣はどこに行ったの?

 どうにかして聖剣に現実を教える方法はないかと私は探ってる。頭を使いながら、戦うのはなかなかに厄介だから、ちょっとしたオート機能を使う。

 攻撃が来たら避けるか受けるか……それだけ勝手にやってくれる機能を最近発掘したのが役に立ったね。これである程度制御をしながらもG-01の機能を深く掘れる。
 まあこのオート機能をもっと上手く使えるようになれば、私の認識外の攻撃をG-01に対処させる――とかが出来るように成ると思ってるんだけどね。
 でも今は補助的なことでしか使うことは出来ないね。長く走るときとか体動かすのだるいじゃん。だからそういうときはこのオート機能を使って勝手に走らせたりね。ルートが複雑じゃ成ればいけるはず。
 今でも良く黒い勇者とそれに協力し始めてた聖剣の攻撃を上手く躱したり受けたりしてくれてるしね。

「何か受けてて思ったけど……聖剣の力変質していってない?」

 黒い勇者にだまされて協力し始めた位……いや、嫉妬に狂ったときから何か聖剣の力がおかしいと思ってたけど……受けててそれは結構確信に変わりつつある。

 いつもの勇者が使ってる聖剣は本当に清廉な力を発してる。そしてキラキラと輝いてるんだけど……今の聖剣の力は黒く不浄で、何か粘り気があるみたいな……さ。いや、まさに聖剣の感情が噴出してるような力になってるね。

『このまま行くと、完全にあの存在に取込まれるかもしれませんね。どうやら今現在勇者の中に居る存在と、ああなってしまった聖剣の相性はとても良いみたいですし』
「そうなったら……やばい?」
『かろうじてあるこちらと聖剣を繋ぐチャンネルがなくなるでしょう。実質聖剣という力が我々から失われます』

 むむむ……それは困る。実際そこまで困るかと言えばわからないけど、普通の人達から見たら聖剣だってかなり凄い武器だからね。内包出来る力だってそこらのなまくらとは比べものになんて出来ないし。それに聖剣がなくなったら勇者のメインの武器がなくなるしね。
 やっぱり困ることは多いか。

「はははは素晴らしいよ! だから、僕の思うような形になってくれ!!」

 親和性がどんどんと増してる黒い勇者と聖剣。そしてその姿まで聖剣はまがまがしさを増していく。黒く塗りつぶされていく聖剣は、ガチャガチャといううるさい音を立て、鞭のように伸びた刀身が蛇のようにとぐろを巻いて勇者の周りに佇んだ。
 いよいよもって……聖剣はもうだめかもしれない。いや、一応頑張るけど! 勇者も内から頑張ってるよね? それを信じてるから私も頑張る。

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