現代社会にモンスターが湧いた件〜生き残るために強くなります〜

S・R

59話 ゴブリンキング戦6

『ただのゴブリンでは無駄死にするだけ.......か』

 ゴブリンキングは刀一つで大群を相手取っている少年を観察していた。

 レベルは50前後といったところか.......武器は邪龍の鱗を使っているようだが、あんな物をどうやって手に入れた?
 そもそも、どのような方法で刀の形にしたのだ?
 余が"地上にいた時"にも、それ程の名刀は見たことがない。

 恐らく、黄金の魔力を纏っている『錬金術師』が錬成したのだろう。
 今暴れ回ってるゴーレムや、先程の高威力な兵器以外にも隠し玉があると見た方がいい。

『あの女が厄介だ』

 雑魚が近づけば一瞬で分解され、経験値にされてしまう。
 今まで長く生きてきたが、あんな【錬金術】の使い方は初めて見た。

『雑魚を送り込んでも経験値にされる。ゴブリンジェネラルを送り込んでも、下手すれば大量にレベルアップされるだけかもしれぬな』

 ステータスを1000上げたところで、あの刀を防ぐことは出来ず、あの光の光線は余にも傷を与えられるだろう。
 彼奴の刀を防いだゴブリンジェネラルは、強化を集中させて防いだだけだから、何れにしても攻撃が通ることはバレる。

『やはり余が出るしかない.......か』

 余は玉座から腰を上げ、相手への威圧を込めて叫ぶ。

『グルゥオォォオオ!!』

 久々に暴れようぞ.......!



『グルゥオォォオオ!!』
「うっっ!?」

 ちっ.......親玉が直接出張ってきたか。
 マジでヤバいぞ。

「ソラ君、お待たせ!」
「タイミング良いな.......わざとか?」
「そ、そんなわけないじゃん!僕がわざと出遅れるような事すると思ってるの?」

 思ってるから言ったんだろ。
 そうな思いを込めて見つめると目を逸らされた。
 .......わざとなんだな。

「.......まぁいいや。取り敢えずアイツを倒すぞ」
「もちろん!まずは相手のステータスを確認しないとね」
「大丈夫なのか?レベル差もあるしキツいと思うんだけど.......」
「僕の【鑑定】のレベルはカンストしたし、魔道具も使うから問題ないよ」
「おぉ!そりゃあ凄ぇな」

 イヴの攻撃を死ぬ気で避け続けて、やっと【回避】と【思考速度上昇】のレベルが8になったってのに、ソフィアさんは【鑑定】をカンストさせてたのか。
 ちょっと羨ましい.......。

「じゃあアイツのステータスを確認するね」

 ソフィアは懐から何の変哲もない眼鏡を取り出し、レンズ越しにゴブリンキングに視線を向けた。

「.......は?」

 ステータスを覗いた後、ソフィアは間の抜けた声を出した。
 まるで有り得ないものを見てしまったかのような表情をしている。

「えっと.......ゴブリンキングのステータスは.......」

 そして鑑定結果を紙に写して見せてくる。

名前無し
レベル99
職業ジョブ:『魔王候補』『魔道王』『覇王』
種族:『ゴブリンキング』
魔力:13860
腕力:10880
防御:9380
俊敏:9380
《固有スキル》
小鬼の軍勢ゴブリン・アーミー】【覇道】
《スキル》
【体術Lv10】【剣術Lv10】【身体強化Lv10】【腕力強化Lv10】【防御強化Lv10】【俊敏強化Lv10】【冷静Lv10】【集中Lv10】【観察Lv10】
《魔法》
【大地魔法】【闇魔法】

「.......相手の強さが数字として見れると絶望感が更に増すな」
「だね.......」

 俺とゴブリンキングのステータスは倍以上の差では済まされない。
 このステータスを見る限り、勝つことは不可能である。
 しかし、ソフィアは何か策があるのか、不敵な笑みを浮かべて言う。

「でも相手は僕達をナメてるようだし、僕の新しい力と兵器なら倒せるかもしれない。もしくはソラ君の【暴食の右腕】とかね」
「んー、感覚的にはいける気はするけど.......力を引き出そうとすると自我が薄れるっつうか、能力を制御できなくて暴走しちまうんだよな。この前、それでイヴに迷惑かけたし」
「だったら僕の新しい力で倒そっか」

 ソフィアは白衣を微かに吹く微風でたなびかせ、自分を奮い立たせるかのように黄金の魔力を纏っていた。
 そして足元に巨大な魔法陣を展開し、スキル名を呟く。

「【傀儡化】」

 スキル名を唱えた瞬間、魔法陣内に置かれているゴブリンの死体が"全て"起き上がった。
 その数、約400体。

 その殆どが俺が倒したゴブリンだろう。

『貴様.......余の配下に何をした?【傀儡化】では、そんな馬鹿げた数を動かすことは出来ぬぞ』

 そんな光景を目の当たりにしたゴブリンキングは、配下の死体を利用された事に対して怒りを表し、それを抑えて質問した。

「んーとね。そんな難しい事じゃないよ」
『.......なに?』

 こんな数のゴブリンを傀儡と化し、平然としているソフィアの様子を見て、ゴブリンキングは眉を寄せた。

「魔術を使ってスキルの能力を引き上げただけ.......本番はこれからだよ」

 ソフィアは軽くお辞儀して言う。

「ふふふ。我が魔術、とくとご覧あれ」

 そして更に魔法陣が展開された。
 今回の魔法陣は先程とは比べ物にならないほどの規模であり、地面だけでなく空間全体に展開されていた。

『魔術だと?それも詠唱も無しに.......やはり貴様から屠らねばならぬな』

 ゴブリンキングは自分の身長ほどの大剣を担ぎ、地響きを鳴らしながら歩いてくる。

「俺がいるのを忘れてもらっちゃ困るな」
『【暴食】の小僧か.......もちろん忘れておらん』

 ソフィアから意識を外すために、わざと分かりやすい位置に立って話しかけたのだが、思惑通りになった。

「ふっ!」

 スキル【超加速】を使い、ゴブリンキングの足元へと一瞬で移動して刀を振り抜いた。

「なっ!?」

 しかし振り向いてみると、かすり傷すら付けられていない。

『貴様は後だ。先に面妖な術を使う錬金術師を片付けねば』

 そう呟き、ソフィアへ向かおうとしたのだが、既に遅かった。

「『踊る傀儡達ダンシング・パペット』」

 魔術を発動させた瞬間、傀儡となったゴブリン達は一斉にゴブリンキングへと襲いかかるのだった。

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