転生したらロボットの中だった(ただし、出る事はできません)

ファーストなサイコロ

運命という世界線を壊せ 319

「どうやって接触するんだ? 私の時のように砂嵐でもおこすか?」
「あれは丁度兄上たちがそういう事をやってたから、力の暴走を装えたのです。ここでいきなり砂嵐で視界を奪えば、誰かの攻撃だと思われます」
「まあ確かに……」

 アヴァーチェもプライムもどうやってあの女の子と接触するか……というのを話し合ってる。まあここは男子禁制らしいからな。いきなり出て行って「やあやあちょっときてくんない?」――とかやれないのだ。知り合いが来たといって面会とか……いやどう考えても無理か。だって今から避難しようとしてるのに、面会ってどう考えてもおかしいし。

 そもそもがその非難の原因を作ったのはアヴァーチェ達のいた場所で、そこからアヴァーチェが一人で来た――なんておかしい。混乱してれば行けるかもしれないが、ここはある意味落ち着いてるからな。喧噪はこの乙女の園にまではおよんでてない。
 廊下にたたずんでる少女たちは祈るために手を合わせて皆そっと目をつむってる。よく教育されてるみたいだ。

「あの子はなんていう名前なんだ?」
「姉上は『カザムジャナ』です」

 カザムジャナ……なかなか特徴的……と思うのは俺が異世界人だからか? そのカザムジャナちゃんは二人よりもくすんだ銀髪……赤が混じってちょっとさびたように見える髪色してる。
 それに瞳の色も青というよりも茶色に近いから、普通の市民に近いと思う。肌も色も小麦色してるし……でも流石にアヴァーチェへプライムに「腹違いかな?」とか聞けないし……興味はあるが、俺には関係ないことだ。
 とりあえずあの子もこうやって連れ出すことが出来ればいい。王家の家庭内の事情に込みこむつもりはない。

「また神父様に化けますか?」

 そういってプライムが耳打ちしてくる。これはアヴァーチェには聞かせられないからな。なにせあの時、問答した神父が俺だとわかれば、協会への信頼を取り戻してしまう。
 だからアヴァーチェの前では変身魔法は使いたくない。その可能性を感じさせたくないからだ。

「いや、それは止めておこう」
「じゃあどうするのですか?」
「そうだな……」

 中年的な小じわが目立つシスターが少女たちを引率していく。その後ろを追いながら俺は考える。

「穏便に……なるべく気づかれずにするにはどうするか……」

 制約が多いと大変だ。力だけを使って強引に行けるのなら、簡単なんだが……いかんなそれじゃあ魔王と同じ考え方だ。でもあの集団でカザムジャナだけを自然と分離する方法なんて……しかも彼女は少女たちの中くらいにいる。
 これが最後方にいてくれれば、まだ簡単に引きはがすことが出来た。でも中くらいだと困る。だって前にも後ろにも他の少女がいるからだ。いきなりカザムジャナだけが消えたら協会側はどう思うだろうか? 既にプライムとアヴァーチェがいないとかばれてたら、敵が王族を狙ってるとばれる確率は高い。
 それは困る。あくまでも謎の現象で事故が起きた……的なくらいに思ってくれてないと、いきなり協会が王宮へとアクションを起こすかもしれない。

「これでいくか……」

 俺は床に手を置いて力を使う。自然に……そして気づかれないように、少女たちの道を欺けるんだ。

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