魔王ノ聖剣

東雲一

一之剣 「剣神」

さてさて、やって参りましたよ。待ち遠しかったこの日。聖剣引っこ抜き大会、本日、開催いたします。長かった、人間と魔王との戦いの日々がこの日を境に終わりを迎えるといっても過言ではないでしょう。

「頑張って!!」「期待してるぞ!!」

おっと、出場者の皆さんを囲むように、村人が出場者にエールを送っている。見たところ、約1000人くらいといったところか。いや、もっと来ているか。村人の熱烈なエールに出場者の皆さんが両手を上げて答える。

「頑張るぜええええ!!いええええ!!」「俺が剣を引っこ抜いてやるよん!!」「我が輩が、勇者となりてこの世を救う」「うちが、勇者になるねん」

出場者の皆さん、みな個性的だ。早くも、カオス。いったい、この聖剣引っこ抜き大会どうなるのでしょうか。まだ、始まってはいないですが、非常に楽しみになってきました。

さてさて、そろそろ本大会のルールをご説明しましょうーー。

出場者は、約30人。たった30人とお思いでしょうが、ここに集まる30人はいくつもの予選に勝ち上がってきたちょーう強者たちだ。円状のステージの真ん中に突き刺さった聖剣をいち早く抜いた強者がこの村の勇者に称えられ、魔王を倒す資格を手にすることができるのです。
もちろん、勇者になれるのはたった一人。その一枠を巡って、全国から集まった猛者たちが争うことになります。
ルールはシンプル。真ん中の剣を先に抜いたら、勇者となる。たったそれだけだ!!

「あれ!?一人足りなくないか」「ほんとだ」「あいつがいねー」

なんだなんだ、村民が、ざわつき始めた。言われてみれば、ステージには、確かに29人しかいない。本大会の出場者が30人なので、一人たりない。
どういうことでしょう。本大会の最有力候補とされていた、あいつがいない。何かあったのでしょうか。それとも、まさかのドタキャンなのか。みすみす、勇者のチャンスを棒にふるとは愚行としか言えませんが。

「あそこ見ろよ」「ソラだ。ソラがきた」「たく、待たせやがって」

村人たちが見つめる先には、全速力に走る馬。そして、馬の上に乗っているのは、ソラだ!!今回の最有力候補にして、“剣神”と呼ばれた男。遅れて登場だ!!
ソラは馬を巧みに操り、ステージに向かって直進しているようです。ステージの周辺には、村人たちの壁がありますが、馬に乗っていて大丈夫なのでしょうか。

「あっ、ちょっと、避けてもらえますか。すみません。すみません」

村人に道をあけてもらい、少しずつステージに近づいていく。大会スタートまで、それほど時間は間に合りませんが、追いつくのか。
ソラの顔には、焦りが見られる。かなり、時間を気にしている。この村人たちの壁を全く考慮していなかったようだ。ですが、ついに、馬から下り人々を必死にかき分け、ステージに到達しました。
ソラは、村人たちの方を眺めている。何か言いたそうな顔ですが。お、口に手をあてて、思いっきり息を吸った。まさか、何か言うのか、言うのか。

「待たせたな!!俺がソラだ!!俺が、剣を抜いて勇者になってやる!!」

叫びました。自らが勇者になると宣言した。ソラの声を聞き、村人たちも一斉に大きな声で叫んでいる。大会は予想以上の大盛り上がりだ。











「魔王様、あれが聖剣がある村です......」
「えっ、そうなの。小さな村ね」

忍びよる影ーー。

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