転生したらロボットの中だった(ただし、出る事はできません)

ファーストなサイコロ

運命という世界線を壊せ 259

 冥途の土産、老子バンドゥンというやつはそういった。なかなかに興味深い話だし、ローワイヤ様はそれに食いついてる。なので、あと少しは動くをことを思いとどまったらしい。

 まあ勇者様はあんな状態だが、結界がなくなったわけじゃない。この中にいる限り、私たちは安全だ。私たちは……だけど。勇者様は結界の外にいる。だからこそ、私たちがどうにかして助けてあげないと――っと思ってるわけだ。

 けど老子バンドゥンもすでに勝った気でいるんだろう。悠々と言葉を尽くしてきてる。老子……か。私たちのようなただの庶民には、その存在さえ知らされないような雲の上の人だ。だからこそ、自分的にはあんまり実感がない。
 普通に巫女様は時々街を回ってその時にお祭りが開催されるから、お偉い人なのだなって実感があるわけだけど、老子って何? ってのが真実。
 だから老子には様とかなんか……ね。ローワイヤ様は今の私の立場もそうだけど、これまでの人生で巫女というのは偉いんだって刷り込まれてるから違和感はないが、老子は私的にはただのぽっと出だから様付けなんてできない。

「神託の巫女は重要なこの世界のキーを埋め込まれた存在なのですよ。貴方達の頭には常に声が聞こえてるでしょう。それの幅で巫女の序列は決まってる」
「でも……私は確か八番目くらいだったわよね? 巫女はもっといるでしょう? 普通、切り捨てるのは一番下からじゃないの?」

 ふむ……確かに。ローワイヤ様の言い分は最もだと思った。だって序列があるってことは一番優秀な人と、そうじゃない人を決めてるわけだよね? 

 ならこう言ってはなんだが、一番必要ないのって一番下の人ではないのだろうか? 私たち一般人だって、なるべく質のいいものを選別するし、あまりにもひどい物は選ばない。
 そういうものだ。でも中間にあるものはある意味で残しておくよね? 

「貴方は知らないでしょうが、巫女は入れ替わってるんですよ。ずっと。なので序列の最後の方は新参の巫女なり立てが多い。そして中間にいる者たちが、一番中途半端ですでに伸びしろがない。
 知ってますか? 序列一位のあのお方は常にその頭に太陽の声をおろして過ごされてますよ」
「正気じゃないわね……」

 そういってローワイヤ様は冷や汗を垂らした。そういえばさっきから老子は巫女は頭の中に声が聞こえてる……とかいってた。それってつまりローワイヤ様も? この人がちょっとしたことで怒るのは常にそんな声に悩まされてるストレスだったのだろうか?
 まあだからって私たちのような使用人に当たられても困るし、迷惑なんだけど……ローワイヤ様の境遇に同情……も実際難しいし、ハッキリ言えば嫌いな女だからね。
 巫女の事情をちょっと聴いて私の溜飲ってやつが実はちょっと下がったりしてるかも。苦労知らずとか思ってたけど、苦労は一応してたんだ。まあそれでも私をいびってのは許さないけどね。

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