現代社会にモンスターが湧いた件〜生き残るために強くなります〜

S・R

14話 生徒会長マジTUEEEE!!

 赤黒いスライムの鳴き声と同時に、至る所から魔物が現れた。

「こ、これ.......不味くないですか?.......」

 影山がビクビク怯えながら、生徒会長に話しかけた。
 見た目通り影山は臆病なようだ。

「確かに、この状況は不味いですね.......囲まれてしまっては逃げることも出来ないです.......」

 生徒会長が珍しく冷や汗をかいている。
 この人でも焦る時ってあるんだなぁ.......うむ、美人な女性が汗をかくとエロいっすね!むふふ.......

「空先輩!どうしますか!?囲まれちゃいましたよ!」

 井嶋って、どんな状況でも騒がしいな.......少しくらい声のボリュームを下げて欲しい.......ほら、またモンスターが増えたぞ。
 .......こいつ、囮にしちまおうか?

「龍っち!あんたの声が大きいからモンスターが寄ってきちゃったじゃん!もう少し静かに出来ないの!?」

 いや、お前もうるせぇよ。
 お前も囮に.......いや、可愛い女の子は俺の全身全霊をかけて守らせて頂きますっ!
 中野さん!そのお礼として、"あんなことやこんなこと"をやらせて頂けると嬉しいっす!ぐふふ.......あ、ヨダレが。

「.......くっ、ここは俺が囮になる!お前たちは生徒会長を連れて逃げろ!」

 藤原、お前カッコイイな.......有難く囮役をやってもらおうじゃないか。

「おい!てめぇ一人残して帰れるわけねぇだろ!」
「井嶋!俺は先輩だぞ!敬語を使え!」
「俺が敬語を使う相手は空先輩だけだ!」
「何だと!?」

 いや、お前ら余裕ありすぎだろ。
 もしかして、全員、俺に隠してるチート能力とか持ってんのか?
 もし、そうだったら、俺泣くぞ?

「空、この状況を打破する作戦とかありますか?」
「凛さん.......あるわけないじゃないですか。あったら、とっくに言ってますよ」
「そうですか.......残念です」

 むほっ、残念がってる生徒会長まじかわゆす。
 いや、生徒会長なら、たとえ鼻水まみれになったとしても、可愛いんだろうな。
 寧ろそれが良いかもしれん!
 腹黒いけど.......

「空?.......生徒会長、いつの間に、名前で呼び合う関係になったのですか?」

 え?反応する場所そこ?そんな事に反応する暇があるなら、この状況を打破する作戦を考えた方が良いんじゃないのか?

「今は、そんな話をしている場合ではありません。この状況を打破する方法を考えてください。.......まぁ、考える時間があるはずないですけどね」

 俺たちは、それぞれの武器を構えて戦闘態勢に入った。

 俺はコンビニで拝借してきたナイフを両手に持つ。
 本当だったら、もうすこし長い刃物だったら良かったんだけど贅沢は言ってられねぇな。

 生徒会長は袖をまくって拳を構える。
 凛さんは、幼い頃から色々な武道を嗜んでおり、魔法だけでなく素手での戦闘も行えるのだ。

 藤原は、剣道部から拝借してきた腰に掛けている木刀を構え、目を鋭くさせた。
 彼は、剣道大会で全国へ出場できるほどの猛者で、お手本のように綺麗な剣筋である事から、後輩だけでなく先輩からも、よく頼りにされているのだ。

 景山は、ビクビク怯えながらも拳を構える。
 ひ弱な自分を変えたくて『拳闘士』という職業を選んだようだが、怖がりは治らなかったようだ。

 中野は弓道部から拝借してきた弓を構えた。
 彼女は、ギャルみたいな見た目をしているが、勉強が得意で弓道部に入っており、全国大会で上位に入賞する程の実力者なのだ。

 井嶋は両手を合わせ、地面に膝をついて祈りを始めた。
 このヤンキーは、両親が熱心な信者で小さい頃から、よく教会とかに連れていかれているのだ。
 その影響で、『信者』という職業が現れたようだ。

 なんというギャップ……。

「私たちには、まだ連携は出来ません!なので各個撃破でお願いします!井嶋さんは私たちのサポートをお願いします!」

 そして、全員が「はい!」と大きな声で返事をして、それぞれ近くにいるモンスターを倒しに行った。

「まずは俺が行きます!」

 まず最初は、ブレザーの内ポケットに隠し持っていた釘を、一番近くにいる灰色の狼.......狼にしては大きくて筋肉が肥大化されているからモンスターで間違いないだろう。
 取り敢えずウルフって呼ぶか。

 俺が投げた釘は、ウルフの瞳に突き刺さった。
 釘を刺されたウルフは、「キャウン!」と鳴いて、自分の前足で釘を擦る。
 それ逆に痛くなると思うよ?

 凛さんは、俺が釘を投げた直後、「『火炎の槍ファイアーランス!』」と唱えて、炎の槍を周りに居るモンスターに向かって、無作為に飛ばした。
 今ので10匹近く倒したんじゃないか?もしかして俺いらない子?

 他の人たちも中々の強さだ。

 藤原は木刀でモンスターの攻撃を受止め、その間に、中野が弓で藤原が押さえ込んでいるモンスターを仕留めている。

 そして井嶋は、手を胸の前で組み、祈っていた。
 あれは井嶋のスキル【祈り】だ。
 【祈り】とは、仲間に対してバフ強化や体力の回復等を行うことが出来る。
 ちなみに小さな傷くらいなら治せる。

 井嶋のお陰で、みんな楽にモンスターを討伐することが出来ている。
 ある意味チート職業だな。

「井嶋のところには行かせねぇよ!」

 井嶋は、このパーティの要だ。
 こいつが欠けると、一気に戦況が敵側に傾く。
 だから、どんな手を使ってでも守らなければ.......と考え、ゴブリンやウルフを倒しているが、一向に減る気配が無く、そろそろ全員の体力が限界を迎えてきた。
 【祈り】を使っても、無尽蔵の体力を得られるわけではないのだ。

 しかし、生徒会長は何か策があるのか、パーティメンバー全員に大声で言った。

「皆さん!今から一気に殲滅するので下がってください!」

 生徒会長の指示に従って、俺たちは後ろに下がった。

「『火炎の大波ファイアーウェーブ』!」

 生徒会長が魔法名を唱えた瞬間、真っ赤な炎の波が目の前に広がった。
 そして、その炎を浴びたモンスターたちの殆どは焼け死んだ。

「さすがに魔力を消費しすぎましたね.......」

 と言って、生徒会長はふらついた。
 戦闘中に、ふらついたら完全な隙になるのだが、目の前にいたモンスターたちは一掃されたので、その心配も無用なようだ。

 生徒会長マジTUEEEE!




パーティメンバー

・佐藤 空

・西城 凛

・藤原 健斗

・影山 颯太

・井嶋 龍

・中野 千夏

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