ガンズ・バイ・デイズ―高校生サバゲーマーの魔法世界奮闘記―

ファング・クラウド

BRIEFING:20 象徴の意味。

「———」


何か、聞こえる。


「———あ—————よ」


朝だよ・・・?
んん・・・まだ寝たい・・・


「目を覚ましなさいよ!」


ドカッという強い衝撃が腹部に走る。


「がふっ!?」
「漸く目覚めたかしら?」
「おま・・・おまままま・・・」


腕組みしたリズリットがそこに君臨していた。


「ふん!此処まで私が運んであげたのよ、感謝の言葉はないの?!」


見やると海辺に近い洞窟、どうやら波に飲まれて意識を持って行かれた後流れ着いたようだった。


「あ、ありがとよ・・・」
「遅くってよ!まあ、いいわ、私は寛大だから許してあげる」


尊大な態度でふんぞり返る、全くコイツは・・・。


「とりあえず廻りを見てくるか、何か無いか探してくるわ」
「なっ・・・私を置いて」
「当たり前だろ、散策で無闇に女の子の体力削れねーよ」
「へっ?」


気の抜けた声が聞こえ、そのまま洞窟を後にする。
綺麗な砂浜に、森林地、間違い無く絵に書いたような孤島だ。


「あー・・・面倒くさい事になったなあ」


流されたであろう島からは浜は見えるが、その浜はどこらへんか解らない。
迂闊に動いて変な海流で流されたくも無いしなあ・・・


「ん?」


急に視界が暗くなる、見上げれば暗雲が昇り始めていた。


「あー・・・」


溜め息にもにた声を出し、まずは森に軽く入り枯れ枝を探すのだった・・・。




―――――――――――――――――――――――――――――――――――
「遅い」


何よアイツ、ちょっととかいいながらもう何十分じゃない!
一国の姫をこんなに放置するなんて失礼じゃないの!?


「もしかして・・・」


わたくしの頭を過ぎったのは、幼い記憶。
信じてた人が昔居た。
わたしの従者をしていたその人は、私によく尽くしてくれ、まるで姉を持った気分で接していた。
ある時、彼女と市に出掛けた。


「姫様、今日は市井で小さなお祭りがあるんですよ♪見に行きませんか?」


彼女の言葉に笑顔で返し、私は彼女と町に向かった。
その先で、私は彼女とはぐれた。
お忍びで来ていたので私を「私」と証明する物は何もない。
途方にくれ、歩き倒し、城門前まで来たところで私は騎士団の人間に保護された。
彼女はその後追っ手に捕まりいけしゃあしゃあと答えたと聞いた。


「日頃から溜まって居たのよ!私は従者だけど奴隷じゃない!だから置いてったのよ!」


それが彼女の答えだと。
そして、わたくしは人間に深く関わるのを止めた。
姫は、そういう物だ。
国の象徴として生きなければ。
象徴は象徴以外、何者にもなれない、のだと。
否、"何者にもなってはいけないのだ"と。
だがこの学園はいい。
だって象徴しか居ないから、ならわたくしわたしで居られるわ。


膝を強く抱える
その時の記憶がよぎり、私は顔を伏せる。
アイツも彼女のように私の置いていったのよ。
音がし、見ると大雨が降っていた。
ああ・・・やっぱりそうだ、アイツは・・・。


「どうした!どこか痛むのか?」


顔を上げると、息を切らし赤い髪から雨を滴らせた男が心配そうにこちらを見ていた。
え?置いてったんじゃ・・・


「べ、別に大丈夫よ、お、お、遅かったのね」
「わりぃ、集めてたら時間かかった」


そう言って彼は大量の枝を地面に置いた。


「な、何してたのよ・・・」


解ってるのに口に出てしまう。
期待する事が怖いんだ。


「そりゃ、焚き火用だよ・・・雨だしオレ達海で濡れてるからな、夏だろうと風邪引きかねないし」
「な、何のつもりよ・・・」
「はあ?何のつもりって」
「何が目的よ!お金?地位?」


解ってる。
この男は馬鹿だ、国同士の婚約を「嫌がってるから」で叩き壊しに乱入し、ぶち壊した大馬鹿だ。
象徴に、象徴以外の意味を見出す人間だ。
それでも。
それでも、怯えきった私の心は承知しない。言葉の鎧を常に着る。
この馬鹿を、信用するのが怖い。
信用して裏切られるのが怖い。


「いらねーよんなもん・・・」


そんな私の逡巡を知ってか知らずか溜め息混じりに枝を組み、いい笑顔で言った。


「火、付けてくれ!」


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「は?」
「だから、火、付けてくれ」


ギャグマンガみたいな怪訝な顔をされた。


「それぐらい自分でしなさいよ」
「出来ねえよ?!呪文とか知らねえし!」
「あんた、本当に同じ学園の生徒なのかしら?」
「うるせえ!魔法なんて無かったんだよ!今までな!」
「仕方ないわね・・・一つ貸しよ」


シビアだなこの姫。


ひゅいっとあっという間に火が灯る。
・・・今気付いたが、リズリットって凄い体型だよな、出るとこはでて、キュッとしまって・・・ヤバイヤバイ考えすぎるな。


「ねえ」
「は、はい!」
「な、なによ・・・こほん、あんたって異世界の人間なのよね」


良かった、いやらしい視線すんだけど~、とかそんなんじゃなかったか。


「ああそうだよ」
「聞かせてよ」
「良いけど・・・面白いかはわからんぜ」


聞かれるままに答えた。
日本の学校、国の関係や技術、問題や、世界についてだが。
目を輝かせて惚けたように聞き入っていた。


「そんな世界があるのね・・・」
「ああ、あるんだ」


じーっと、こっちを見てくる。
な、なんだよ


「ねえ」
「あん?」
「私が、その世界に行きたいって言ったら?」
「んー・・・」


正直、オレも帰れるか解らないのに行き来したい、ねえ
まあ、コイツも大変なんだろうな


「そうしたら、オレが手を引いて案内してやるよ、はぐれないようにな」


――――――――――――――――――――――――――――――――――――
はにかみながらこの人は、私が知らない土地に言ったら手を引いて案内してくれると言った。
はぐれないようにな・・・私を失わないように。
私、どうしてだろう、心がざわつく。
心臓が早鐘を打っている。
水が欲しくては私は持ってきていた水筒に口を付け飲む。
私は忘れていた、この水筒にはヘンリエッタ様を口説いて、落とす為に
—————————飲んだ人間には興奮作用を、飲んだ人間を見た側には興味や興奮を持たせる作用の惚れ薬を入れていた事を。


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「おかしい」
リズリットが明らかにおかしい、こう、眼がとろんっ・・・としてる。
正直可愛い、犯罪に触れないなら押し倒したい魅力がある。
でも、なあ、そもそもリズリットだし。
押し倒してでもしてみろ、骨の一片まで燃やし尽くされるぞ。
しかし、それでも目がいく。
水気を未だ含み、しっとりゆるふわカールとなったドリルヘアー。
たわわっっとなっている物の、身長とのバランスが取れたメロンバスト。
きゅっとして触ったら吸い付きそうな胴腰回り。
何時もはドレスで隠れているけどスラッとして、白くて綺麗な脚。
思わず生唾を飲む。苛烈さが鳴りを潜めたなら、男子諸君が夢に描く近所の大学生のお姉さん、って言われても全く違和感がないだろう。
正直、たまらないです。
だけど、マズい。そんなこと自体を考えるな。
火線が集中する。だめだ。
今は、昔の事を考えろ。
・・・・みんな、元気にしてるかな。
そもそも、戻ったとして、それは今と同じ時代、時間なんだろうか。
オレに生きる世界はあるのだろうか・・・・・。
パチッ、と火が弾け、引き戻される。


「ねえ」


どうして、こうなったんだ・・・?


「・・・もっとこっち来なさいよ・・・寒いでしょ、別に良いわよ」


リズリットの服から雫が垂れ、髪は張り付き、薪に照らされて扇情的な雰囲気を醸し出す。


「あ、ああ・・・」


ほんの少しだけ近付く。
どうしてこんな事に?
こんな、エロゲみたいなことになったんだ!?


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