海賊に殺された現代船乗りだけど、異世界転生のしたので、色々あって海軍に入隊します! 〜知恵と経験を武器に、海賊だらけの海を生き抜いていく~
第5話 合法的な仕返し
「っ……!?」
暫く湯船の中で粘っていると……今度は、シャロレッタの脚の付根辺りにまで手が延びてきた。
(おいおいおい……そこまでするかよ!?)
が、そこまで来れば捕まえるのは簡単だった。
好き勝手に触ってくる手を、両手の爪を食い込ませる勢で掴む……が、掴んだ腕が滑ってしまい、取り逃がしてしまう。
「チッ……逃げられたか。ん、あれは……?」
たった今逃げるようにして浴槽から出た、茶髪の訓練兵の手に、うっすらと血が滲んでいた。
ついさっき彼女がつけたものだろう。
「アイツだな? 顔は覚えたぞ……確か、同じ組の奴だな」
見られるのは仕方が無いので、シャロレッタも文句は言わないが、故意に無断で触る者には容赦をするつもりは無かった。
「シャロレッタ、アイツがどうかしたのか?」
「ジャックか……」
ジャックも体を洗い終えたのか、浴槽に入り、シャロレッタの横に腰を下ろす。
「いや、実はな……」
「ん?」
ジャックの耳元で、先程の事を伝える。
「は? マジかよ!?」
「しっ、声がでかい……とにかく、奴にはオトシマエをつけさせてやらないとな」
「……何するつもりだ?」
復讐に燃えるシャロレッタに、ジャックが問い掛ける。
「まあ、見てなって。明日になったらアイツは今日のことを死ぬほど後悔するから」
「はぁ?」
このときのジャックには彼女が何を企んで居るのか、想像も付かなかった。
「さ、そろそろ上がろうぜ」
「あ、あぁ……そうだな」
シャロレッタは何事も無かったかのように、涼しい顔で大浴場を後にした。
────────
翌日 海軍兵訓練学校 屋外訓練所
軍艦で働く為には船のこと以外にも、特に戦闘についてもある程度精通している必要がある。
その為、訓練兵は体力錬成の一貫で、対人格闘訓練を受けることになる。
この日は習った技で、互いに勝敗を競う、組手訓練が実施される。
女であるシャロレッタも例外ではなく、ハンデ無しに男の訓練兵と戦う。
「それでは、時間無制限、どちらかが降参するか続行不能になるまで戦って貰う。ルールはそれだけだ!先ずは、二人一組になるように!」
教官の号令で、訓練兵達が相手を決めていく。
「シャロレッタ、俺と組まないか?」
「あぁ、悪いな……今日はちょっとパスするぜ。殺りたい奴が居るんでな」
ジャックの申し出を断ったシャロレッタは、迷うこと無く、一人の茶髪の訓練兵に向かっていく。
ここでジャックは、昨日彼女が言っていた復讐の内容が分かった。
彼女はこの場で、犯人を合法的に半殺しにするつもりなのだ。
(だけど、アイツ……勝てるのか?)
ジャックが心配するのも無理は無かった。
シャロレッタが復讐相手と認めた訓練兵は、同年代の者に比べると、体格が一回りも二回りも大きかった。
女であるシャロレッタと比べると、尚更体格の差が如実に出る。
「よう、アンタ……俺と組まないか?」
「は?……お前、本気か?」
茶髪の訓練兵は、無謀にも体格差のある自分に挑んできた彼女の正気を疑った。
「訓練でふざける奴なんていないだろ? それとも何だ、女に負けるのが怖いのか?」
「てめぇ……! 良いぜ、可愛い顔がグチャクチャになっても、後で恨むなよ?」
シャロレッタの挑発に乗せられた彼は、対戦を了承した。
適当にあしらい、どさくさに紛れて彼女の体に触れてやるとでも考えているのだろう。
「よーし、ペアは組んだな? 怪我しても恨みっ子なしだ! ……始めっ!!」
カンッ!!
教官が試合開始の鐘をならすと訓練兵達が、それぞれの相手と組手を開始する。
「うおおおっ!」
シュッ!
茶髪の訓練兵も雄叫びをあげながら、農業で鍛えたであろう、筋肉質な腕で、シャロレッタに右中段突きを試みる。
「……っ! エイッ!」
シャロレッタはそれを、自身の左前腕で受け流す。
そのまま相手の右手首を掴み、外側に捻ることで、彼を地面に転ばせる。
合気道や護身術で使われる「小手返し」という技だ。
「うおっ!?」
ドサッ!
「ほら、立てよ……まだ始まったばかりだろ?」
シャロレッタは追撃をせず、相手が立ち上がるのを待った。
それが彼のプライドを傷つける。
「くっ! 何なんだ、今の技は!? あんなの訓練で習ってねえだろ!」
「ルールには違反してねぇぜ? 教官は言ってたぞ、相手が降参か続行不能になるまで戦う。それ以外のルールはないはずだ」
茶髪の訓練兵は彼女の攻撃に難癖を付けるが、それすらも容易く論破される。
「クソォっ!」
彼は完全に頭に血が登り、大降り攻撃しか放って来なかった。
シャロレッタはそれを、避けたり受け流したりして、正面からのぶつかり合いを避けた。
(昔(現代の)お袋に無理矢理道場に入れられたのが、ここで役に立つとはな)
このまま相手の体力が無くなった所で、華麗に大技を極めて、皆の前で「女に負けた雑魚」の汚名を着せる算段だったが……
ズルッ……ドサッ!
「あ、ヤベッ……」
昨日の雨で、地面がぬかるんでいたのだろう。
彼女はそこに足を滑らせて、転んでしまう。
「もらったぁ!」
茶髪の訓練兵が、彼女に追い討ちを掛けようとしてくる……
第5話に続く
        
暫く湯船の中で粘っていると……今度は、シャロレッタの脚の付根辺りにまで手が延びてきた。
(おいおいおい……そこまでするかよ!?)
が、そこまで来れば捕まえるのは簡単だった。
好き勝手に触ってくる手を、両手の爪を食い込ませる勢で掴む……が、掴んだ腕が滑ってしまい、取り逃がしてしまう。
「チッ……逃げられたか。ん、あれは……?」
たった今逃げるようにして浴槽から出た、茶髪の訓練兵の手に、うっすらと血が滲んでいた。
ついさっき彼女がつけたものだろう。
「アイツだな? 顔は覚えたぞ……確か、同じ組の奴だな」
見られるのは仕方が無いので、シャロレッタも文句は言わないが、故意に無断で触る者には容赦をするつもりは無かった。
「シャロレッタ、アイツがどうかしたのか?」
「ジャックか……」
ジャックも体を洗い終えたのか、浴槽に入り、シャロレッタの横に腰を下ろす。
「いや、実はな……」
「ん?」
ジャックの耳元で、先程の事を伝える。
「は? マジかよ!?」
「しっ、声がでかい……とにかく、奴にはオトシマエをつけさせてやらないとな」
「……何するつもりだ?」
復讐に燃えるシャロレッタに、ジャックが問い掛ける。
「まあ、見てなって。明日になったらアイツは今日のことを死ぬほど後悔するから」
「はぁ?」
このときのジャックには彼女が何を企んで居るのか、想像も付かなかった。
「さ、そろそろ上がろうぜ」
「あ、あぁ……そうだな」
シャロレッタは何事も無かったかのように、涼しい顔で大浴場を後にした。
────────
翌日 海軍兵訓練学校 屋外訓練所
軍艦で働く為には船のこと以外にも、特に戦闘についてもある程度精通している必要がある。
その為、訓練兵は体力錬成の一貫で、対人格闘訓練を受けることになる。
この日は習った技で、互いに勝敗を競う、組手訓練が実施される。
女であるシャロレッタも例外ではなく、ハンデ無しに男の訓練兵と戦う。
「それでは、時間無制限、どちらかが降参するか続行不能になるまで戦って貰う。ルールはそれだけだ!先ずは、二人一組になるように!」
教官の号令で、訓練兵達が相手を決めていく。
「シャロレッタ、俺と組まないか?」
「あぁ、悪いな……今日はちょっとパスするぜ。殺りたい奴が居るんでな」
ジャックの申し出を断ったシャロレッタは、迷うこと無く、一人の茶髪の訓練兵に向かっていく。
ここでジャックは、昨日彼女が言っていた復讐の内容が分かった。
彼女はこの場で、犯人を合法的に半殺しにするつもりなのだ。
(だけど、アイツ……勝てるのか?)
ジャックが心配するのも無理は無かった。
シャロレッタが復讐相手と認めた訓練兵は、同年代の者に比べると、体格が一回りも二回りも大きかった。
女であるシャロレッタと比べると、尚更体格の差が如実に出る。
「よう、アンタ……俺と組まないか?」
「は?……お前、本気か?」
茶髪の訓練兵は、無謀にも体格差のある自分に挑んできた彼女の正気を疑った。
「訓練でふざける奴なんていないだろ? それとも何だ、女に負けるのが怖いのか?」
「てめぇ……! 良いぜ、可愛い顔がグチャクチャになっても、後で恨むなよ?」
シャロレッタの挑発に乗せられた彼は、対戦を了承した。
適当にあしらい、どさくさに紛れて彼女の体に触れてやるとでも考えているのだろう。
「よーし、ペアは組んだな? 怪我しても恨みっ子なしだ! ……始めっ!!」
カンッ!!
教官が試合開始の鐘をならすと訓練兵達が、それぞれの相手と組手を開始する。
「うおおおっ!」
シュッ!
茶髪の訓練兵も雄叫びをあげながら、農業で鍛えたであろう、筋肉質な腕で、シャロレッタに右中段突きを試みる。
「……っ! エイッ!」
シャロレッタはそれを、自身の左前腕で受け流す。
そのまま相手の右手首を掴み、外側に捻ることで、彼を地面に転ばせる。
合気道や護身術で使われる「小手返し」という技だ。
「うおっ!?」
ドサッ!
「ほら、立てよ……まだ始まったばかりだろ?」
シャロレッタは追撃をせず、相手が立ち上がるのを待った。
それが彼のプライドを傷つける。
「くっ! 何なんだ、今の技は!? あんなの訓練で習ってねえだろ!」
「ルールには違反してねぇぜ? 教官は言ってたぞ、相手が降参か続行不能になるまで戦う。それ以外のルールはないはずだ」
茶髪の訓練兵は彼女の攻撃に難癖を付けるが、それすらも容易く論破される。
「クソォっ!」
彼は完全に頭に血が登り、大降り攻撃しか放って来なかった。
シャロレッタはそれを、避けたり受け流したりして、正面からのぶつかり合いを避けた。
(昔(現代の)お袋に無理矢理道場に入れられたのが、ここで役に立つとはな)
このまま相手の体力が無くなった所で、華麗に大技を極めて、皆の前で「女に負けた雑魚」の汚名を着せる算段だったが……
ズルッ……ドサッ!
「あ、ヤベッ……」
昨日の雨で、地面がぬかるんでいたのだろう。
彼女はそこに足を滑らせて、転んでしまう。
「もらったぁ!」
茶髪の訓練兵が、彼女に追い討ちを掛けようとしてくる……
第5話に続く
        
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