異世界で神から最強の力を手に入れたはずがそれが最弱だった件について
第一話 異世界へ
「ねぇ、ねぇ、ねぇってば!聞こえてるの?」
  どこかで誰かの声がする、誰かが俺を揺らしている気がする...痛い、痛い、痛くない?
  俺は最後あいつに刺されたはずだが、その痛みはもう感じない。
  これって俺まだ死んでない?九死に一生を得たてきな?そんなことはないとは思うが、だが信じずにはいられないこうして俺は意識があるのだから。
  目を開けられるぞと思い、俺は目を開けた、途端俺の目に写ってきたのは白い天井、白い壁、何もかもが白い部屋だった。それと、俺を膝枕している少女一人だった。
  少女はピンク色の髪をしており、目は赤く、衣装はピンク色で天の羽衣のようなものを着ている。
 歳は俺の推測で12歳程度だろうか。
「ここは?」
  俺が起きた途端、俺のボケ顔とは異なり少女はにっこりと微笑みかけてくる。真上にこんな美少女がいるのはとても悪い気はしない。
「やっと起きたみたいね。ここは、そうね、神の部屋とでも言っとくは、それと私はティシフォネ。選ばれた人をこの部屋に連れてきて、殺...いや送り出すのが私の役目」
  手を胸に当て堂々と言葉を口にする。
  今何か聞こえた気がしたが気のせいだったのだろう。
「神の部屋...、あははは、あははは、そんなもん、はいそうですかとすぐ信じられるわけねぇだろ、それと俺は確実にあの時死んだ、それだけはわかる...気がする、なのにあの時の外傷も痛みも無くなっていて、それでいて、ここは病院でもなければ神の部屋?マジでわからん、わからなすぎる、まだ天国に来たならまだ分からなくはないが」
  俺は立ち上がり、手のひら、服、腹の傷を確かめるがさっき起こったことがまるでなかったかのように無傷であった。
「信じるとか信じないとかはどうでもいいの、ここで魔王を倒す力を手に入れて、異世界に飛び出せば、いやでも分かるから、それと、そうあなたは一回死んだの、死んでこの部屋に連れてこられたのよ」
ティシフォネという少女はどこか吸い込まれそうに澄んだ目をしていた。関わりすぎると危険な感じがあった。
「そうか、知っているぞそれ、アニメや漫画でよくある異世界転生だろ?それが今自分の身に起きたというのか⁈それは嬉しいが、だが......理沙は?あれ?理沙!!理沙ーーーーーーーーーーー!なんで、なんであいつが殺されなければいけないんだよ!俺は理沙がいればよかった。理沙だけが唯一の大切な人なんだ、くそ、くそーー!!殺す!殺すーーーーー!」
  俺はあいつを殺せなかったのだ、自殺ということで逃げられてしまい、この憎悪や悔しみをどこにぶつければいいのかわからない。
涙が溢れてやまない、理沙のことを思うと胸が苦しい。
「理沙?あっ、それとあなたの彼女さん?えっと...双葉明日香さんだっかかな、も一緒に連れてきちゃったから、さっきあなたが寝ている間に先に行っちゃったよ、追いかけなくて大丈夫?」
「来ているのかよ!!ってか彼女なんかじゃないよ!あいつは、あいつは...」
  拳に力を入れ、俺の中にある復讐心と殺意がわきあがる。
  俺と俺の彼女を殺したんだ、許せる訳がない、許してたまるか!
 だがここに連れてこられたなら好都合だ、自殺なんかでは済ませない、絶対に、絶対に‼︎
「何か深い事情があるみたいだからそこまで詮索はしないよ、それと何か欲しいものある?一応君の全パラメーターは最大値までに上げて、神器もあげるよ。魔王を倒すためにあなた、いや竜二を呼んだのから」
「魔王を倒す?それならあんたが行けば良いじゃないか?それと、なんで俺なんだ?違うやつらでも居るじゃないか」
涙を拭っても拭っても涙が流れ、俯きながら俺は話す。
「私は天界は飛び回れても下界は行けないんだ〜、だから君に魔王討伐をお願いしたいんだ。後、君を選んだのは特に理由はないけどな〜」
「まぁわかった、おおよそわかった、魔王討伐を引き受ける。一回死んだ身だし、生き返らせてもらっただけ運が良かった。それより欲しいものって例えばなんだ?」
  中学の時にアニメやマンガで読んだこともあったことながら魔王討伐とあればやりたいに決まっている。
  男のロマンといっても過言ではない。
「えーとね、カッコいい服とかカッコいいサングラスとか...ね!」
「それってふつうにいらなくね?」
「私は可愛い服とか色々ファッションしてみたいからなんだけどなー、だから竜二もそうなのかなって思っただけ、いらないなら別に良いけど」
  ティシフォネは少しふてくされて頬を膨らます。
「どうでも良いよそんなの、てか肝心なお金はくれないのか?」
  神器はもらえるらしいので他に欲しいものはと聞かれると金ぐらいしか出てこない。
「最低限、金貨1枚は渡すけど、それ以上のお金渡したら堕落しそうだし、冒険者にもなってクエスト遂行でもしてお金稼いでね。あくまで魔王討伐が目標だよ!」
  金貨1枚は日本円で1万円くらいらしい。
「けちくせーな、神のくせに」
「、っ、っっつ私に対しっっ何という侮辱っ、万死にあたいするっよー」
  少し頬を膨らませ、顔を赤らめる、そこが少女らしく可愛いところだ。
「死んだら魔王倒せねぇーぞ」
 
  図星をつかれ、少し怯む。
「ふん、だったら魔王倒したらなんでも一つ願いを叶えてあげる、それでいいね⁈」
  安い挑発に答え、こいつちょろいなと俺は思う。
「なんでもか?」
「なっっ、なによ、もしかして、わ、私?」
  確かに、上から下まで目で追ったが、変な気持ちがあったわけでもない、断じてない。
「そんなわけないだろ!それより願いって元の世界に戻るってのも出来るのか?」
  なんでもと言われたら少しは希望を持ってしまう。
 異世界に連れてこられたら出られないというのもよくあることだ、そこはちゃんと確認しなければいけない。
「当たり前よ、私はなんでも出来るからね!」
  その答えを聞いて俄然やる気が湧いてきた。
 俺はまだあの世界でやらないといけないことが山ほどあるんだ、それを果たす義務が俺にはあると思う。
「そうか、それより早く下界に下ろしてくれ、魔王を早く倒してあいつを殺して元の世界に戻るんだよ」
「って、軽くあしらわないでくれるかしら、まぁそうね、時間も時間だし、わかったわ。それじゃ神器を着せるから両手をあげてね」
「はいはい」
  俺が両手を広げた途端、なにもないところから一瞬にして、神器が着せられた。
  神器は俺の想像してた鋼の鎧のようなものではなく、簡素で全体が黒い服でその後ろにローブがある。
「これはね、私が特注で用意したものでね。魔法無効化と全属性耐性、それと物理攻撃無効化を備えているのよ、後、これも」
 ティシフォネは立ち上がり床に刺さっていた剣を俺に向かって投げてきた。それを俺は見事にキャッチ。
「聖剣エクスカリバー、あげるわ」
  黄金に煌めく剣はとても美しく、綺麗だった。
 ってかエクスカリバーのくせに扱い雑じゃね⁉︎
 重さは重いと思う。そう思うのは多分、今は軽いがそれは全パラメーターが最大値まで引き上げてあるからで、そこらへんにいる有象無象では持ち上げることさえできないとオタクは推測する。
「ありがとよ、それじゃ世話になったなティシフォネ」
  俺は背を向け手を振る。
「竜二の第二の人生に絶望あれ」
  ティシフォネは祈りつつそう唱えた。
「なんか言ったか?」
「いいえなんでもないわ、竜二頑張って下さい、健闘を祈ります」
「おう」
  俺は満面の笑みを浮かべて、出口と思わしき所へ歩き出した。
「竜二、そっちじゃないよ、あっちが下界への扉だよ」
「おう、サンキューな」
   俺は下界への扉へと手をかけた。
   これから佐倉竜二の異世界譚が始まろうとしていた。
 俺は気付いた時には涙は流れてはなかった、目標ができたからかもしれない。だから俯かない、顔を上げ歩みを進める。
 
               手始めにまずはあいつを殺すかー
  その選択が絶望に陥れることだと今の竜二は知るよしもなかった。
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