ガンズ・バイ・デイズ―高校生サバゲーマーの魔法世界奮闘記―

ファング・クラウド

BRIEFING:05 暗雲招来

この世界に来て既に一週間が過ぎていた。
それで解ったことは、この国はとても落ち着いていて、居心地が良いという事だ。
日本とは違った倫理観、常識、統治だが、中々悪くない居心地を与えてくれる。
そうして、今日はオレの部屋でマリアと話をしていた。
オレの世界の、他愛もない話だ。
それを、楽しそうに聞いてくれる彼女。


「まあ、本当なんですか?」


くすくすと笑みながら、話す彼女。
そこに、ノック音に続き、声がする。


「お楽しみの最中申し訳御座いません姫様、マケルド王子様が姫様にお会いになりに参られました」
「マケルド様が・・・解りました、広間にお通しなさい」


何処か、陰が差した表情を浮かべ、命令を下す。
が・・・


「で、ですが」
「どうしたのです」
「・・・既に此方にいらっしゃっております」


すると壁の影からスッと花束を抱え現れる。
年は少し下ぐらいだろうか、あどけなさの残る少年と言った感じだ。
だが、見た目以上の癖物だった。


「僕はここだよ愛しのマリア、なんでそんな下賤な人間に笑みを投げるんだい?君の笑顔は僕だけの物だろう?」


にこやかな表情でさらりとドス黒い言葉を吐きやがる。
・・・空いた口が塞がらなかった。
なんだ?なんなんだコイツは


「・・・申し訳ありません、マケルド様」
「ああ、謝らないで愛しのマリア。君は優しい人だからね、つい向けてしまうんだよね
僕はね、愛しのマリア。君の優しさにつけあがるこの薄汚い下民に問い質してるんだから」
「お前、喧嘩売ってんのかよ」
「喧嘩?喧嘩だって?あはははははははは!」


笑い出すマケルド王子とやら


「何がおかしいんだよテメエ」
「君にとって喧嘩っていうのは一方的に嬲り殺しにされる事を言うのかな?」
「なんだと・・・!」
「マケルド様!クウガ様も落ち着いて下さいませ」
「・・・ッ」


殴りかかろうとした拳を収める


「命拾いしたね?掃き溜めクン、愛しのマリアが止めずそのクサイ拳を当てたら命は無かったよ」
「テメエ如きに落とす命はねーな」
「素敵な番犬だね、愛しのマリア。
よく吠える素晴らしい犬だ」


必死に耐えたが、我慢の限界だった。


「この野郎・・・!」
「ダメですクウガ様!」


オレとマケルドの間に立って、ダメだという彼女
だけど、オレはそんな彼女を押しのけて前に出る


「ああ、良い事を思い付いたよ」
「何をなさる気ですか、マケルド様」


もう止めてと言いたげな口調でマケルドに聞くマリア


「その哀れな薄汚い下等人種に一矢報いるチャンスをあげよう。
決闘もどきをしてあげようじゃないか」
「なんだと・・・決闘だあ・・・?」
「そう!負けたら・・・そうだな、二度と愛しのマリアに言い寄らないで貰おうか」
「上等だよ・・・!」
「ま、余りにこれじゃ有利だから・・・そうだな、愛しのマリア、君の歌の魔法で存在が薄汚れた彼に身体強化をかけておくれよ
その方が僕も楽しめるだろうし、もしかしたら君の歌に浄化されて薄汚いその存在も少しはマシになるかもしれないよ」
「言いたい事はそれだけかこの野郎・・・!」


この世界に来て、初めての
オレの人生で、始めての
「戦闘」が始まる。




「それでは、よろしいですか?」
「ああ、オレはいいぜ」


場所を移動し、中庭。
M93R Auto9Cオートナイン-KC空牙カスタムとMk-23を構える。
すると、マリアが合掌をし、唱え始める。


「『長く深い澱からの 澱み抜けたるその者に 深く深い神明の 光と力が宿る時 剣は輝き光を放つ』」


綺麗な唄だった。
聞いている内に、体の中から沸き上がって来る様な感覚が体中を支配する。


「うお・・・・凄い・・・・ッ」
「さあ、楽しませておくれよ?」
「そういや、オレが勝った時の事決めてなかったよな―――マリアとの婚約を破棄無いし延期しろよ」
「ははは、そうだね、できたらね」


マケルドは杖を取り出し、こちらに構えてくる。
その瞬間、頭部目掛け即座に発砲する。
放たれたBB弾は見事に眉間に命中し、マケルドを悶絶させる。


――――――――かに思えた。


「『疾く走れリブレ風よ妨げブレア。【風壁アエリア】』」




素早く詠唱すると、何かに遮られた様に、BB弾が流れていく。


「どうしたんだい?何かしたかな?」
「な、そんなの・・・!!」


Auto9を連射し、接近する。
なんて事無いことだが、余りの自分・・の速さに感覚が追いつかない!?
これがマリアの身体強化の魔法か・・・!


だが、全ての弾丸は弾かれ、パンチも避けられる。


「おお、怖い怖い、あははははははは!!!」


肘打ち、裏拳、左フック。
次々に拳撃を放つも、全部避けられ、銃弾は通じない。
クソッ、普通の素手ゴロも勉強するべきだった!!
武器持った状態のCQCばっかだったからな!


だが、次の瞬間


「ごふっ!?」


瞬間、凄まじい衝撃が腹部を襲った。
体が「く」の字に折れ曲がり、体が浮く。
そして、重力と「何か」によって勢い良く地面に叩きつけられる。


「がはっ!!」
「ははは!!!ただ風を圧縮して撃ち放っただけなのにねえ!!」


もしや、さっきの風の壁を撃ち放っただけなのか。
それで、これかよ・・・・!!


「ふん」


鞭を振るかのように腕をしならせ杖を振る。
今度は衝撃ではなく刃だ。
直感したオレは体を捻る。
風の刃が皮膚を撫ぜ、薄皮が裂け、ピリッとした痛みが走る。
だが、その避けた体勢のまま風の衝撃が体を襲った。
右へ左へ殴打と斬撃の嵐。
クソ・・・・こんなに効くなんて・・・!
足元がフラつき、そこに上から垂直に殴打される。


「どうした?所詮そんな玩具で歯向かうからだ!」
「ぐはっ・・・!!」


倒れこみ、起き上がる力も無い。
そして、頭を踏みつけられ、高らかに笑う声が脳裏に聞こえる。


「ふふふ、じゃあマリア、早速報告と準備にかかろうか。
明々後日には準備も出来るだろうからね」
「クウガ様が・・・!」
「そのままにしたって平気だよ、それは僕たちと違って野蛮なんだからね
あはははははははははははははははは!!」




そのまま、意識が遠のくのだった。


畜生・・・・・畜生・・・・・。


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