ファンタジー生物保護ってなんですか?
第19話 将来
先輩はひどく落ち着いた様子で先生を問い詰める。
「じゃあ、私たちは結局……邪魔ものだといいたいんですか?」
「それは違う……人間というやつは、いつだって安全って言葉が大好きなんだ」
先生のあいまいな答えにしびれを切らしたのか、先輩は激情に駆られたように大声を上げた。
「答えになっていません!」
「俺には答えを教える権限がない」
「じゃあ、先生は何を答えられるのですか?」
「……さあな」
先輩の問いかけに対して、先生は投げやりに言う。
僕が考えるにだが、おそらく先生は能力に対抗する手段があるということすら最初は話すつもりなどなかったのだと考える。先輩もそのことは重々わかっているのだろう。それ以上感情的になることはなかった。
「わかりました。先生が言えないというのであれば、これ以上聞きません。それで、本当に彼女はFAじゃないんですか?」
「絶対だとは言い切れない……だがそれはつまり、俺たちの方法を駆使してもわからなかったということだ」
簡単な話だが、状況はかなり深刻だ。
「もし、彼女がFAだとしたら、それだけ強力な力を持っているとも考えられる……というわけですね」
「ああ、そういうことになる」
二人のいうことは最も、だ。僕だってそう思う。
彼女、宮下アヤメは先輩の能力をさらに上回る可能性だってあり得るというのが、僕たちが最も恐るべきことだろう。
現状、すべての人間は僕たちを恐れている。だがそれだけだ。近寄らなければいいというただそれだけのことである。そこに犯罪性はなく、恐れる必要性もない。触らぬ神に祟りがないということは歴史が示すとおりであり、触らなければなにもない。
実際のところ僕たちは神ではないが、宮下アヤメは悪魔に成り下がろうとしているかもしれない。
「だったら、せっかくもらってきたストーカーに対する情報も無駄になるかもしれませんね……」
僕がポツリとこぼした一言に、先輩は当たり前だという風につぶやいた。
「そもそも、それは無駄だったのですよ。だって、事例のないことにマニュアルを利用するなんて無謀もいいところだと思いませんか?」
「だったら、どうしてノウハウなんてもらったんですか?」
あまりにも衝撃的発言に僕は思わず愚かなことを聞いてしまった。
「いつか使えるからですよ」
確かに先輩のいう通りだ。どのようなものであったとしても、情報とは役に立つ可能性があるものだということは少し考えればわかることだ。
だがしかし、ストーカーの情報というのはいかがなものだろう。あまり役に立つとは思えない。
「それもそうですが……卒業したあと、探偵にでもなるおつもりですか?」
「何を言っているのですか……使うのは私じゃありませんよ。これからの部員です」
先輩は僕の心を読んだうえで、僕がまじめに部活を行うということを信じてくれているのだろう。だが残念な事実が僕たちを待ち受けている。
「これからって言っても、今のところ先輩が卒業したら僕以外部員は0になるわけですけど、そこのところはどうおかんがえで?」
僕にとってみれば残念でもなく、残党なのだが、僕たちのようなはぐれものしかいない部活に入りたがる殊勝な奴がいるはずもない。僕だって、先生に無理やり入部されられなければ一生見向きもしなかっただろう。
先輩は知らないが、少なからず部活という体制を維持できるほどに入部希望者があらわれることはないはずだ。
「なんですかその気持ちの悪い話し方は……次期部長として、来年は入部者の確保頑張ってください」
先輩も、もうすでにあきらめている節がある。
「いやいや、まだ今年もあるでしょうに……」
「じゃあ今年頑張ってください」
「先輩は頑張らないんですか?」
「もちろん私もがんばります。ですが、私がいる現在、入部しようと思う人なんて誠君ぐらいだと思いますけど……」
なるほど、先輩は僕と同意見らしい。もしかしたら先輩すらもいやいや入部したのかもしれない。
僕はひたすらに黙り込んでいた、部活の創部者ともいえる先生に視線を送った。先生は白々しくも慰めの言葉を発した。
「俺が言えた義理じゃないが、悲観せずとも入部希望者はいると思うがな」
「いや、いるわけがないじゃないですか……」
先生の言葉に、先輩はかなり否定的だ。まあ、僕が言えた義理でもないが。
「いたら困りますよ……」
先輩の言葉に隠れるように僕は小さくつぶやいた。
僕にとってこの部活は、たった一年の奉仕活動に過ぎない。新しい部員ななんてものに入られたら来年も部活が続いてしまう。すなわち、僕の青春が単なる奉仕で終わってしまうなんてことは認められないということだ。
「どんだけ、卑屈なんだよ……って今おかしなこと言ったやつがいなかったか? いたら困るだのなんだの」
「そんなこと言うやつがいるわけがないじゃないですか」
できるだけ先生に聞こえないように言ったつもりだが、聞こえてしまったようで、僕はあくまで冷静に誤魔化した。
「……まあいい、どうせ入部希望者がいなければ、お前のことこき使いたい放題だしな」
先生は僕の性格をしっかりと把握しているようで、結局のところすべて先生にこき使われる学生生活が待っているようだ。
だったら、できるだけ楽な方に行くしかない。
「さあ、この依頼が終わったら入部希望者を集めるとするか」
僕は今までの話をなかったことにしようと、大きくあくびをしながら歩き始めた。
「私も手伝いますよ」
「ともかく、今は依頼に集中してもらおうか……本格的に時間もないわけだしな」
先輩と先生は僕の後ろを追いかけるようについてきた。
「じゃあ、私たちは結局……邪魔ものだといいたいんですか?」
「それは違う……人間というやつは、いつだって安全って言葉が大好きなんだ」
先生のあいまいな答えにしびれを切らしたのか、先輩は激情に駆られたように大声を上げた。
「答えになっていません!」
「俺には答えを教える権限がない」
「じゃあ、先生は何を答えられるのですか?」
「……さあな」
先輩の問いかけに対して、先生は投げやりに言う。
僕が考えるにだが、おそらく先生は能力に対抗する手段があるということすら最初は話すつもりなどなかったのだと考える。先輩もそのことは重々わかっているのだろう。それ以上感情的になることはなかった。
「わかりました。先生が言えないというのであれば、これ以上聞きません。それで、本当に彼女はFAじゃないんですか?」
「絶対だとは言い切れない……だがそれはつまり、俺たちの方法を駆使してもわからなかったということだ」
簡単な話だが、状況はかなり深刻だ。
「もし、彼女がFAだとしたら、それだけ強力な力を持っているとも考えられる……というわけですね」
「ああ、そういうことになる」
二人のいうことは最も、だ。僕だってそう思う。
彼女、宮下アヤメは先輩の能力をさらに上回る可能性だってあり得るというのが、僕たちが最も恐るべきことだろう。
現状、すべての人間は僕たちを恐れている。だがそれだけだ。近寄らなければいいというただそれだけのことである。そこに犯罪性はなく、恐れる必要性もない。触らぬ神に祟りがないということは歴史が示すとおりであり、触らなければなにもない。
実際のところ僕たちは神ではないが、宮下アヤメは悪魔に成り下がろうとしているかもしれない。
「だったら、せっかくもらってきたストーカーに対する情報も無駄になるかもしれませんね……」
僕がポツリとこぼした一言に、先輩は当たり前だという風につぶやいた。
「そもそも、それは無駄だったのですよ。だって、事例のないことにマニュアルを利用するなんて無謀もいいところだと思いませんか?」
「だったら、どうしてノウハウなんてもらったんですか?」
あまりにも衝撃的発言に僕は思わず愚かなことを聞いてしまった。
「いつか使えるからですよ」
確かに先輩のいう通りだ。どのようなものであったとしても、情報とは役に立つ可能性があるものだということは少し考えればわかることだ。
だがしかし、ストーカーの情報というのはいかがなものだろう。あまり役に立つとは思えない。
「それもそうですが……卒業したあと、探偵にでもなるおつもりですか?」
「何を言っているのですか……使うのは私じゃありませんよ。これからの部員です」
先輩は僕の心を読んだうえで、僕がまじめに部活を行うということを信じてくれているのだろう。だが残念な事実が僕たちを待ち受けている。
「これからって言っても、今のところ先輩が卒業したら僕以外部員は0になるわけですけど、そこのところはどうおかんがえで?」
僕にとってみれば残念でもなく、残党なのだが、僕たちのようなはぐれものしかいない部活に入りたがる殊勝な奴がいるはずもない。僕だって、先生に無理やり入部されられなければ一生見向きもしなかっただろう。
先輩は知らないが、少なからず部活という体制を維持できるほどに入部希望者があらわれることはないはずだ。
「なんですかその気持ちの悪い話し方は……次期部長として、来年は入部者の確保頑張ってください」
先輩も、もうすでにあきらめている節がある。
「いやいや、まだ今年もあるでしょうに……」
「じゃあ今年頑張ってください」
「先輩は頑張らないんですか?」
「もちろん私もがんばります。ですが、私がいる現在、入部しようと思う人なんて誠君ぐらいだと思いますけど……」
なるほど、先輩は僕と同意見らしい。もしかしたら先輩すらもいやいや入部したのかもしれない。
僕はひたすらに黙り込んでいた、部活の創部者ともいえる先生に視線を送った。先生は白々しくも慰めの言葉を発した。
「俺が言えた義理じゃないが、悲観せずとも入部希望者はいると思うがな」
「いや、いるわけがないじゃないですか……」
先生の言葉に、先輩はかなり否定的だ。まあ、僕が言えた義理でもないが。
「いたら困りますよ……」
先輩の言葉に隠れるように僕は小さくつぶやいた。
僕にとってこの部活は、たった一年の奉仕活動に過ぎない。新しい部員ななんてものに入られたら来年も部活が続いてしまう。すなわち、僕の青春が単なる奉仕で終わってしまうなんてことは認められないということだ。
「どんだけ、卑屈なんだよ……って今おかしなこと言ったやつがいなかったか? いたら困るだのなんだの」
「そんなこと言うやつがいるわけがないじゃないですか」
できるだけ先生に聞こえないように言ったつもりだが、聞こえてしまったようで、僕はあくまで冷静に誤魔化した。
「……まあいい、どうせ入部希望者がいなければ、お前のことこき使いたい放題だしな」
先生は僕の性格をしっかりと把握しているようで、結局のところすべて先生にこき使われる学生生活が待っているようだ。
だったら、できるだけ楽な方に行くしかない。
「さあ、この依頼が終わったら入部希望者を集めるとするか」
僕は今までの話をなかったことにしようと、大きくあくびをしながら歩き始めた。
「私も手伝いますよ」
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先輩と先生は僕の後ろを追いかけるようについてきた。
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