現代社会にモンスターが湧いた件〜生き残るために強くなります〜
53話 ボス戦前の準備2
目の前には、イヴの鱗で作られたという刀があった。
刀身はイヴの髪のように真っ黒で、刃の部分を触らないように気を付けている様子を見ると、相当な斬れ味だという事は簡単に想像できる。
「え.......マジでイヴの鱗で作った刀?」
「くっくっくっ.......我が錬金術は邪龍の鱗さえも簡単に扱うことが出来るのだ」
「あ、うん。そっか」
久しぶりに厨二病を見た気がする。
「あ、武器に特殊な能力は無いからね。ソラ君にはシンプルな武器の方が合ってると思うから」
そして厨二病から普通の性格への切り替えも早い。
「まぁ、確かに能力が付与されてないシンプルな武器の方が良いな。色んな能力を使いこなせるほど器用じゃないしね」
取り敢えず持ってみるか。
俺は漆黒の刀に手を伸ばして持ってみると驚くほど手に馴染んで、まるで何年も使い続けてきた相棒のように感じてしまった。
「素振りすらしてないけど分かる.......これならどんな相手でも斬れそうだ」
なんか試し斬りしたくなってきたな.......何処かに手頃なモンスターでもいないだろうか。
.......なんか思考が危なくなってきた気がする。
名刀を握ると無性に斬りたくなるって聞いた事あるけどマジだったんだな。
「試し斬りなら9階層のゴブリンジェネラルにしよ。そこそこの強さだし、ボス部屋手前にいて丁度いいからね」
「そうだな」
そして俺達は研究所から出てダンジョンへ潜った。
道中のモンスターはゴブリンや偶にホブゴブリンが出てくるくらいで、全く歯応えが無かった。
新しい刀を使ったのだが斬った感触すら無く、ただ振り抜いただけで相手が真っ二つになってしまう。
つまり試し斬りにもならなかったのだ。
やっぱり試し斬りはゴブリンジェネラルに期待だな。
そんなこんなで、ソフィアと雑談しながら進んでいると、いつの間にかゴブリンジェネラルのところに着いていた。
「お?いたいた。相変わらずゴブリンのくせに強そうな奴だなぁ」
「そう言ってるわりには余裕そうだね」
「まぁ、今なら真正面からやり合っても勝てる自信はあるからな」
殺意丸出しのゴブリンジェネラルの目の前で、俺達は呑気に雑談していた。
というのも、前まではチビりそうになるほど怖かった相手なのだが、今では大して強そうには見えないのだ。
アイツの半分以下のステータスでタイマン挑んでも勝てたし、攻撃が直線的だから簡単に読めるんだよな。
ぶっちゃけ速度があれば勝てる相手だ。
「油断はするでないぞ。今の主なら、ほぼ勝てる相手ではあるが手を抜いて良い相手でもないからな」
少し気が抜けているのを見抜かれたのか、イヴが釘を刺してきた。
「死にたくないから手抜きなんてしねぇよ」
ソフィアと話している時に周囲の警戒は勿論、イメージトレーニングも欠かさずやり続けていた。
少しだけ緊張しているが、いつも通りやれば大丈夫、と自分に言い聞かせて拳を構える。
「あれ?何で刀を使わないのかな」
「大方、素のステータスでどこまでやれるか試したいと思っているだろう」
「なるほど。それに、あの刀を使ったら即戦闘終了しそうだしね」
「うむ.......そろそろ始まるぞ」
イヴはゴブリンジェネラルから、直ぐにでも飛び出して来そうな気配を感じ取り、ソフィアとの雑談を中断した。
「ふぅ.......」
俺は相手の一挙一動を少しも見逃さないように、集中力を極限まで高めた。
その為、後ろで雑談を交わしている2人には気づかないでいる。
ゴブリンジェネラルは身の丈のほどの大剣を肩に担いでおり、剣術の基礎がクソほど無いので隙だらけだ。
懐に潜り込むのは簡単だけど、致命傷を与えられる程の腕力を持ってねぇから素手じゃ結構キツイかもな.......。
ステータスは初めて戦った時のゴブリンジェネラルよりも少し下くらい。
生まれたばかりの個体だからなのか、思ってたよりも弱そうである。
数十秒、もしかしたら数分経っているかもしれないという時間の間、俺とゴブリンジェネラルは見つめ合っていた。
ゴブリンジェネラルの容姿からして知性の欠片も無さそうなのだが、相手の隙を伺うくらいの頭は持っていたようだった。
「でもまぁ.......我慢が出来るほどの理性はねぇよな?」
ニヤリと人の悪い笑みを浮かべ、こちらに突進してくるゴブリンジェネラルを迎え撃つ準備をした。
左片足を半歩引いて、引いた足と反対の手を軽く開いて前に出す。
相手の攻撃を逸らしやすくするためだ。
踏み込みが甘いぜ?
ゴブリンジェネラルの振り下ろした大剣をじっと見つめながら、そんな事を頭の中で呟く。
ただ力任せなだけの攻撃に大した脅威を感じない。
剣の腹に右手の甲を優しく添えて受け流した。
「ゴァ!?」
まさか自分の攻撃を簡単に対処されるとは思っていなかったのか、ゴブリンジェネラルは驚いた表情をしていた。
「はぁぁっ!」
相手が驚いている隙にゴブリンジェネラルの顔面に拳を放った。
「ゴァァァ!?」
ゴブリンジェネラルの鼻から血が吹き出し、低い声を上げながら後ろによろめいた。
ダメージは.......やっぱり殆ど無いか。
腕力は1000には到達していないし、アイツの防御は1000を超えてるから素手で倒すのは難しそうだな。
元々、新しい刀の試し斬りも兼ねて戦っているわけだから別にいいけど.......なんか悔しい。
「.......めんどいし終わらせるか」
そう呟き、俺は腰にかけている刀の柄を握り、抜刀の構えをする。
その構えを見て危険を感じ取ったゴブリンジェネラルは、顔を殴られた怒りを忘れて警戒心を持った。
「ふっ!」
1000越えの俊敏を最大限活かして、相手との距離を一瞬で詰め、刀を振り抜いた。
そして"斬った感触を感じない"ままゴブリンジェネラルの胴体を真っ二つに斬り裂く。
「.......よし、ゴブリンキングを殺りに行こう!」
強敵との戦い.......腕が鳴るなぜ!
「.......彼奴、考えるのを放棄したな」
「さすが僕が作った刀だね!ゴブリンジェネラルを豆腐のように斬っちゃったよ」
「何を言っておるのだ?我の鱗を使ったのだから当然であろう」
こうして新しい相棒の試し斬りが終わり、イヴとソフィアの言い合いをBGMにしながら階段を降りて行くのだった。
刀身はイヴの髪のように真っ黒で、刃の部分を触らないように気を付けている様子を見ると、相当な斬れ味だという事は簡単に想像できる。
「え.......マジでイヴの鱗で作った刀?」
「くっくっくっ.......我が錬金術は邪龍の鱗さえも簡単に扱うことが出来るのだ」
「あ、うん。そっか」
久しぶりに厨二病を見た気がする。
「あ、武器に特殊な能力は無いからね。ソラ君にはシンプルな武器の方が合ってると思うから」
そして厨二病から普通の性格への切り替えも早い。
「まぁ、確かに能力が付与されてないシンプルな武器の方が良いな。色んな能力を使いこなせるほど器用じゃないしね」
取り敢えず持ってみるか。
俺は漆黒の刀に手を伸ばして持ってみると驚くほど手に馴染んで、まるで何年も使い続けてきた相棒のように感じてしまった。
「素振りすらしてないけど分かる.......これならどんな相手でも斬れそうだ」
なんか試し斬りしたくなってきたな.......何処かに手頃なモンスターでもいないだろうか。
.......なんか思考が危なくなってきた気がする。
名刀を握ると無性に斬りたくなるって聞いた事あるけどマジだったんだな。
「試し斬りなら9階層のゴブリンジェネラルにしよ。そこそこの強さだし、ボス部屋手前にいて丁度いいからね」
「そうだな」
そして俺達は研究所から出てダンジョンへ潜った。
道中のモンスターはゴブリンや偶にホブゴブリンが出てくるくらいで、全く歯応えが無かった。
新しい刀を使ったのだが斬った感触すら無く、ただ振り抜いただけで相手が真っ二つになってしまう。
つまり試し斬りにもならなかったのだ。
やっぱり試し斬りはゴブリンジェネラルに期待だな。
そんなこんなで、ソフィアと雑談しながら進んでいると、いつの間にかゴブリンジェネラルのところに着いていた。
「お?いたいた。相変わらずゴブリンのくせに強そうな奴だなぁ」
「そう言ってるわりには余裕そうだね」
「まぁ、今なら真正面からやり合っても勝てる自信はあるからな」
殺意丸出しのゴブリンジェネラルの目の前で、俺達は呑気に雑談していた。
というのも、前まではチビりそうになるほど怖かった相手なのだが、今では大して強そうには見えないのだ。
アイツの半分以下のステータスでタイマン挑んでも勝てたし、攻撃が直線的だから簡単に読めるんだよな。
ぶっちゃけ速度があれば勝てる相手だ。
「油断はするでないぞ。今の主なら、ほぼ勝てる相手ではあるが手を抜いて良い相手でもないからな」
少し気が抜けているのを見抜かれたのか、イヴが釘を刺してきた。
「死にたくないから手抜きなんてしねぇよ」
ソフィアと話している時に周囲の警戒は勿論、イメージトレーニングも欠かさずやり続けていた。
少しだけ緊張しているが、いつも通りやれば大丈夫、と自分に言い聞かせて拳を構える。
「あれ?何で刀を使わないのかな」
「大方、素のステータスでどこまでやれるか試したいと思っているだろう」
「なるほど。それに、あの刀を使ったら即戦闘終了しそうだしね」
「うむ.......そろそろ始まるぞ」
イヴはゴブリンジェネラルから、直ぐにでも飛び出して来そうな気配を感じ取り、ソフィアとの雑談を中断した。
「ふぅ.......」
俺は相手の一挙一動を少しも見逃さないように、集中力を極限まで高めた。
その為、後ろで雑談を交わしている2人には気づかないでいる。
ゴブリンジェネラルは身の丈のほどの大剣を肩に担いでおり、剣術の基礎がクソほど無いので隙だらけだ。
懐に潜り込むのは簡単だけど、致命傷を与えられる程の腕力を持ってねぇから素手じゃ結構キツイかもな.......。
ステータスは初めて戦った時のゴブリンジェネラルよりも少し下くらい。
生まれたばかりの個体だからなのか、思ってたよりも弱そうである。
数十秒、もしかしたら数分経っているかもしれないという時間の間、俺とゴブリンジェネラルは見つめ合っていた。
ゴブリンジェネラルの容姿からして知性の欠片も無さそうなのだが、相手の隙を伺うくらいの頭は持っていたようだった。
「でもまぁ.......我慢が出来るほどの理性はねぇよな?」
ニヤリと人の悪い笑みを浮かべ、こちらに突進してくるゴブリンジェネラルを迎え撃つ準備をした。
左片足を半歩引いて、引いた足と反対の手を軽く開いて前に出す。
相手の攻撃を逸らしやすくするためだ。
踏み込みが甘いぜ?
ゴブリンジェネラルの振り下ろした大剣をじっと見つめながら、そんな事を頭の中で呟く。
ただ力任せなだけの攻撃に大した脅威を感じない。
剣の腹に右手の甲を優しく添えて受け流した。
「ゴァ!?」
まさか自分の攻撃を簡単に対処されるとは思っていなかったのか、ゴブリンジェネラルは驚いた表情をしていた。
「はぁぁっ!」
相手が驚いている隙にゴブリンジェネラルの顔面に拳を放った。
「ゴァァァ!?」
ゴブリンジェネラルの鼻から血が吹き出し、低い声を上げながら後ろによろめいた。
ダメージは.......やっぱり殆ど無いか。
腕力は1000には到達していないし、アイツの防御は1000を超えてるから素手で倒すのは難しそうだな。
元々、新しい刀の試し斬りも兼ねて戦っているわけだから別にいいけど.......なんか悔しい。
「.......めんどいし終わらせるか」
そう呟き、俺は腰にかけている刀の柄を握り、抜刀の構えをする。
その構えを見て危険を感じ取ったゴブリンジェネラルは、顔を殴られた怒りを忘れて警戒心を持った。
「ふっ!」
1000越えの俊敏を最大限活かして、相手との距離を一瞬で詰め、刀を振り抜いた。
そして"斬った感触を感じない"ままゴブリンジェネラルの胴体を真っ二つに斬り裂く。
「.......よし、ゴブリンキングを殺りに行こう!」
強敵との戦い.......腕が鳴るなぜ!
「.......彼奴、考えるのを放棄したな」
「さすが僕が作った刀だね!ゴブリンジェネラルを豆腐のように斬っちゃったよ」
「何を言っておるのだ?我の鱗を使ったのだから当然であろう」
こうして新しい相棒の試し斬りが終わり、イヴとソフィアの言い合いをBGMにしながら階段を降りて行くのだった。
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