現代社会にモンスターが湧いた件〜生き残るために強くなります〜

S・R

42話 苦労人たち1

「ふぉー!幼女だお!幼女が空から降ってきっ!?」
「おまっ!?」

 三つ子である人たちの内の少しぽっちゃりしている人が、大声で騒ぎ始めた。
 しかも、絶対に言ってはならない禁句を言いやがったので、急いで口を塞ぐ。
 でないと、このぽっちゃりさんが死んでしまう。

ふごふごふごふご?何で口を塞ぐんだお?
「おい、ぽっちゃり.......今、空から降ってきたやつに、それは禁句だ.......これ以上、それを言ったら、お前の命は無いぞ.......良いな?」

 つい勢いで敬語を使わずに言ってしまった。
 まぁ、そんなことを気にするような人ではなさそうだし良いか。

 そして、俺の警告がよく伝わったのか、コクコクを頭を上下させながら頷く。

「ふぅ.......」
「そんな深いため息を吐いて、どうしたのだ?」
「うおっ!?急に後ろから話しかけんなよ.......ビックリすんだろうが」
「す、すまぬ」

 イヴは首を傾げながら謝った。
 良かった.......ぽっちゃりが言ったことは聞こえなかったみたいだな。

「なんで、そんなにニマニマしてんだ?」
「何でもないお」

 何故か、このぽっちゃりさんは、俺とイヴを交互に見ながら、ニマニマと気色悪い笑みを浮かべていた。

「ふごっ!」

 あ、イヴに殴られた。

「.......なんか勝手に手が出てしまったぞ.......何故だ?」
「安心しろ.......それが正常な反応だよ」

 と言って、俺はイヴの肩をポンポンと叩く。

「あの吹っ飛んで行ったアホは放って、避難所に向かいましょう」
「はい」
「うむ」

 そして、俺たちは避難所へ向かった。



「そうだったのですね!未来研究所から来たのですか!」

 田村は自身の手を合わせて、俺たちが拠点にしているダサい研究所の名前を言った。

「えぇ、そこの職員の方に助けて貰って、そのまま研究所を拠点にしたんです」
「佐藤さん程の実力者を助ける人物.......かなりの実力をお持ちなのでしょうね」

 問答無用で相手の体を分解する超絶美少女ですよ。
 実力は俺以上さ!.......自分で言ってて悲しくなってきたぜ。

 田村さんに案内され、俺たちは避難所に着いた。
 あまり遠い場所ではなかったので、10分くらい歩いたら、すぐに着いたのだ。

 そして、今は避難所の責任者がいるテントの前にいる。

「.......ここにいるのか」

 何となくだけど、中から強い気配を感じる.......固有スキル持ち?それともモンスター退治を沢山したのかな。

「田村ただいま戻りました」

 田村さんがテントの前で言う。
 その直後、渋い声が中から聞こえてきた。

「おう。入れ」

 と、一言だけ返事が帰ってくる。

「失礼します」

 そして、俺とイヴも一言いって中に入った。

「っ!.......」
「ふむ.......これは中々」

 中にいたのは、戦士という風貌のイカついオッサンだった。
 しかし、ただのオッサンではない。
 男の周りの空気は張り詰めており、その鋭い眼光を見た瞬間、少し怯んでしまった。

 取り敢えず.......【鑑定】

武田たけだ 真情しんじょう
レベル17
職業ジョブ :『戦士』
種族:人間
魔力:48
腕力:303(223+80)
防御:283(223+60)
俊敏:301(221+80)
《スキル》
【体術Lv2】【剣術Lv3】【狙撃Lv2】【身体強化Lv4】【腕力強化Lv4】【防御強化Lv2】【俊敏強化Lv4】【威圧Lv3】

 これは、かなり強い方なのではないだろうか。
 田村さんは、この半分以下のステータスだぞ.......あの、三馬鹿トリオは更に低い。
 因みに、勝手にステータスを覗きました。

「.......見透かされてるみてぇで、あんまいい気分じゃねぇな」
「!?」

 この男は【鑑定】などのスキルを持っていないのに、視線を向けるだけで何かに気がついたようだ。

「そんで.......君は何者なんだ?」
「あ、はい。佐藤 空と申します。田村さんたちが襲われているところを助けたら、ここに案内させてもらいました」
「なに?.......それは本当か?」

 俺の言葉を疑っているのか、武田は田村に目を向けた。

「はっ。我々がゴブリンに囲まれて苦戦していた時、佐藤さんが殲滅してくださいました」
「なるほどな」

 もう一度、武田は俺の方に視線を向けてきた。
 そして.......

「俺の部下を助けてくれてありがとう」

 武田は椅子から立ち上がり、深く頭を下げた。

「!?.......あ、あの!たまたま通りかかっただけなんで、そこまで頭を下げなくても良いですよ!」

 自分よりも、ずっと歳上な人に頭を下げられると、何故か焦ってしまう。
 しかし、俺の隣にいる駄龍は.......

「わはははは!もっと感謝するが良い!そして、我に美味いもんでもくれ!」
「はぁ.......」

 この駄龍の返答を聞いて、俺は額を抑えながらため息を吐いた。
 この駄龍には礼儀ってもんがないのか?.......まぁ、確かに腹は減ったけど。

「おう。助けてくれた礼だ。いくらでも美味いもん食わせてやるよ!」
「おぉ!お主、なかなか見所があるぞ!」

 なんのだよ。

「まじか!?ありがてぇぜ!」

 話についていけないけど、二人で何か盛り上がってんな。
 隣へ視線を向けると、そこには手で目を覆いながら、深くため息をつく田村がいた。
 なんか親近感湧く.......取り敢えず、俺は田村の肩に手を置いて、慈愛の籠った表情で笑みを浮かべた。

「!?」

 そして、田村は涙目になりながら、肩を組んできたのだった。
 今日は同志に出会えた記念日にしよう。




パーティーメンバー

・佐藤 空

・イヴィル

・明智 ソフィア

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