海賊に殺された現代船乗りだけど、異世界転生のしたので、色々あって海軍に入隊します! 〜知恵と経験を武器に、海賊だらけの海を生き抜いていく~

ノベルバユーザー379152

第3話 紅一点

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 海軍入隊から1か月後 
 海軍兵訓練学校 訓練兵寮 訓練後

 女のシャロレッタが入隊という異例の事態に、初めはどよめいた海軍兵訓練学校であったが、1ヶ月の月日が経ち、ある程度の落ち着きを取り戻した。

「聞いたぞシャロレッタ、この前の試験でまた5本の指に入ってたらしいな!」
「んー……別にそれほどでもないぜ?」

 今日は雨が降っているため、普段する自主トレをせず、読書を嗜むシャロレッタに声をかけたのは、彼女と同室の訓練兵 [ジャック・クロード]だ。
 彼は女であるシャロレッタに対しても、同姓の訓練兵と分け隔てなく接することから、シャロレッタ自身も、彼に対しては他者より友好的で接するよう努めた。

「謙遜するなって、今度俺にも勉強教えてくれよ」
「いや、そもそも読み書きできない奴が多すぎだろ……入隊後初の試験が簡単な読み書きって……」
「仕方ないだろ? 俺含め皆、農家や下級市民の次男坊三男坊なんだから、学なんてあるわけ無いだろ?」

 そう、この学校で初めて学ぶことは[読み書き]なのだ。
 ジャックの言う通り、最下級の[二等水兵]からスタートする、この学校に来る者の大半は貧しい家の生まれで、学校に通う余裕の無かった文盲達ばかりだ。

 そんな中、シャロレッタはそこそこ裕福な商家の生まれの為、中等学校までは卒業していた。

「そう言うジャックだって、読み書き出来てるだろ?」
「俺はまあ、農作業の合間での独学だから、少しばかり拙いけどな」

 カンカンカンカン

 二人が話していると、窓の外から鐘の音が聞こえてきた。
 入浴の準備が整った合図だ。

「お、風呂の準備が出来たみたいだな。行くか?」
「お前ってさ、本当に男と風呂に入るのが平気なんだな」
「お前らが男同士で平気なように、俺も平気なんだよ」
「ま、そうじゃなきゃここには居られないしな」

 着替え等の準備を終えて、風呂場のある建物に雨の中向かう。

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 入浴施設 脱衣所

 シャロレッタ達が脱衣所に入ると、中に居る訓練兵達の視線が、チラチラと彼女に向けられる。

「なんだよ、そんなに見たきゃ堂々と見ればいいだろ?」
「やめろ、シャロレッタ。あんまり刺激するな」

 入隊する際に言われたが、本当に男の訓練兵達と分けられること無く、一緒に入浴することとなっている。

  男女不問で採用しているのに、設備が整っていない理由について後から知ったのだが、まさか本当に女が入隊してくるとは思わず、準備が間に合わなかったらしい。

 本人は元々男なので、それでも全く気にしないが、他の訓練兵達がそうではなかった。
 年頃の男達の目の前で、同年代の異性が裸になるのだから無理もなかった。

「ありがてぇ、女の裸がタダで拝める」
「アイツ恥ずかしくねえのかな?」
「痴女なんだろ?そういうのが目的で入隊したんだよ」

 男達が勝手なことを言っているが、シャロレッタは気にも止めない。

 (まあ、気持ちは分かるな……)

「……気にすること無いからな」
「いや、別に良いって」

 ジャックがシャロレッタと男達の間に立って、服を脱ぎ、彼女のために壁の役割を果たす。
 気持ちはありがたかったが、本当に気にしていないのだ。

 服を脱ぎ終えた二人は浴室に向かった。

 ガラララ……

 引き戸を開けると、日本の銭湯と同じような大浴場が、湯気と共に視界に入ってくる。

 当然ここでも、男達は皆彼女に釘付けとなる。

 二人はまず体を体を洗うために、空いている洗い場を探したが1つしか無かった。

「シャロレッタ、良かったら先に使えよ」
「え、いいのか? じゃあ、お言葉に甘えるぜ」

 ここでジャックと別れて、体を洗う。

 体を洗い終えたシャロレッタは、ジャックより一足先に、湯船に向かった。
 湯船には既に先客がかなり居て、少々混雑していた。

「隣、失礼するぜ」

 比較的空いている場所に居た者に断りを入れて、湯船に浸かる。

 (ふぅ、やっぱり風呂は落ち着く……)

 男たちの視線など我関せずと言った様子で、湯船でくつろいでると……

 (ん……?)

 誰かの手が、体に当たった気がした。

 (いや……流石に他の人の目もあるし、痴漢なわけないよな?)

 そこそこ混んでいるから偶然当たってしまったのかと思い、特に気にしなかった。
 そのようなことを気にしては、集団生活をやっていけないのだ。

 また感触がきた。
 今度は彼女の胸に手の甲が当たっているようだ。
 湯は入浴剤のような物で着色されており、誰の手かは分からなかった。
 手の主は、彼女の出方を窺うように慎重に触ってくる。

 (マジかよ……いや、女が男湯に居るんだから無理もないか。クソッ……何処のどいつだ?)

 顔に出さぬように、目だけで犯人を探そうとするが、さっぱり分からない。
 やられっぱなしで引き下がるというのは、彼女の性分ではなかったが、相手が分からなければどうしようもない。

 相手はいよいよいやらしい手つきで、シャロレッタの同年代に比べると発達したバストを揉み始める。

「んっ……」

 思わず声が出てしまう。

「おい、どうかしたのか?」
「いや……何でない」
「そうなのか?……具合が悪いなら、上がった方がいいぞ」
「ありがとう、もう少ししたら上がる」

 近くにいた訓練兵が、彼女を心配して声をかける。
 基本的に海軍に来るような人間は、彼やジャックのように思いやりの有る人間が大半だった。

 湯船から上がることを勧められたが、シャロレッタはここで逃げることを良しとはせず、犯人探しのためにもう少し粘ることにした。

 第4話に続く

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