龍神転生!世界の守護者は今日も気まま

シーチキンたいし

二代目龍神の誕生



目が覚めたら、知らない空間だった。なんだかデジャブ。

それにしても、高い。目線が。浮いてる?と一瞬思ったが、違う。私が大きくなっているんだ。

それよりも、喜ぶべきは……自由に動けること。思った通りに動ける!もう動けないと、絶望する必要がない!

「すごい……すごい!」

『そんなに喜んでくれるとは、作ったかいがあるよ』

「ありがとうございます神様!」

動ける身体。なんて素晴らしいんだろう!

例え面倒事の種になろうとも、本当に嬉しい。神様には感謝だ。

『これで君は龍神。僕の眷属だ。新たに生まれ変わった君に名を与えないとね』

そうか、私はもう人間じゃないんだ。それでもいい。この動ける身体さえあれば。お仕事だって頑張れる。

『よし、前世の名をとって“マリアヴェール”だ』

「はい、神様」

『魂が馴染んだら君を下界に送るね』

「わかりました。当面のやることは?」

『言ったでしょ?生きてさえいてくれればいいって。君は存在するだけでお仕事してくれてるの。……そうだな、行きすぎた精霊の虐待があった場合神罰を下すとか。君の権限でやっていいよ』

「え?いいんですか?」

勝手に神罰なんて、大丈夫なのだろうか?私にそこまで権限があるの?

『君は世界で二番目に偉くなるんだ。一番の僕がそう言うんだからいいんだよ』

「わかりました!でも、やり方って……」

『その身体に魂が馴染めば自ずと自然にわかるよ。そう言う存在になるんだからね。じゃあ、下界は任せたよ?』

「はい!がんばります」

どうやら身体に必要な情報をインストールしてあり、魂が馴染めば、自ずと自分の知識として知ることが出来るらしい。


『あんまり気を張らなくていいよ。新しい命、僕の世界で自由に楽しんで生きてね』


「ありがとうございます、母上様……」



こうして私は神様の世界に降りてきた。

創造神シェラハザルト様の管理世界、カリュトスに。

その日世界は歓喜を向かえた。

『やっときたよ!』

『きてくれたよ!』

『世界がなおるね!』

『りゅーじんさまのお目覚めよ!』

『やっとだね!』

『やっとだね!』


世界にわずかばかりとなった精霊達が喜びに満ちていた。

龍神がこの世界に帰ってきたのだから。

精霊にとっては、産み落としてくれた母。この世界の精霊の母。その存在が帰ってきたことを、世界は本能で感じ取っていた。


「んん~!ん?よく寝たぁ……」

目が覚めると森のど真ん中の朽ち果てた神殿のような所で寝ていたらしい。青々とした空。木々や風といった自然を肌で感じる。

「ここが……ホントに来たんだ。異世界に…」

感慨深く景色を見ていると、回りから小さな光がポコポコ生まれてる。

え?もしかして…これが精霊?

『りゅーじんさまだー!』

『りゅーじんさまのお目覚めだー!』

『りゅーじんさまー!』

ナニコレ、可愛い。

小さな光が私の身体にすり寄ってくる。これが精霊。私が居るからさっそく生まれたってこと?スゴすぎ。

目覚めたはいいけど…やることがないなぁ。あ、そうだ。ここって私の巣…ってか家だよね?せめてベッドくらいは新調するか。

「魔法……うん、なんか分かるわ」

神様の言っていた意味がわかった。知らないはずなのに、意識すれば分かる。魔法も精霊の知識も。

これが龍神としてのスペックなのだろう。

自分のことなのに何だかすごい。

「とりあえず……寝るか」

私は新調した特製の寝床で惰眠を貪った。











「これより、精霊保護同盟の会議を始める」

豪勢な建物に、この世界の各国の重鎮が集まっていた。彼等は精霊を保護する活動を進める国同士の同盟の最高幹部である。

今から約千年前、人類は重大な過ちを犯した。

この世界の管理者たる龍神を死なせてしまい、今、世界は滅亡の危機に貧していた。

龍神が死んでから、精霊は減る一方。誰もが気づいていなかった。龍神こそが精霊たちの母であり世界の管理者であることを。

そうして、汚名を着せ、討伐までしようとしたおろかな人類を救ったのも、また龍神であった。

神の神託をうけた精霊と契約した者から、間接的に神託を知ることで、全ての真実を知ったときにはもう遅く、人類は滅亡以外の道が残されていなかった。そこで、作られたのが精霊の保護を目的とした保護同盟。

精霊を保護し、少しでも世界の滅亡を遅らせるための組織だ。

真実を知っても、改めることの無い国もあり、最初は立場が弱かった。しかし最近は、精霊のことや龍神の事が広く平民にも知れわたり、今や大きな組織となり、他の国にも知れわたり、同盟参加国も増えてきた。

ここは、その本部。同盟設立国、リューティエス王国王都の精霊協会本部である。

「エステール国はどうだ?」

「はい、精霊の保護は順調です。しかし、隣国からの圧力も……」

「帝国か……」

「あの国はこの世界を破滅させたいのか?」

「全くだ」

そのまま会議は進み、無事終わりを迎え、解散しようとしたときだった。

慌ただしく、王国の騎士が入ってきた。

「ほ、報告します!精霊達が!」

「精霊達がどうした?!」

「いや、精霊達が何故かいきなり元気になりはじめて……」

「……は?」

騎士の報告は、今までにみたこともないくらい精霊達が元気になったとのことだった。

保護したとはいえ、散々人間に虐げられた精霊は力を弱め、次第に消えてしまう。そんな精霊達がいきなり前触れもなく元気になるなど、聞いたこともない。

幹部達は各々契約した精霊を出して事情を聴こうとした。彼等は喋ることの出来る上位精霊と契約しているからだ。

解き放たれた精霊達はわらわらと出て来て、周りの精霊たちと楽しそうに、嬉しそうに舞っていた。

ここまで、精霊達が心踊っているところを見るのは初めてのことであった。

「これはいったい……?」

『かえってきたー!』

『かえってきたのー!』

「帰ってきた?いったい誰が……?」

『かえってきたの!りゅーじんさまが!』

『そう!りゅーじんさまがおめざめだ!』

『りゅーじんさまがかえってきたー!』

「っ!!?」

それは同盟幹部たちに大きな衝撃を与えた。


これを初めに、世界は知る。新たな龍神が誕生したことを。世界の管理者が、帰ってきたことを。

「なんと!これで世界は救われるのか!!」

「龍神様はどちらに?!」

『りゅーじんさまはおきたばっかり』

『りゅーじんさまはいつでもどこにでもいるよ』

「どういう意味だ?」

「さ、さぁ?」

『新しいりゅーじんさまなの』

『かみさまがあたらしくおつくりになったの』

『かみさまがおくってくれたの!』

『新しいりゅーじんさま!』

『きえちゃったこたちもこれで帰ってこれるね!』

精霊達は嬉しそうに舞うだけだった。世界の管理者が、精霊の母が帰ってきたことを祝福して。

世界はこうして再び、動き出すこととなったのだ。


激動の時代が幕をあげた──


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