ガンズ・バイ・デイズ―高校生サバゲーマーの魔法世界奮闘記―
BRIEFING:22 この心にある物は。
目を開けると、天井が目に映っていた。
寝ていた?あれは夢だったのだろうか。
そうだ、夢に違いない。私があんながさつで、礼儀のなってない男を好きになるだなんて。
体に妙な重さを感じる、体を起こすと――――
「ひう!?!?」
あの男が、私の寝てるベットの横に座って、こちらに顔を突っ伏して寝ていた。
「な、なななななななな」
「あ、起きたんですね、良かったです」
怒りだか妙な恥ずかしさに震えているとマリアが入ってきた。
なに、どういうこと?
「クウガ様、リズリットさんを抱えてここから少し離れた小島から歩いて帰ってきたのです」
「え・・・じゃあ」
あれは、夢じゃ、ない・・・?
そこまで話して、彼女はクウガの顔を見、寝てるのを確認する。
・・・・なんだろう、マリアが幸せそうな顔で眺めてるのを見ると妙にモヤモヤする。
腹立つ、普段からだけど、なんか、もっと腹立つ。
なんでだろうか。
「うふふ、クウガ様の寝顔は可愛らしいですわね、ついつい見とれてしまいます・・・いけない、本題にしましょう、クウガ様が寝ている間に」
「・・・何かしら」
頬に手を当て、赤く染めもじもじと体をくねらせる様は、市井の若い女まんまだが、アーティフィシャルの男がこの姿を見たら失神するか嫉妬するか怒るかのどれかじゃないだろうか。
私が見ても中々に色っぽい。
というかマリアがコイツに知られたくない、なんて、何事だろうか。
キョロキョロして、顔を近付けてきた。
「リズリットさん、水筒、ございましたね?」
「うぐ」
そうだ、私がヘンリエッタ様に淹れようとした惚れ薬入りの紅茶。
それを入れた水筒が、ある。
あ、ああ、そうか!私がアイツに変な気持ちを抱いたのは惚れ薬のせいだったのね!?
そうよね!嗚呼スッキリした!
あんなヤツに変な気持ちなんて抱く訳が無い物ね!
「クウガ様が持ち帰っておりまして、その水筒から、二種類の薬物が見つかりました・・・
まあ、一つはあなたなのですよね?リズリットさん・・・惚れ薬なんてズルいです」
「ぅ・・・」
反論の余地もない。
一国の姫が他国の王子に惚れ薬を盛ろうとしたのだ。
ズルい、なんて度合いではない。
「ですが、恋愛は正々堂々ですよ?」
「う、わ、悪かったわね・・・」
「大丈夫です、クウガ様には内緒にしますから、でも負けませんよ?」
「なんでコイツの名前がでるのよ!」
ヘンリエッタ様の名前が出るかと思ったらとんでもない奴の名前が出た。
「大丈夫、解ってますから、私もですし・・・負けませんよ?」
「ち、ちが!私はこんな奴」
こんな、奴・・・
“――――そうしたら、オレが手を引いて案内してやるよ、はぐれないようにな“
頭に言葉がよぎる。
心臓が早鐘を打つ。
おかしい、もう薬は抜けてる筈なのに。
なんで、心臓が、きゅぅって・・・痛いの。
「とにかく、そういうことにしますから。さて、もう一つ有りました」
そんな私を知ってか知らずか話を続けるマリア。
もう一つ有る、と続けた。
つまりそれは
「毒、ね」
「はい、遅効性の薬毒と薬剤官の方が」
私を狙ったもの?それともリヴェルタニア様・・・?
「そ、教えてくれてありがとう、礼は言うわ」
「お礼ならクウガ様に後で言っては?嵐の中、リズリットさんを抱えてこれてなかったら命は無かったそうです」
「む・・・」
一度溺れて、助けてもらって・・・
今度もまた、助けてもらった・・・
「お疲れでしょうに、なのに『リズリットを人と見てねえ奴に任せて寝れるか!』と、看病まで・・・」
「むー・・・」
難しい顔をワザと浮かべる私。
気を緩めてはだめ、顔がにやけてしまう。
口角が、自然に上がっちゃう。だめ。
私のキモチを、彼は解っていたんだ。
嵐を渡った後に、看病までして・・・。
「・・・私、負けませんよ?」
「な、ななななな、何によ!」
「私、クウガ様、好きですから」
笑顔でこの姫はとんでもないことをいってきた。
―――――――――――――――――――――――――――
「あー、くーくんおきた?」
頭を撫でる顔、あれ・・・・日向?
「もー!もう少しでフィールドだよ?今日は野外なんだからー、気を付けないと―」
「あ、ああ、すまん、日向」
「ホントバカね、ヘッドショットされて少しは頭を直したらどうかしら」
「渚さんや、そんなことをいわないでくれませんかねえ?!」
あきれた様子で冷ややかに言ってくる渚。
「何泣いてんのよ、私のひなちゃんをアンタの汚い涙で汚さないでよ」
「え?」
美玖の呆れた声で自分の頬を触る。
水の感触と、ヒヤッとした冷たさが指先を覆う。
「なんで泣いてるの?どこか痛いの?」
「こ、これくらいの言葉で何泣いてるのよ」
「ひなちゃんの同情誘おうとしてるの?ホントに卑怯ね」
「なんだ?空牙ぁ、泣いてんのかあ?」
恭介までからかってきた。
「いや、なんか変な夢を見てた気がするんだ・・・変だよな、あはは」
「夢じゃ、ないわよ」
振り向くと、小さい女の子が、立っていた。
気付くと周りが真っ暗になっていた。
「夢じゃ、ないわよ」
「・・・・そうだよな、いい夢だった、ああ、本当に」
「・・・いこう?」
手を差し出してくる。
ああ、名残惜しいけど、嗚呼・・・・・・。
手を取り、気付くと目の前には――――リズリットが居た。
「へ?」
「・・・・全く、あんたは不遜ね。王女の看病して眠りこけるとか」
どうやら、夢だったようだ。
「ああ、うん、すまん」
「ふん・・・まあ・・・・その、一応礼は言ってあげるわ」
「ふふ、素直じゃないんですから、リズリットさんは」
クスクスといつの間にかいたマリアに笑われ、リズリットはいつもの調子。
そうだよな、これが―――――、今の俺の現実だ。
「おう、リズリット・・・・受け取っておくよ」
笑いつつ、そう答える。
「・・・・あう・・・う・・・・」
「・・・・?」
顔を赤くして、俯いたリズリット・・・・あれ、あの、すごいプレッシャーを感じるんですが。
「いかがなさいました?クウガ様」
「あ、いえ、別に・・・・」
ど、どうしてだろうか。
マリアの笑顔に影が見える。
怖い・・・・・いや、凄みがある。
「そうですか、良かったです」
「は、はい」
何とも言えない空気、どうして?!俺何か怒らせた!?
誰か助けてくれえ・・・・!
と、祈っていると、コンコン、と部屋がノックされる。
「ヘンリエッタだけど、失礼してもいいかな?」
「リヴェルタニア様?!ど、どどど、どうぞ!」
がばーっ、と起き上がり、急いで身支度をする。
凄いものだな、昨日まで意識混濁の病人とは思えない。
「やあ、リズリットさん。体調が悪いと聞いてお見舞いに来たんだ」
「まあ!まあまあ!ああ、幸せですわぁ・・・・」
幸せな表情でフラフラとベッドに倒れ込んだ。
ホント、現金な奴だ。
「マリアさんにクウガさん、君達も来ていたんだね、お邪魔するよ」
「よう、リヴェルタニアさん」
「ごきげんよう、リヴェルタニア様」
「ごきげんよう、マリアさん・・・・クウガさん、せっかくの男子同士、堅苦しいのは無しにしてくれないかな?」
「わかった、ヘンリエッタ。その代わり俺の事も呼び捨てにしてくれよ」
「うん、分かったよ、クウガ・・・・それにしても復調なされたようでなによりだよ」
「ああ、リヴェルタニア様にそのようなお言葉・・・・光悦の極みに御座いますぅ・・・」
にっこり笑いかけるヘンリエッタの笑顔にノックダウンしてるリズリット、なんかよだれ垂らしてぴくぴくしてる。
「さて、丁度いいね。クウガ、少し時間をもらえないかな」
「わかった。いいよ」
「あ、ちょ、ちょっと待ちなさい、クウガ」
立ち上がり、外に出ようとした背中に声を投げかけられる。
なんかもじもじ、というか、視線が泳いでる。
「話が終わったら、その、また来なさい」
「おう、最後まで看病しなきゃ気持ちわりーしな」
「なっ!?気持ち悪いって・・・!」
バタバタと後ろで声がするが気にしなーい。
そうして海岸まで来、ヘンリエッタが口を開いた。
「改めて、彼女を、マリアさんを助けてくれて、ありがとう」
「え?」
「彼女は国の為に自分を投げ出す事を笑顔で納得する人間だった。嫌、というのなら僕にも手を回すことはできたが、迂闊に口を出すわけにもいかない。国同士だからね。
そんな彼女を、君は救ったんだ。
彼女の友人として、人々の想いを守る「聖剣」として、礼を言わせてくれ。
ありがとう、異界の者、赫獣、クウガ殿。」
「や、止めてくれよ!それはもう一度終わったろう?そんな、俺はただ、喧嘩しにいっただけ、だし・・・そんな」
そうだ。
オレはオレのしたかった事をしただけで、礼を言われるようなことはしていない。
「それでもなお、君の行いは人を救ったんだ」
「救った・・・?」
「婚姻が決まってから彼女はこの学園で気が抜ける場所では、決まって陰鬱としていた」
「・・・・」
「だが、君はそんな彼女に笑顔を取り戻した。まさに魔法というべきかもしれない。」
「大袈裟だよ、ヘンリエッタ・・・」
「大袈裟ではないよ・・・・そんな君にそんな彼女の友人として、君に感謝と敬意を送りたかった。
君のような友人を得たことを誇りに思うよ」
「そ、そうか?あは、は・・・」
む    ず    痒    い    わ    !    !
なんで王子様から手放しで賞賛されてるの?
そんなにヤバい事・・・だ、だよなぁ・・・。
でも、褒められるのは馴れてないし、こっぱずかしい・・・。
「は、話はおしまいか?」
「うん、すまなかったね。どうしてもちゃんと言いたかったんだ。
キミは前、どうもうわの空の様だったから」
「いや、気にすんなよ・・・二重の意味でな」
「二重?どういう意味だい?何か含みを持たせてあるなら気になるから直接」
「いや!何でもないから!何でも!な!」
「そ、そうかい?解った。キミがそういうなら」
この天然王子め・・・。
「じゃあ、俺は戻るよ」
「うん、すまないね、手間をとらせてしまって」
「いいや、気にすんな・・・気にしてないからさ」
手を振り、リズリットの部屋に戻る。
「っと・・・ちゃんと寝てるかー」
「そうそう寝てられないわよ」
「そこまで憎まれ口叩けるなら粗方回復したみたいで何よりだよ」
「ふ、ふん・・・その、ね、改めて・・・こほん。
此度の貴殿の行い、誠に感謝致します。赫獣アマギ・クウガ殿。
このような形ですが、改めて御礼致します。」
「・・・どういたしまして、姫殿下」
茶化すのもあったけど、素直で姫様なリズリットは、なんか、抗いがたい物があったんだ。
「ふ、ふん・・・今回はなんだからね!勘違い・・・しないでよねっ!」
「しねーよバカ」
「バカ!?アンタ今私にバカって言ったの!?
「ああいったよバーカバーカ!」
「むきぃぃ!あんたなんて嫌い!大っきらいなんだから!」
―――――――――――――――――――――――――――――
そうして笑い、怒る私達。
だけど、会話の節々でちくりと痛む言葉を吐いて嘘を付いているのは・・・なんでだろう?
私は、リヴェルタニア様が好きなの。
あの人が、好き。
なのに、どうして、この赤い髪を目で追うんだろう。
どうして、この無礼者と一緒にいたいんだろう。
わからないわ・・・・・。
そうして俺達の海水浴旅行は終わった。いや、課外授業なんだけどね?ね?ねえ?!
―――――――――――――――
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寝ていた?あれは夢だったのだろうか。
そうだ、夢に違いない。私があんながさつで、礼儀のなってない男を好きになるだなんて。
体に妙な重さを感じる、体を起こすと――――
「ひう!?!?」
あの男が、私の寝てるベットの横に座って、こちらに顔を突っ伏して寝ていた。
「な、なななななななな」
「あ、起きたんですね、良かったです」
怒りだか妙な恥ずかしさに震えているとマリアが入ってきた。
なに、どういうこと?
「クウガ様、リズリットさんを抱えてここから少し離れた小島から歩いて帰ってきたのです」
「え・・・じゃあ」
あれは、夢じゃ、ない・・・?
そこまで話して、彼女はクウガの顔を見、寝てるのを確認する。
・・・・なんだろう、マリアが幸せそうな顔で眺めてるのを見ると妙にモヤモヤする。
腹立つ、普段からだけど、なんか、もっと腹立つ。
なんでだろうか。
「うふふ、クウガ様の寝顔は可愛らしいですわね、ついつい見とれてしまいます・・・いけない、本題にしましょう、クウガ様が寝ている間に」
「・・・何かしら」
頬に手を当て、赤く染めもじもじと体をくねらせる様は、市井の若い女まんまだが、アーティフィシャルの男がこの姿を見たら失神するか嫉妬するか怒るかのどれかじゃないだろうか。
私が見ても中々に色っぽい。
というかマリアがコイツに知られたくない、なんて、何事だろうか。
キョロキョロして、顔を近付けてきた。
「リズリットさん、水筒、ございましたね?」
「うぐ」
そうだ、私がヘンリエッタ様に淹れようとした惚れ薬入りの紅茶。
それを入れた水筒が、ある。
あ、ああ、そうか!私がアイツに変な気持ちを抱いたのは惚れ薬のせいだったのね!?
そうよね!嗚呼スッキリした!
あんなヤツに変な気持ちなんて抱く訳が無い物ね!
「クウガ様が持ち帰っておりまして、その水筒から、二種類の薬物が見つかりました・・・
まあ、一つはあなたなのですよね?リズリットさん・・・惚れ薬なんてズルいです」
「ぅ・・・」
反論の余地もない。
一国の姫が他国の王子に惚れ薬を盛ろうとしたのだ。
ズルい、なんて度合いではない。
「ですが、恋愛は正々堂々ですよ?」
「う、わ、悪かったわね・・・」
「大丈夫です、クウガ様には内緒にしますから、でも負けませんよ?」
「なんでコイツの名前がでるのよ!」
ヘンリエッタ様の名前が出るかと思ったらとんでもない奴の名前が出た。
「大丈夫、解ってますから、私もですし・・・負けませんよ?」
「ち、ちが!私はこんな奴」
こんな、奴・・・
“――――そうしたら、オレが手を引いて案内してやるよ、はぐれないようにな“
頭に言葉がよぎる。
心臓が早鐘を打つ。
おかしい、もう薬は抜けてる筈なのに。
なんで、心臓が、きゅぅって・・・痛いの。
「とにかく、そういうことにしますから。さて、もう一つ有りました」
そんな私を知ってか知らずか話を続けるマリア。
もう一つ有る、と続けた。
つまりそれは
「毒、ね」
「はい、遅効性の薬毒と薬剤官の方が」
私を狙ったもの?それともリヴェルタニア様・・・?
「そ、教えてくれてありがとう、礼は言うわ」
「お礼ならクウガ様に後で言っては?嵐の中、リズリットさんを抱えてこれてなかったら命は無かったそうです」
「む・・・」
一度溺れて、助けてもらって・・・
今度もまた、助けてもらった・・・
「お疲れでしょうに、なのに『リズリットを人と見てねえ奴に任せて寝れるか!』と、看病まで・・・」
「むー・・・」
難しい顔をワザと浮かべる私。
気を緩めてはだめ、顔がにやけてしまう。
口角が、自然に上がっちゃう。だめ。
私のキモチを、彼は解っていたんだ。
嵐を渡った後に、看病までして・・・。
「・・・私、負けませんよ?」
「な、ななななな、何によ!」
「私、クウガ様、好きですから」
笑顔でこの姫はとんでもないことをいってきた。
―――――――――――――――――――――――――――
「あー、くーくんおきた?」
頭を撫でる顔、あれ・・・・日向?
「もー!もう少しでフィールドだよ?今日は野外なんだからー、気を付けないと―」
「あ、ああ、すまん、日向」
「ホントバカね、ヘッドショットされて少しは頭を直したらどうかしら」
「渚さんや、そんなことをいわないでくれませんかねえ?!」
あきれた様子で冷ややかに言ってくる渚。
「何泣いてんのよ、私のひなちゃんをアンタの汚い涙で汚さないでよ」
「え?」
美玖の呆れた声で自分の頬を触る。
水の感触と、ヒヤッとした冷たさが指先を覆う。
「なんで泣いてるの?どこか痛いの?」
「こ、これくらいの言葉で何泣いてるのよ」
「ひなちゃんの同情誘おうとしてるの?ホントに卑怯ね」
「なんだ?空牙ぁ、泣いてんのかあ?」
恭介までからかってきた。
「いや、なんか変な夢を見てた気がするんだ・・・変だよな、あはは」
「夢じゃ、ないわよ」
振り向くと、小さい女の子が、立っていた。
気付くと周りが真っ暗になっていた。
「夢じゃ、ないわよ」
「・・・・そうだよな、いい夢だった、ああ、本当に」
「・・・いこう?」
手を差し出してくる。
ああ、名残惜しいけど、嗚呼・・・・・・。
手を取り、気付くと目の前には――――リズリットが居た。
「へ?」
「・・・・全く、あんたは不遜ね。王女の看病して眠りこけるとか」
どうやら、夢だったようだ。
「ああ、うん、すまん」
「ふん・・・まあ・・・・その、一応礼は言ってあげるわ」
「ふふ、素直じゃないんですから、リズリットさんは」
クスクスといつの間にかいたマリアに笑われ、リズリットはいつもの調子。
そうだよな、これが―――――、今の俺の現実だ。
「おう、リズリット・・・・受け取っておくよ」
笑いつつ、そう答える。
「・・・・あう・・・う・・・・」
「・・・・?」
顔を赤くして、俯いたリズリット・・・・あれ、あの、すごいプレッシャーを感じるんですが。
「いかがなさいました?クウガ様」
「あ、いえ、別に・・・・」
ど、どうしてだろうか。
マリアの笑顔に影が見える。
怖い・・・・・いや、凄みがある。
「そうですか、良かったです」
「は、はい」
何とも言えない空気、どうして?!俺何か怒らせた!?
誰か助けてくれえ・・・・!
と、祈っていると、コンコン、と部屋がノックされる。
「ヘンリエッタだけど、失礼してもいいかな?」
「リヴェルタニア様?!ど、どどど、どうぞ!」
がばーっ、と起き上がり、急いで身支度をする。
凄いものだな、昨日まで意識混濁の病人とは思えない。
「やあ、リズリットさん。体調が悪いと聞いてお見舞いに来たんだ」
「まあ!まあまあ!ああ、幸せですわぁ・・・・」
幸せな表情でフラフラとベッドに倒れ込んだ。
ホント、現金な奴だ。
「マリアさんにクウガさん、君達も来ていたんだね、お邪魔するよ」
「よう、リヴェルタニアさん」
「ごきげんよう、リヴェルタニア様」
「ごきげんよう、マリアさん・・・・クウガさん、せっかくの男子同士、堅苦しいのは無しにしてくれないかな?」
「わかった、ヘンリエッタ。その代わり俺の事も呼び捨てにしてくれよ」
「うん、分かったよ、クウガ・・・・それにしても復調なされたようでなによりだよ」
「ああ、リヴェルタニア様にそのようなお言葉・・・・光悦の極みに御座いますぅ・・・」
にっこり笑いかけるヘンリエッタの笑顔にノックダウンしてるリズリット、なんかよだれ垂らしてぴくぴくしてる。
「さて、丁度いいね。クウガ、少し時間をもらえないかな」
「わかった。いいよ」
「あ、ちょ、ちょっと待ちなさい、クウガ」
立ち上がり、外に出ようとした背中に声を投げかけられる。
なんかもじもじ、というか、視線が泳いでる。
「話が終わったら、その、また来なさい」
「おう、最後まで看病しなきゃ気持ちわりーしな」
「なっ!?気持ち悪いって・・・!」
バタバタと後ろで声がするが気にしなーい。
そうして海岸まで来、ヘンリエッタが口を開いた。
「改めて、彼女を、マリアさんを助けてくれて、ありがとう」
「え?」
「彼女は国の為に自分を投げ出す事を笑顔で納得する人間だった。嫌、というのなら僕にも手を回すことはできたが、迂闊に口を出すわけにもいかない。国同士だからね。
そんな彼女を、君は救ったんだ。
彼女の友人として、人々の想いを守る「聖剣」として、礼を言わせてくれ。
ありがとう、異界の者、赫獣、クウガ殿。」
「や、止めてくれよ!それはもう一度終わったろう?そんな、俺はただ、喧嘩しにいっただけ、だし・・・そんな」
そうだ。
オレはオレのしたかった事をしただけで、礼を言われるようなことはしていない。
「それでもなお、君の行いは人を救ったんだ」
「救った・・・?」
「婚姻が決まってから彼女はこの学園で気が抜ける場所では、決まって陰鬱としていた」
「・・・・」
「だが、君はそんな彼女に笑顔を取り戻した。まさに魔法というべきかもしれない。」
「大袈裟だよ、ヘンリエッタ・・・」
「大袈裟ではないよ・・・・そんな君にそんな彼女の友人として、君に感謝と敬意を送りたかった。
君のような友人を得たことを誇りに思うよ」
「そ、そうか?あは、は・・・」
む    ず    痒    い    わ    !    !
なんで王子様から手放しで賞賛されてるの?
そんなにヤバい事・・・だ、だよなぁ・・・。
でも、褒められるのは馴れてないし、こっぱずかしい・・・。
「は、話はおしまいか?」
「うん、すまなかったね。どうしてもちゃんと言いたかったんだ。
キミは前、どうもうわの空の様だったから」
「いや、気にすんなよ・・・二重の意味でな」
「二重?どういう意味だい?何か含みを持たせてあるなら気になるから直接」
「いや!何でもないから!何でも!な!」
「そ、そうかい?解った。キミがそういうなら」
この天然王子め・・・。
「じゃあ、俺は戻るよ」
「うん、すまないね、手間をとらせてしまって」
「いいや、気にすんな・・・気にしてないからさ」
手を振り、リズリットの部屋に戻る。
「っと・・・ちゃんと寝てるかー」
「そうそう寝てられないわよ」
「そこまで憎まれ口叩けるなら粗方回復したみたいで何よりだよ」
「ふ、ふん・・・その、ね、改めて・・・こほん。
此度の貴殿の行い、誠に感謝致します。赫獣アマギ・クウガ殿。
このような形ですが、改めて御礼致します。」
「・・・どういたしまして、姫殿下」
茶化すのもあったけど、素直で姫様なリズリットは、なんか、抗いがたい物があったんだ。
「ふ、ふん・・・今回はなんだからね!勘違い・・・しないでよねっ!」
「しねーよバカ」
「バカ!?アンタ今私にバカって言ったの!?
「ああいったよバーカバーカ!」
「むきぃぃ!あんたなんて嫌い!大っきらいなんだから!」
―――――――――――――――――――――――――――――
そうして笑い、怒る私達。
だけど、会話の節々でちくりと痛む言葉を吐いて嘘を付いているのは・・・なんでだろう?
私は、リヴェルタニア様が好きなの。
あの人が、好き。
なのに、どうして、この赤い髪を目で追うんだろう。
どうして、この無礼者と一緒にいたいんだろう。
わからないわ・・・・・。
そうして俺達の海水浴旅行は終わった。いや、課外授業なんだけどね?ね?ねえ?!
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