海賊に殺された現代船乗りだけど、異世界転生のしたので、色々あって海軍に入隊します! 〜知恵と経験を武器に、海賊だらけの海を生き抜いていく~
第0話 勘違いからの始まり
────────
現実世界 某海域 昼頃
貨物船 操舵室
日本から遥か遠く離れた海を航行する、一隻の貨物船の薄暗い操舵室において、電子海図やレーダーの画面と睨めっこする男がいた。
この男の名は羽貝 ヒロ、日本の海運会社に勤める甲板員で、主に見張りやレーダー操作を任せられている。
年齢は20代後半、外を歩いている時にすれ違っても印象に残らないような、どこにでも居そうな青年だった。
現在、彼の乗る船は、海賊被害が多発する海域の真っ只中にあった。
なぜそのような危険な海域を通るのか? 理由は簡単、この海域を突っ切る方が近道だからだ。
別に全ての船が襲われる訳では無く、海賊達だっていつもその海域に出没する訳ではない。
もっと言えば、手前の寄港地で、銃を扱える現地の警備員を数名乗り込ませているため、最悪の場合は、彼等がこの船を守ってくれる手筈になっている。
この海域を迂回するのに要する燃料代を考えれば、彼等を雇った方が安上がりだった。
「船長! レーダー上にて、本船に猛スピードで向かって来る物体を確認。距離3マイル、45度方向です」
レーダーから目を離したヒロが、双眼鏡で当該物体を探しながら、船長に報告する。
因みに、1マイルは1852メートルなので、今回は約5キロ先から近付いてくる計算になる。
「何!? 海賊船か?」
「まだ目視できておりません!」
「わかった……旦那方、もしかしたら一働き頼むかもしれません。用意の方を願います」
報告を受けた船長が、安値で雇った警備員の男達に警戒するよう伝える。
それに応じるかのように、警備員達は、手にした小銃に弾を込め始める。
「目視できました、小型船一隻、銃らしき物を持った乗組員が見えます! 海賊船に間違いありません!」
「落ち着けヒロ! 銃ならこっちにもある!」
現代の海賊とは、小型ボートに乗った数名で、商船に強襲を掛けるのが一般的なスタイルなので、こちらにも銃が有れば、十分に対応出来ると船長は踏んでいた。
「旦那方、出番─「船ヲ停メテ全乗組員ヲ甲板二呼ベ」
「船長!?」
ヒロの目に映ったのは、護衛として雇った警備員に、銃を突き付けられている船長の姿だった。
「オイ、オ前モ動クナ」
「な、何で……」
ヒロも、別の警備員に銃を突き付けられてしまう。
操舵盤の前では、後輩の操舵員も同じようにされていた。
商船乗りが、護衛を雇うようになってから、海賊達もそれに対応して偽の警備会社を名乗り、標的を内部から制圧する手法をとるようになっていた。
「アノ船ハ俺達ノ仲間ダ、梯子ヲ下ロシテ乗セロ」
ヒロ達は、海賊達に従うしか無かった。
────────
貨物船 甲板上
ヒロは他の乗組員と共に、甲板上に両膝をつかせられていた。
拘束されている訳ではないが、相手が銃で武装している為、抵抗する気は起きなかった。
「船長、俺達は一体どうなるんでしょう……」
「心配するなヒロ、奴らの目的は身代金だ……保険会社が払ってくれる。それまでの辛抱だぞ?」
それが本当なら、命までは取られ無いだろうと思った矢先……
「オイ、例ノ物ハ何処二アル?」
小型ボートから乗り込んできた、サングラスの海賊が、何やらおかしな事を言ってきた。
「は? 何を言っているんだ? うちは見ての通り、ただの貨物船だ。[例の物]だなんて、怪しげな物は載ってないぞ!」
「嘘ツクノ、良クナイ」
パンッ!
サングラスの海賊は船長の右脚に、容赦無く一発の銃弾を撃ち込む。
「ウグゥァ!?」
撃たれた船長は、脚を押さえてその場に倒れ込んでしまう。
実はこの時、海賊達はこの船を麻薬の密輸を行っている別の船と勘違いしていたが、現時点では誰もそんなことを知る術が無かった。
「船長!?」
(おいおい……身代金が目的じゃなかったのかよ!?)
勿論、本来なら身代金目的であり、人質は丁重に扱われるものだ。
しかし、今回は別目的の為、人質の一人や二人はどうでも良いと思われていた。
「話シタク無イナラ、話シタクナル様二シテヤルヨ」
「ウゥ……何をするつもりだ?」
「適当ナ奴カラ順番二殺シテイク、オ前ノ番マデニハ話ス気二ナルダロ? 先ズハ……オ前デイイヤ」
そう言うと海賊は、ただ近くに居たというだけで、ヒロの髪の毛を掴むと、船長の前に引っ張りだす。
「いでででっ! 嘘だろ!? やめてくれ、頼む……まだ死にたくない!!」
「ヒロ!? おいやめろ! この船にあるものは好きなだけ持ってけばいい、だから乗組員には手を出すな!!」
船長が痛む脚を押さえながら、ヒロの助命を乞う。
「オイ、ジャパニーズ……最後ニ言イ残ス事アルカ?」
 船長の懇願を無視して、海賊がヒロの後頭部を銃口で小突く。
「待って、待って!俺、まだ彼女とかい─パァンッ!! 
 海賊の男は、辞世の句すら聞かずに引き金を引いた。
せめてもの救いは、弾が脳幹に命中した為、苦しまずに逝けたことだろうか? 甲板上に倒れたヒロの遺体からは、血だまりが広がっていった
「貴様……!」
「マダ話サナイカ? ジャア……」
人一人殺めた事を、全く気にしていない様子で、海賊は次の犠牲者を選ぼうとした。
「ボス! コノ船、情報ニアッタ密輸船トチガウヨ!」
船内から出てきた、下っ端らしき海賊が、小銃片手に叫んでいた。
「嘘ダロ? 一人殺シチャッタゾ?……マ、イイカ」
「だから言っただろう!? うちは普通の貨物船なんだって!」
この下っ端があと30秒でも早く来てくれれば、ヒロは死なずに済んだだろう。
結局、標的の船を間違えた海賊達は、身代金目的に計画を変更し、ヒロ以外の乗組員を基地に連れて帰ることにしたが、それは別の話。
第1話に続く
現実世界 某海域 昼頃
貨物船 操舵室
日本から遥か遠く離れた海を航行する、一隻の貨物船の薄暗い操舵室において、電子海図やレーダーの画面と睨めっこする男がいた。
この男の名は羽貝 ヒロ、日本の海運会社に勤める甲板員で、主に見張りやレーダー操作を任せられている。
年齢は20代後半、外を歩いている時にすれ違っても印象に残らないような、どこにでも居そうな青年だった。
現在、彼の乗る船は、海賊被害が多発する海域の真っ只中にあった。
なぜそのような危険な海域を通るのか? 理由は簡単、この海域を突っ切る方が近道だからだ。
別に全ての船が襲われる訳では無く、海賊達だっていつもその海域に出没する訳ではない。
もっと言えば、手前の寄港地で、銃を扱える現地の警備員を数名乗り込ませているため、最悪の場合は、彼等がこの船を守ってくれる手筈になっている。
この海域を迂回するのに要する燃料代を考えれば、彼等を雇った方が安上がりだった。
「船長! レーダー上にて、本船に猛スピードで向かって来る物体を確認。距離3マイル、45度方向です」
レーダーから目を離したヒロが、双眼鏡で当該物体を探しながら、船長に報告する。
因みに、1マイルは1852メートルなので、今回は約5キロ先から近付いてくる計算になる。
「何!? 海賊船か?」
「まだ目視できておりません!」
「わかった……旦那方、もしかしたら一働き頼むかもしれません。用意の方を願います」
報告を受けた船長が、安値で雇った警備員の男達に警戒するよう伝える。
それに応じるかのように、警備員達は、手にした小銃に弾を込め始める。
「目視できました、小型船一隻、銃らしき物を持った乗組員が見えます! 海賊船に間違いありません!」
「落ち着けヒロ! 銃ならこっちにもある!」
現代の海賊とは、小型ボートに乗った数名で、商船に強襲を掛けるのが一般的なスタイルなので、こちらにも銃が有れば、十分に対応出来ると船長は踏んでいた。
「旦那方、出番─「船ヲ停メテ全乗組員ヲ甲板二呼ベ」
「船長!?」
ヒロの目に映ったのは、護衛として雇った警備員に、銃を突き付けられている船長の姿だった。
「オイ、オ前モ動クナ」
「な、何で……」
ヒロも、別の警備員に銃を突き付けられてしまう。
操舵盤の前では、後輩の操舵員も同じようにされていた。
商船乗りが、護衛を雇うようになってから、海賊達もそれに対応して偽の警備会社を名乗り、標的を内部から制圧する手法をとるようになっていた。
「アノ船ハ俺達ノ仲間ダ、梯子ヲ下ロシテ乗セロ」
ヒロ達は、海賊達に従うしか無かった。
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貨物船 甲板上
ヒロは他の乗組員と共に、甲板上に両膝をつかせられていた。
拘束されている訳ではないが、相手が銃で武装している為、抵抗する気は起きなかった。
「船長、俺達は一体どうなるんでしょう……」
「心配するなヒロ、奴らの目的は身代金だ……保険会社が払ってくれる。それまでの辛抱だぞ?」
それが本当なら、命までは取られ無いだろうと思った矢先……
「オイ、例ノ物ハ何処二アル?」
小型ボートから乗り込んできた、サングラスの海賊が、何やらおかしな事を言ってきた。
「は? 何を言っているんだ? うちは見ての通り、ただの貨物船だ。[例の物]だなんて、怪しげな物は載ってないぞ!」
「嘘ツクノ、良クナイ」
パンッ!
サングラスの海賊は船長の右脚に、容赦無く一発の銃弾を撃ち込む。
「ウグゥァ!?」
撃たれた船長は、脚を押さえてその場に倒れ込んでしまう。
実はこの時、海賊達はこの船を麻薬の密輸を行っている別の船と勘違いしていたが、現時点では誰もそんなことを知る術が無かった。
「船長!?」
(おいおい……身代金が目的じゃなかったのかよ!?)
勿論、本来なら身代金目的であり、人質は丁重に扱われるものだ。
しかし、今回は別目的の為、人質の一人や二人はどうでも良いと思われていた。
「話シタク無イナラ、話シタクナル様二シテヤルヨ」
「ウゥ……何をするつもりだ?」
「適当ナ奴カラ順番二殺シテイク、オ前ノ番マデニハ話ス気二ナルダロ? 先ズハ……オ前デイイヤ」
そう言うと海賊は、ただ近くに居たというだけで、ヒロの髪の毛を掴むと、船長の前に引っ張りだす。
「いでででっ! 嘘だろ!? やめてくれ、頼む……まだ死にたくない!!」
「ヒロ!? おいやめろ! この船にあるものは好きなだけ持ってけばいい、だから乗組員には手を出すな!!」
船長が痛む脚を押さえながら、ヒロの助命を乞う。
「オイ、ジャパニーズ……最後ニ言イ残ス事アルカ?」
 船長の懇願を無視して、海賊がヒロの後頭部を銃口で小突く。
「待って、待って!俺、まだ彼女とかい─パァンッ!! 
 海賊の男は、辞世の句すら聞かずに引き金を引いた。
せめてもの救いは、弾が脳幹に命中した為、苦しまずに逝けたことだろうか? 甲板上に倒れたヒロの遺体からは、血だまりが広がっていった
「貴様……!」
「マダ話サナイカ? ジャア……」
人一人殺めた事を、全く気にしていない様子で、海賊は次の犠牲者を選ぼうとした。
「ボス! コノ船、情報ニアッタ密輸船トチガウヨ!」
船内から出てきた、下っ端らしき海賊が、小銃片手に叫んでいた。
「嘘ダロ? 一人殺シチャッタゾ?……マ、イイカ」
「だから言っただろう!? うちは普通の貨物船なんだって!」
この下っ端があと30秒でも早く来てくれれば、ヒロは死なずに済んだだろう。
結局、標的の船を間違えた海賊達は、身代金目的に計画を変更し、ヒロ以外の乗組員を基地に連れて帰ることにしたが、それは別の話。
第1話に続く
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