ガンズ・バイ・デイズ―高校生サバゲーマーの魔法世界奮闘記―

ファング・クラウド

BRIEFING:08 自分を欺かない為に

「・・・・私、自分がどうしたいのかって、最近わからないんです」
「わからないって?」
「結婚が・・・嫌になってしまって・・・・」
「・・・・・・」
「私は王族です、民の安寧の為この命を捧げる覚悟はあります。ですが・・・」
「が?」
「恥ずかしい話なのですが・・・時折、そんなのは嫌だと、そう考える自分がいるのです・・・」


伏せ目がちに弱々しく語る彼女。
ああ、本当、優しくて生真面目なんだな。
そう考え、励ますように言った。


「じゃあ、そんな時はまたこうやって話を聞くし、出来ることなら手伝うよ」
「え?」


驚いた表情で顔を上げるマリア。


「オレは王族なんて無い世界で育ったからさ、打ち明け易いと思うしそれぐらいしか出来ないしな」
「いえ、充分です・・・ありがとうございますクウガ様」






――――そう、あの時、「約束」したんだ。
―――――――だったら、「約束」は果たさなくちゃ。




「よっ」


天蓋ガラスが砕け、キラキラと反射する中
降り立ち片手を軽く上げ、挨拶する。
呆気に取られた顔をしている、初めてみた気がするよ。
「マリア」の表情は


「全くなんて顔だ?そんなんじゃ綺麗な顔が台無しだぜ?」
「クウガ・・・・様・・・どうして・・・・」
「約束したからな、そら女の子との約束は護るって」
「・・・・・!」


うっすら涙を浮かべるマリア。
全く、ホントに・・・・・


「これは何の真似かな?アーティフィシャル王」


フェズトラス王が、訝しげな表情を向ける。


「・・・・私には、何のことだか解りませぬ」
「では、マリア姫とあの者はどういった?」
「さあ、あの者が客人として我が城内で暮らす間に情でも移ったのでしょう、仕方ありませぬな、諺にも「人心は魔法では揺れぬ」というではないですか」
「そうですか、ならば―――――殺しても構いませぬな?」
「無論です、フェズトラス王」


アーティフィシャル王の付き人がガヤつくが、一睨みで黙ってしまう。
ああ、ソレで良いんだ、王様。
あなたはそれでいいんだ。アーティフィシャルの民の為に。


「オレさ、考えたんだ」
「・・・?」
「自分は、どうするべきなのかって。止めろって言うのも簡単だし、行くのも行くので出来る。だけど・・・だけどそれは、「本当の自分が望んだ事」なのかって」
「本当の、自分・・・・・・・」
「マリア、自分を欺くのは止めようぜ、オレは止めた、自分を欺かない為に、この婚約をぶち壊しに来た」


はっきりと、目の前のマケルド王子を見据え、はっきりと口にする。
マリアの息を呑む音は、他の貴族の騒然とする声にかき消された


「・・・・たかが愚民が勝者である僕のような高貴な者の道を遮る訳?」
「まだオレ「負けた」なんて一言も言ってねーよ、勝手に勘違いしただけだろ」
「僕の前でそういってないからあの約束は無効と、言い張る機かい?」


イライラと口にするマケルド王子
正直、ブチ切れてたオレは、感情を爆発させていた。


「おうよ、クソガキ、手前は町の娼婦でも抱いてる方が御似合いだぜ、聖母マリアと釣り合いなんてとても取れねーよ」
「いいよ・・・・正面切ってここまで扱下ろされたのは始めてだ下賎な民め、父上、僕が殺しても良いよね?ううん・・・・僕が殺す」
「カモン、チェリーボーイ・・・ま、オレもだけど」
「なめるなあああああああああ!!!!!!」


前と同じ風の魔法をぶっ放すマケルド。
だが今度は迫力が違う。
前回と違う、「殺しに来ている」


「手前・・・ッ!!」


オレは避けなかった、いや、避けれなかった・・・・・・・
後ろにはマリアがいる、オレよか強いといったって女の子を傷つけたらダメだ。
取った行動は一つ。
素早くマガジンポーチからマギアエッジを居合いの要領で抜き出し「弾き落とした」。




「クウガ様!」
「大丈夫か、マリア」
「わ、私は・・・・」
「・・・なんでお前がそう言う物を持ってるんだい?」
「ある人間からの差し入れさ、我侭なクソガキのケツを殴るにはちょうどいいぜ」
「たかが「土」のくせに生意気を!!「剣」エッジを使っても物一つ切れないお前は「土」らしく地べたに這いずって「風」に飛ばされろ!」


なんどもなんども鞭の様にしならせ風の刃を撃ち放つマケルド。
見えない刃を防ぐのは、マリアに届きそうな刃を弾くだけで精一杯だった。




「ははははは!!良いぞマリア、そのままそこに居ろよ!僕がこのクソ下民をぶち殺した後に迎えに行くよ」


こいつの頭の中じゃオレは魔王で勇者気取りってか?随分おめでたいな。


「せめて・・・!」


マリアが歌を歌う。
あの時と同じ、強化の歌だ。
体が軽くなり、気力が充実してくる


「そうか、じいちゃん・・・・じいちゃんも、こんな気持ちで戦ってたのかな」


ただひたすらに目の前の人間を赤く染めたい衝動。
肉を裂き、骨を砕き、それでもなお収まらないようなドス黒い感情。
頭の中に、様々な死に方をしたマケルドの姿が浮かんでは消えていく。
――――これが、本物の「殺意」って奴なのか。
そして、その中にある「護りたい」という意思。




「・・・・・!」
「何?抵抗する気?」


静かにP90TRSCを正面に向け、構える。


「そんなおもちゃで!勝てるものかよ!!」
「離れてろよ!マリア!!」


その瞬間、突撃する。
風の刃がうねりを上げ、オレに向かってくる。
だが、今の「殺したい」という衝動に駆られたオレには相手が「殺しに来る」集中点が読めていた。
コイツは王族以外を虫みたいな物と思ってる。
―――――だから射線が単調に首や心臓に来る、一撃で殺したい為に。


「んのお!!」


それらを避け、距離を詰める。
射撃を始めるが、前回と同じようにBB弾が風の壁に阻まれて命中しない。


「だが、それでいい」
「んな!?」


ゼロ距離まで接近を許したマケルド。


「飛んじまえよ!!『春風嵐ヴァルドエア』」


一気に暴風の魔法が爆発する。
暴風が渦巻いている中、飛ばされないように踏ん張り、マギアエッジでブッ叩いた・・・・・
バキィイイイイン!!!と派手な金属音がして風の魔法が消える。
次の瞬間、マギアエッジを放り投げ、両手でP90TRSCを持っていた。


「歯を食いしばれよ「お坊ちゃん」クソガキ、修正してやる!!!」


次の瞬間、P90のストライクレイルで思いっきり横凪にブッ飛ばした。


「ガッ・・・・!!」


頬肉に打突用のピックが刺さり、頬を突き刺し、骨を砕く感触が手に伝わる。
マケルドの口から血とニ、三個の血に染まった白い欠片が飛んでくのが解る。
頬からは皮が剥がれ、血が流れていた。


「この、僕を・・・・!!」
「立てよ、立て!さあ立て!「まだ一撃」まだ殺さないだ!さあ早く立て!!」
「調子に・・・乗るなあ!!」


――――――――「ビシュン」
次の瞬間、オレの左手の感覚が無くなった。
視線を移せば―――それはそうだ、肘から下がなくなっていたんだから。


「ッ―――――――!!!」


P90TRSCを取り落とし、地面で痛みで悶絶するオレ
頭にチカチカと雷光が走ったかのような物が見え、目の前が涙で滲む。
地面をあふれ出る血が覆い始め、その上を悶え苦しむようにのた打ち回る。


「そう、そうだよ、下民は下民らしくそうやって這い蹲らなきゃな」


次にビシュン!っと風切音がしたとき、次は耳がこそぎ落されていた。


「――――――――――――――――ッッ!!!!!!」


声にならない悲鳴を上げる。


「ははははははははははは!!!!!」


奴は勝ち誇るように高笑いを上げる。
ここまで、なのか?
やっぱり、勝てないのか・・・?死ぬのか・・・?
ごめんマリア、約束、果たせ――――


そこで見たものは、彼女の涙だった
涙に濡れ、オレを痛ましい姿に号泣する、彼女だった。
――――次の瞬間、オレは「オレで無くなった」。
いや、底冷えのするような
それでいて、笑いかけるような声が響いた。




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