(魔)王立士官学院の日常

中川大存

第一話:「学長挨拶」

 
 諸君──入学おめでとう。
 紹介にあずかった、ガルロ・フォトルストメナンである。
 領内の未来を支えんと集まった諸君らと、今日この日に出会えたことを嬉しく思う。


 最初に断っておくが、私は一介の武辺者だ。名誉の負傷を経て軍から退き、この王立士官学院の学長の任を授かったが、後進を導き、育てるということに関しては経験がない。
 ただ戦場を駆け、武功を求め、部下を率いることのみに邁進してきた、それが私だ。
 であるから──懇切丁寧に、諸君らの個性に合わせ効率的に各々の力を伸ばすことについては、恥ずかしながらはなはだ自信を欠くと言わざるを得ない。その代わり、私の方法論、私の流儀によって伝えられることがあるならば全力で取り組もう。
 ある面では、他の誰よりも知っているのだ。
 一軍を率いて飛行する時の風の匂い。
 戦場に常に満ちている高揚感と、その裏返しの危険と恐怖。
 他者の命を奪うことの意味。
 無数の出会いと、無数の別れ。


 共に戦い、共に傷付き、私よりも先に死んでいった戦友たちは、私に多くのことを教えてくれた。
 受け取ったそれらを、今度は諸君らに与える。その事について、私は力を惜しまない。
 その思いはこの学院に所属する全員が持っている。
 諸君らの務めは──この学院での経験のすべてより学び、未来を担う戦士となることである。


 長い挨拶は苦手だ──これにて終わりとしよう。
 最後に一言だけ。
 諸君らが成長し、栄光という結果を勝ち取らんことを、そしてその過程が実り多からんことを、切に願う。



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