奴隷として召喚された俺は世界最強の暗殺者になる
第11話 下民の少女
「リア、俺はリリネを監視する。リアはこの教室の様子やギルガを監視してくれ」
まずは暗殺対象の学院での行動がわからないと暗殺には移れない。
「了解しました。龍太郎気をつけてくださいね」
「リアもな」
俺はリリネを追うべく教室を出た。
だが、
「ってかこの学院のこと全くわからないじゃん。理事長がいる所ってどこだ」
このヴァナンガルド魔法高等学院については将来、魔法術師や整合騎士や回復術師などを目指すためにある学院だ。約500人が通う学院で敷地の広さは東京ドーム3個分にも及ぶくらいだ。一度見失ってしまったら見つけるのは難しい。
俺たちはFクラスという一番下のクラスに所属されたのだ。この学院で最も最弱なクラスだ。でも、暗殺に関しては全く関係ないが、俺はもう一つの目的がある。それはこの学校で一番強い奴を殺すこと。
「まぁ。学院を巡ってみるのも悪くはないか」
学院を歩いていくと授業中なこともあり静かだった。時折、各部屋からは生徒の声が響き聞こえた。さらに歩いて階段降りていくと、階段に腰かけている生徒がいた。
「どうしてここにいる?」
こいつには学院案内をお願いしたい。最初から本題を話すはあまりよろしくないだろう。
「あー。な、なんでしょうか?私に用があるのでしょうか...」
顔を上げずに塞ぎ込んだまま答える少女。
「あぁ」
「わ、私は教室に居たくなくて...。逃げてきたんです」
「そうか。理由は何かあるのか?」
「あ、あなたに言う必要性が感じられないです」
教室から逃げる。これは相当な原因がある。喧嘩や揉め事かはたまた、いじめって所か。
「そうか。言いたくないならしょうがない。俺が授業中にここへ来た理由は知りたくないか?」
「どうでもいいです」
「なら、俺もここにお邪魔しようかな」
俺も腰を下ろす。
「わ、私なんかと一緒にいたら貴方まで扱いが変わります。教室戻った方がいいと思います」
「俺は今日転入してきたんだ」
「聞きたくないです」
「そしたら、出て行け、退学しろって言われたんだ」
「......」
「下民は奴隷って、魔法が汚れるって」
「っっん...もしかして貴方も下民ですか?」
「そうだ。もってことはお前もか?」
「そうです。毎日の様にいじめられて、もううんざりなんです。蹴られたり、殴られることもありました。プリントを私にだけ配らなくて、椅子を後ろから蹴ってきて、上履きには画鋲が入ってました」
地味にプリント配らなかったり椅子蹴られるのやだよな。
やはり、こいつも下民だった。いじめられて陥れられている。そして、俺の話に食いついてきた。これは当たりだな。この学院を案内させて、この学院の情報を聞き出せば用済みだ。下民といっても亜人ではないのだ。俺がもし亜人って言ったとしたらこいつは通報して、奴隷として扱うに決まっている。貴族が下民、亜人を奴隷として扱う様に、下民も亜人を奴隷として見ているのだから。
だから、その為には距離を縮めるしかない。
リリネは見つからないから一度諦めるとして、こいつとの仲を深めよう。
「俺もこれから同じようなことが起こるのか?」
起こったとしても関係ないが。ただ殺すだけ。
「起こります。この学院で下民は私だけだったので、貴方も私と同じ目に遭うのかも知れません」
「それは大変だ」
「大変って騒ぎではないですよ!」
彼女が顔を上げた。目元は赤く腫れていて、先程まで泣いていたことがわかる。黒髪ロングで眼鏡をかけている。
「そんな簡単なことじゃ...ないんですから...」
また、泣き出しそうだ。
「だったら、次またいじめられたら、俺と話さないか?」
「何でですか?」
「少しでも、気が紛れるならいいなと思って...やだか?」
「そんなに貴方がそうしたいなら仕方ないですね」
「決まりだな。またこの時間この場所に」
「授業中ですよ?」
「俺はあまり授業を受けたくないんだ」
「そうですか。なら、こういうのはどうですか。毎日この時間この場所に集まって、いじめられなかったら花を一輪置く。そしたらその日はそれで終わりです」
「良いな。そうするか」
「はい!そうしましょう!」
「俺は佐藤龍太郎。お前は?」
「私はエリシア。よろしくお願いします...」
「あぁ。よろしく」
エリシアは泣いていた表情とは変わって満面の笑みを浮かべていた。
「えーと。さっき転入したばかりって言っただろ?もしよければ学院を案内してくれないか?」
これがこいつに声をかけた本題だ。
「もちろんです。下民仲間として当然です」
下民仲間としてか...。俺は情報源を手に入れた。これでことを順調に進められる。
「ここが食堂で」
「ここが体育館で」
「ここが庭園で」
「ここが礼拝堂で」
と色々エリシアに従うまま、学院を案内してもらった。学院を周り続けて疲れた。
「エリシア、理事長がいる所はどこかわかるか?」
「理事長室ですね。それは最上階の一番奥の部屋です」
「間違えていたのか」
俺は階段を下ってしまっていた。理事長室は教室の上の階だったのか。
「理事長に何か用ですか?」
「いや、エリシアには関係ないから大丈夫だ」
「なんかやな感じですけど、もういいです」
「ありがとうエリシア。大体は学院のことが分かった」
「力になれたのなら良かったです。龍太郎はこれからどこへ?」
「教室に戻るだけだ」
「なら途中まで同じですね。龍太郎はFクラスですよね?」
「何故わかった?」
「そんなこともわからないで転入したんですか?赤がA。青がB。緑がC。黄がD、紫がE、そしてFが無色なんです。服の肩の所が目印ですよ」
確かに、エリシアの服の肩は紫色だった。それに対して俺は色がなかった。厳密に言えば白か。
「FクラスはEクラスの隣なので一緒に行きましょう」
「知らなかった。こういう区別があるんだな」
「私は早くAクラスに行きたいな...。ってそれより行きますよ!」
「そうだな」
俺たちは歩みを進めた。
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