魔王ノ聖剣

東雲一

十之剣 「石碑」

しばらく歩き、ソラは結局、エレムによって、村から少し離れた広場に連れて行かれていた。
広場には大昔に作られた石の柱が何本か立っています。ひびが入り、かけているものもあれば、折れてしまい原型をとどめていないものもあります。

光が裂け目から漏れてる。やけに明るく見えるな。あそこに、石碑らしきものが見えるぞ。

ソラは、広場の奥にある石碑が目につき、眺めています。地上の光が地面の裂け目から漏れており、石碑を照らしている。石碑には、謎の文字と剣の絵が刻まれていますが、それらが何を意味するのか分かりません。きっと、エレムがこの後、説明してくれるでしょう。
エレムは、広場にある石の上に座り、ソラに言う。

「やっと、ここまでこれたの。わしも疲れた。お前もそこに座って話を聞いてくれ」

ソラは、近くにある石の上に座り、エレムの話を聞く姿勢に入る。エレムの真剣な表情から、これから真面目な話がなされることは容易に予想ができます。

「話って、何なんだ。こんなところまで連れてきて」

ほんと、ここまで来るのは大変だった。結局、三、四時間は移動してるんじゃないのか。

「あそこにある石碑を見るのじゃ」

エレムは、石碑を指差し、ソラはそちらに顔を向ける。

「剣の絵がいっぱい描いてあるな」

「そうじゃ、全部で七つの剣が描かれておる。お前なら分かると思うが、七つというのは魔法の七つの属性を表す」

「火、水、木、土、光、闇、無の七つの属性のことか」

「そのとおり。それぞれの属性にそれぞれの剣が存在する。それも、ただの剣ではない。この大地パンドラを支配していた魔王たちが作った剣じゃ」

「魔王!?勇者の剣じゃなくて、魔王の剣なのかよ」

「石碑を見てみい。剣の近くに魔族の者が何人か描かれているだろ。そやつらが、魔王たちじゃ」

「ほんとだ。魔王たちが描かれている。うん、魔王たちと対峙するように描かれているのは勇者なのか」

「うむ。現在もそうじゃが、昔から、人間と魔族は争うことが多かった。当然、魔王と勇者はお互いに憎みあっていたのじゃ。そこで、敵である勇者を倒すため、魔王たちは一つの剣を作り出した。その剣は、“魔王ノ聖剣”と呼ばておる」

「一つの剣っておかしくないか。さっき、七つの剣って言ってただろ」

「もともとは、魔王たちが作り出した剣は一つだった。魔王の一人が、裏切り、人間側についたのじゃ。なぜ、一人の魔王がそのような行動をとったのかは謎じゃが、裏切りにより、剣は七つの剣に分断され、世界のあらゆる場所に散らばったという」

「もともとは一つの剣だったわけか。で、その七つの剣は、今はどうなっているんだ?」

「今も、散らばったままじゃ。世界のどこかにまだ存在しておる。確認じゃが、お前は魔王を倒す覚悟はあるか?」

「ある、もちろんだ」

ソラは、考える間をおかずにエレムの問いかけに即座に答えた。

「魔王は、勇者の聖剣を持っておる。聖剣を持った魔王を倒すには、魔王ノ聖剣の他に方法はない。魔王ノ聖剣は勇者の聖剣と同等の力を有していたようじゃからのう」

「つまり、魔王を倒すために、まず、七つの魔王ノ聖剣を集めてこいってことなのか」

「そうじゃ、七つの魔王ノ聖剣を集め、再び一つに戻すことができれば、魔王に対抗できるやもしれん」

「集めるのは、分かったが、どこにあるんだ。その七つの剣は......」

「分からん」

分からないのかよ。なら、どう探せばいいんだよ。

ソラが、そんなことを考えていると、エレムは、話を続けた。良かった、ただ分からないだけではなかったようです。

「ただ、魔王ノ聖剣の一つがこの妖精の森に存在する」

な、なんと魔王ノ聖剣の一つがこの森に存在していた。ソラも、驚いた顔をしている。

「なら、今すぐ取りに行こうぜ」

「待て!!魔王ノ聖剣は、まがまがしい魔力によって、守られている。村の者が何人か取りに行ったものがいるが、誰一人帰ってきてはおらぬ。今のやせ細ったお前では、先人と同じ運命をたどることになる。急がず、まずは、準備を整えるのじゃ」

「でも、こうしてる間にも村のみんなが。俺は、一刻も早くみんなを救いたいんだよ!!」

「まだ分からんのか!!お前は、確かに強かったかもしれんが、今のお前では、そこらへんの魔物にもやられるのがオチじゃ」

「俺は、まだやれる......」

ソラは、拳に力を入れようとしたが、全く力が入らないことに気づき、一瞬目を閉じる。

「ちょっと、村の散歩してくる」

エレムにそう言い残すと、ソラは広場から村の方に歩き始めた。エレムは、心配そうな様子で警告するように言った。

「一人で、魔王ノ聖剣を取りに行くのだけはやめるのじゃぞ」

「......」

お婆さん、悪い。俺は、じっとしていられないんだ。
自分の中でもやもやした気持ちが溢れ出て、じっとしていたら、飲みこもれそうなんだ。

エレムは、ソラの後ろ姿を見ながら静かに見守る。

まだまだ、未熟じゃの。必死になりすぎて、自分の実力が分からなくなっておる。
お前は、自分の弱さを知っている奴だと思っていたが、わしの思い違いじゃったかのう。とにかく、自分の中にはびこる負の気持ちに負けるでないぞ。

ソラは、エレムの忠告を無視して、魔王ノ聖剣を取りに行ってしまうのか。それとも、ただ村の散歩に出かけるのか。ソラから目が離せません。

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