転生したらロボットの中だった(ただし、出る事はできません)

ファーストなサイコロ

運命という世界線を壊せ 312

「安全ですか。それはここだけではないですか。この中央だけが安全で、そんなことに意味なんてあるのでしょうか?」

 プライムの奴が大手を振るった神父(俺)を非難するようにそう言うよ。うむうむ正しい。それは実際に正しいぞ。協会の奴らは自分たちさえ良ければいい……その傲慢さをアヴァーチェのやつに知らしめないといけないからだ。

「中央が安全であればこそ、全ての人は安心できる! そうでしょう神父様!!」
「その通りですね。ここは柱なのです。世界の柱。その柱が揺らぐことがあってはなりません」

 むむむ、どうあってもアヴァーチェの奴は協会の擁護に回るな。そろそろ教会が自己中心的だと気づいてほしい。これが幼少期からの教育……いや洗脳の賜物か。根深いものがある。でも少しずつだけど、不安というか、疑問くらいはできてるはず……だよな? そうであってくれないと困る。なにせアヴァーチェの次には妹……いやプライムにとっての姉だって控えてる。流石に毎回、こんな小芝居やってられないぞ。

「協会はそうやってここだけを守るのですか? 先日落とされた町も協会が兵を向ければ助けられたのではないですか?」
「送りましたよ。ただ間に合わなかっただけです」
「ジャルバジャルは一度落とされても取り返した奇跡の街と言われてます。それを協会はできないのですか? アズバインバカラの人達はそれをやってのけたそうですが?」

 うむうむ、ここで他にはできたのに協会にはできないって印象を与えるのは大事かもしれない。なにせ協会は威張り散らしてる。それは力と信仰があってこそだ。でもここで協会ができないと言ったことを別のどこかがやってたとなったら……それは協会の無能さの証明だ。

「アズバインバカラは運が良かったのでしょうね」
「運ですか?」

 苦しい言い訳だろう。なにせそういう風に感じれるように俺が言ってるからだ。

「ええ、とてもアズバインバカラは運が良かった。ただそれだけです。砂獣に落とされた街を取り返すというのはそんなに簡単なことではないのですよ。だから運が良かったとしか言えないのです」
「協会にはできないと?」

 さて……プライムのこの質問になんて答えればいいのか。流石に「出来ない」は意地汚い協会側の主張としては正しくない気がする。もっとこいつらは狡猾だ。なら−−

「出来る出来ないで言えば出来るでしょう。そう運が良ければ」
「また運ですか。運に頼らないといけないほどの戦力で、この中央が大丈夫とよく確信できますね。それに、他の街も救えないようなら、それぞれの街に自主防衛のためにも魔法という手段を広めるべきではないですか? それとも……協会は自分たちがいるこの中央さえ守り通せれば、それでいいでしょうか?」
「プライム!! お前はなんてことを!!」

 流石にこれにはアヴァーチェも激昂してる。でもここで下手に激昂されても……ね。邪魔なだけだ。なにせここらで少しずつ不機嫌になって言った方がいいと思ったからだ。自分が不機嫌な演出をして「神父様がこんなに怒るなんて−−」とかアヴァーチェには思ってもらおう。

「ふふふふふ、本当に賢い子ですね君の弟は。そう……賢すぎて大変嬉しいですよ」
「神父……様?」

 俺の迫真の演技にアヴァーチェはちょっと引いてる。言葉はまだ体裁を保つべく丁寧さを保ってるが、震える声や抑揚でその怒りを現してみた。うむ……俺はなかなかの演技派かもしれないな。そう思った。

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