魔王ノ聖剣

東雲一

七之剣 「追憶」

魔王の猛攻に、遠方に飛ばされるソラ。あまりの衝撃に意識もぶっ飛び、今までの記憶が走馬灯のように蘇る。ソラにとってはあまり思い出したく類の記憶です。

「よえーの、ソラ」

「落ちこぼれソラだ」

「ずっと一人だよな。あいつ」

容赦なく語りかける、ネガティブな声にソラは両手で両耳をふさぎます。

「何も出来ねーくせに」

「また一人だぜ、あいつ。だせー」

「あいつなんてほっといて行こうぜ」

ソラは、たった一人、砂場で山を作り、謎の文字を意味もなく描きます。かなり、精神的にきているようです。

「ソラが、こっち見てるぜ、きもい」

「よえー奴が悪いんだよ」

「何も良いところがない。不器用で何をやっても失敗ばかり。見ていて、苛つくんだよ」

“そうか、俺が弱いから......”

「何してるの?」

“誰だ。また俺を馬鹿にしにきたのか”

“もう十分なんだよ。悪口も、軽蔑も、嘲笑も。何度も何度も聞いて聞いて聞いて“

“もう十分なんだよ......”

「私、ポワル。一緒に遊ぼう」

彼女は、うずくまる俺に手を差し伸べてくれた。
俺はそっと彼女の手を掴んだ。

嬉しかった。
たった一言
それだけの言葉だったけれど
俺はその時、救われたーー。

彼女が俺の初めての友達になった。

「あいつ、ソラといるぜ」

「何なの。あいつ。偽善者ぶってんじゃねーよ」

“彼女が、俺のせいで。俺なんかと一緒にいるから”

“なんで、一緒にいじめられてんのに、笑ってんだよ”

“なんで、なんで落ちこぼれの俺なんかと”

“ありがとう”

笑う彼女は、美しかった。
彼女を守りたい。
俺は、誰よりも強くなりたい。
どんな敵からも彼女を守れる強い勇者になって、彼女を守りたい。

ずっと彼女には笑っていてほしいから、そう思った。

「また、やってるよ。あいつ」

「何回、剣を振ってんだよ」

「無駄無駄」

「いくらやっても、あいつじゃ、伸び代ねーよ」

“俺には、何もねーよ。だから、強くなるためには凡人の何倍も努力しねーといけねーんだ”

「おい、あいつ、強くなってねーか」

「ああ、強いじゃん、あいつ」

「やるじゃんか」

俺は、少しずつ地道に剣の腕を上げていった。
それとともに、人々が俺に向ける目は変わっていった。
そして、いつの日か剣神と呼ばれるようになった。

たった一人だった俺に、たくさんの人々が集まり、拍手を送っていた。

※※※

ソラは、長い長い眠りから覚めた。

緑。木。葉。大自然。

ここはどこだーー。

俺は、どこにいる。そうだ、ポワルは、テラは、村のみんなは。

いない。

ソラが夢から覚めた場所は“妖精の森”。巨大な大木が生え、多くの妖精たちが住む大自然に恵まれた場所です。
ここから、ソラの新たな冒険が始まる。(妖精の森編スタート!!)

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