現代社会にモンスターが湧いた件〜生き残るために強くなります〜

S・R

17話 運命の出会い

「くっくっくっ.......貴様のような面白い人間が死ぬのは少し惜しいな」

 この声が響いた瞬間、禍々しい靄が辺り一面を覆い尽くした。
 その靄に触れたモンスターたちは、一瞬で絶命し、地面に倒れた。

「な、なんだアレは.......」

 そして俺は、恐怖で震えながら、その力の持ち主の姿を見るために、無意識に上を向いた.......否、向いてしまったのだ.......

 空へ視線を向けた瞬間、俺の瞳に映ったのは、美しい漆黒の鱗を持った龍だった。
 その、あまりの美しさに見とれてしまい、先程までの恐怖が嘘のように消えてしまった。

 どんな闇よりも暗い漆黒の鱗、見ているだけで全てをを飲み込みそうな深淵の瞳、少し動かすだけで全てを吹き飛ばしそうな巨大な翼を持っている割に小柄な四本足の龍だった。

「くっくっくっ.......小僧、我に見とれている場合ではないぞ?今にも、そのスライムに食われそうではないか」
「え?」

 漆黒の龍に言われて改めて気づいた。
 俺はスライムに捕食されていることに.......

「ぐ、ぐぁぁぁぁぁぁ!いってぇぇー!!」

 俺は右手を抑えながらのたうち回った。
 いや、まじで痛てぇわ!よく、これで戦えたな!俺ってすげぇな!

「うるさいぞ小僧。少しは静かにせんか」
「空気読めや!めっちゃ痛てぇんだぞ!」
「我は邪龍ぞ。人間の事情なんぞ知るか。.......まぁ、痛みで、まともに会話が出来ぬのも面倒だから治してやる」
「は?」

 今、さり気なーく『邪龍』とか言ったよな?もしかして俺、食われんのか!?いや、俺、食われてる途中だったわ。
 冗談はさておき、治すとか言ってたよな?どうやるんだ?

 と、俺が考えている時、邪龍が突然、口を大きく開けた。
 口の中から禍々しい何かが見えたので、俺は焦って大声を上げた。

「ちょっと待て!それってブレスじゃないのか!?そんなの受けたら俺、死ぬぞ!」

 そんな俺の悲痛な声も聞かず、邪龍は容赦なくブレスを放った。
 しかし、俺の右腕だけに向かって撃ったようだ。

「あぁぁぁぁぁぁ!いってぇー!」

 と、俺は叫んだが、直ぐに違和感に気がついた。

「.......あれ?痛くない?」

 全く痛くなかったのだ。
 寧ろ、痛みが引いたくらいだ。
 そしてブレスが消えた頃には、スライムは声を上げることなく完全に消滅し、腕が元通りになっていた。
 .......そして、腕が赤黒くなっているのは気のせいだろう.......うむ、気のせいなはずだ。
 だって腕が赤黒いとか日焼けでも有り得ないじゃん?しかも色が、あのスライムに近いし。

「どうだ?治ったであろう?」
「.......この赤黒いの.......スライムの色に似てるのは気のせいだよな?」

 スキル『思考速度上昇』によって、一瞬で辿り着いた予想を受け入れられる事が出来ずに思わず邪龍に聞いてしまった。
 .......ただの日焼けであってください。

「先ほど放ったブレスには対処の自我を崩壊させる効効果あるのだが.......どうやら、あのスライムは最後の足掻きで貴様の腕と融合したようだ」
「は?.......はぁぁぁぁぁ!?」

 邪龍は俺が思っていた以上に丁寧な答えを返してくれた。
 しかし、俺の思考が追いついた瞬間、これ以上ないほど大きな声で叫んだのだった。



 驚愕の事実を聞いてから約5分後.......

「えっと.......俺の腕とスライムが融合したんだよね?」
「うむ」
「防ぐことは出来なかったの?」
「.......面白そうだから無視してしまったのだ。許せ」

 え?面白そうだから無視した?こら、そんなくだらない理由で、俺の右腕をスライムにしてんじゃねぇ。
 ほら見ろよ?指でつついたら、"むにゅ"てなったぞ。
 まるで、女性の胸に二つ付いてる禁断の果実のようではないか。
 どうしてくれる?と、思ったが、感覚はあるし助けられたのは事実なので、これ以上、文句を言ったら失礼だろう。
 俺は心が広いのである。

「良いではないか。矮小な人間がモンスターの力を得られたのだ。恐らく、ただのモンスターではないぞ?本来、自我が無いスライムに自我があったのだ。それに特殊な力も持っていたようだったからのぅ。だから喜ぶのだ」
「まぁ、助けてくれた事には感謝するよ。ありがとう」
「うむ!面白そうだから助けただけだ。礼はいらぬぞ!」

 何かムカつくな。
 お礼を言ったらドヤ顔するし、うぜェ.......

『肉体の変化を確認』
『条件達成』
『対象の進化を開始します』

 このアナウンスの声と共に、俺は眠りについた。
 てか、タイミングわるっ!




パーティメンバー

・佐藤 空

 今回は遅れずに投稿できました(*´ω`*)

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