現代社会にモンスターが湧いた件〜生き残るために強くなります〜

S・R

52話 ボス戦前の準備1

 【吸血】の性能テストと新しい職業(ジョブを選び終えたあと、ちょうどソフィアのゴーレム改造も終わった。
 その後は特にやることも無かったので、これから使いそうな物を【空間収納】や俺の【暴食の右腕】でしまい込み、そのままソフィアの研究室へと戻った。

 帰り途中では何度かオーガに遭遇し、今の俺の戦闘能力やレールガンを取り付けたゴーレムの性能を試し、それなりに充実した時間だった。
 【吸血】を使ったのにレベルが一つしか上がらなかったが、上がらないよりはマシだろう。

 レベルが20上がる度に求められる経験値の量が格段に上がるのかもしれないな。

「そう言えばレールガンは、どっちのゴーレムに着けたんだ?」

 確かシュナイザーとハウザーだったか?二体とも妙に人間っぽいスリムなフォルムをしてたけど、どこに設置したんだろうか。
 物騒な武器が付いてるようには見えないけど。

「ん?そりゃあ勿論、両方にレールガンを搭載したよ。だってカッコイイもん!」
「あ、うん。そっか」

 十数匹のオーガを余裕で蹂躙するゴーレム2体ともにレールガンを取り付けたのか。
 .......戦争でもするつもりなのかね。

「これで僕達の火力不足と数の少なさは解決できたね」
「イヴは戦闘に参加しねぇし実質二人だけだからな」

 今の俺達なら、普通のオーガ程度なら数十体の群れに襲われようが、余裕で対処できる自信がある。
 しかしステータスが1000を超えている敵の場合、俺一人ではかなりキツイ戦いになるだろう。
 何故なら、敵が段違いに強くなるからだ。
 複数で来られたら更に危険度が増す。

 格上を相手する場合はソフィアに頼りっきりだからな。

「ならば10階層のゴブリンキングに挑んで来い。そろそろ敵の強さを一段上げていかなければならぬだろう」
「ゴブリンキングかぁ.......確か配下を数百匹引連れて余裕で1000越えのステータスを持ってるんだよな。その中にはゴブリンジェネラルも数匹混ざってるみたいだし」

 雑談中にイヴやソフィアから話を聞いたのだが、それらの情報を整理すると勝てるビジョンが全く浮かばない。
 ホブゴブリン程度なら何匹向かって来ても、対処するのは簡単である。

 しかし、その雑魚モンスターを指揮して強化するボスが居ると話は別だ。
 強化の度合いにもよるのだが、ステータスを100上げられるだけで、かなり難易度が上がるだろう。

「今の僕達のステータスではキツイかもね」

 やはりソフィアも同意見のようだ。

「でも.......僕の最高傑作であるシュナイザーとハウザーが居ればゴブリンの群れなんてイチコロさ!」

 いや、同意見ではなかった。

 ソフィアは子供のように目を光らせながら、自作のゴーレムが無双する場面を想像し、自分の妄想世界へと入り込んでいた。

「はぁ.......いくら強くなっと言っても今の俺達じゃ勝てないだろ」

 そう呟きながら、自分のステータスを確認する。

佐藤さとう そら
レベル42
職業ジョブ:『剣豪』
種族:『魔人』
魔力:1443
腕力:941(741+200)
防御:925(725+200)
俊敏:1240(840+400)
《固有スキル》
【暴食の右腕】
《スキル》
【武術Lv7】【抜刀術Lv2】【狙撃Lv2】【身体超強化Lv2】【俊敏超強化Lv2】【集中Lv6】【冷静Lv6】【家事Lv2】【思考速度上昇Lv7】【観察Lv6】【威圧Lv6】【回避Lv8】【斬撃Lv4】【鑑定Lv6】【吸血Lv3】【剛腕Lv1】【鉄壁Lv1】【超加速Lv1】
《魔法》
【闇魔法】

 魔力と俊敏は既に1000を超えており、腕力と防御もあと少しで1000を超えそうな勢いである。
 しかも強化系スキルが【〇〇"超"強化】に変化しており、ステータス補正の数値がエグいくらい上がった。
 しかし、それでもゴブリンキングに勝てる気がしないのだ。

 それは、ただ単純に俺が臆病なだけかもしれないが、勝てるビジョンが浮かばない。
 それだけで恐怖を抱く理由に値すると思う。

「ゴブリンジェネラル以上の腕力を持った奴相手だと俺って紙装甲だからなぁ」

 もう完全にゴブリンキングに挑む空気となってしまったので、俺は自分の弱点を補う方法を考えた。
 チラッとイヴに視線を向けるが、全く反応を見せてくれない様子からして、アドバイスは無いようだ。

 そこで、俺は今まで見てきた中で一番頑丈なものを思い出すことにした。
 俺の【暴食の右腕】を使えば、擬態で本物に近い防御力を再現できるからだ。

 これまで見てきた中で一番防御力が高かったのはレッドオーガだったよな.......でもソフィアさんの魔術で簡単に【鉄壁】を崩せたし、あの程度じゃ足りなそうだ。
 そこで、俺は思い出した。

「あ!イヴの鱗を食えば擬態で攻撃力と防御力を一気に上げられるんじゃない?」

 イヴは今の俺でも覗けないほどのステータスの持ち主なので、その頑丈な鱗を【暴食の右腕】で食らえば防御だけでなく、攻撃にも役出せそうである。

 もしかして俺の能力ってチートじゃね?

「アホか。そんな雑魚ステータスでは我の鱗に擬態など出来んわ。仮に擬態が可能だったとしても本来の性能の1割にも満たない程度にしか再現できないだろうな」
「えぇ.......せっかく俺の時代が来たと思ったのに」
「.......言ってる意味が分からん」

 うん、俺も分かんない。

 でも、そっかぁ.......チート能力で俺TUEEEEしてみたかったけど無理だったかぁ。
 少し残念。

「我の鱗に擬態することは出来ないが、主のために用意しておいた物がある」
「え?」

 呆けた顔をしながら視線を向けてみると、ソフィアが両手で布越しに刀を持っていた。
 その刀の刀身は漆黒に染っており、イヴの鱗で作られたと言われたら納得してしまう程だった。

 まぁ、あんな硬い鱗を刀の形に変形させる事なんて不可能だろうけどな。
 もし、そんな鍛冶師がいたら会ってみたいわ。

「ふふん!これはね、イヴちゃんの鱗で僕が作った刀だよ!」

 .......目の前にいたな。

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