色災ユートピア
26.追跡者
ストーカーの一件から一週間ほど経った。
シーリスとシオンは赦無たちの授業を見学したり、護衛付きではあるがわりと外出が許されていたため、息苦しさはさほど感じなかった。
「…駄目だ、ストーカーが現れる気配が全然しない。」
赦無は難しい顔でそう呟いた。
咎喰を恐れているのか、それとも警戒されているのか。
どちらにしろ、進展がないのは確かだった。
「随分と悩ましげですね、弟くん。」
「俺は兄…」
ミルクティーを持って現れた咎喰。
呼称を訂正しようかとも考えたが、もしかしたら愛称的なものなのかもしれない、と思い赦無は諦めた。
「ミルクティーです、どうぞ。」
「…ありがとう。」
湯気が立つミルクティーを受け取る。
暗い明かりが、その横顔を淡く照らしている。
「…ねぇ、聞きたいことがあるんだけど。」
「私に答えられる質問であれば。」
咎喰は笑っている。
「あなたはコドク…なんだよね。」
「そうですね…現在では武器ですが、おおよそその認識で合っています。」
「じゃあ、その姿は?どうしてコドクとは姿が違うの?」
「この姿は、私がアウトサイダーになる前の姿です。まだ人間だった、弟妹が死んだ直前の時間の。」
「片腕…ないよね。」
「よく気が付きましたね。」
「いつも右手しか使ってなかったから。」
流石に分かりやすすぎたでしょうか、と咎喰は笑った。
「君の言う通り、私には腕がありません。この手足は、私が勝手に生やして使っているものです。」
「じゃあ、コドクやエクリプス・メアにもないの?」
「そうですね、アウトサイダーになっていなければ、失ったままだと思います。」
「…あの人は、なんであそこまで人間やヘレティクスを憎んでるの?」
「メアは、兄と弟妹が殺され、人間によって人柱にされ、アウトサイダーになり、最も力を得た、いわば全盛期の私です。その記憶と感情は、死と裏切りで形成されています。少し昔話をしましょうか。」
咎喰は近くにあった椅子に腰をかける。
「アウトサイダーは、こちらの表世界で生まれました。私たち兄妹や同年代の子供は、大人がしでかした罪の尻拭いをさせられた。」
「アウトサイダーを殺すこと…?」
「そうです。大人たちはアウトサイダーの正体が何であるかも調べず、いつかは殺せると信じていました。私たちは、それに巻き込まれた被害者でした。もちろん、そんな武器があるはずもなく、子供は次々と死んでいき、狡賢い大人だけが生き残った。長男は時間遡行…タイムループと呼ばれる力を持っていましたが、私たちをかばったことで命を落としてしまったんです。」
「…でも、その力をコドクやあなたたちは受け継いだ?」
「えぇ、死に際に託されました。ですが、その力を扱うには未熟すぎた。結局、弟妹を救えず、"約束"も果たせず、ただただ殺されるのを見ていることしか出来なかった。その時から、私はアウトサイダーを殺すためだけに生きました。例え大英雄だともてはやされ、祀られても、そんなもの無意味で無価値だった。」
ちらりと表情を窺う。
まるで人形のようだ。
起こったことを起こったまま話す、S.10と同じ姿。
「人間など、数千人生き残ればまたやり直せるというのに。人間は勝てた殺し合いを放棄して、私を人柱にして別の空間にアウトサイダーごと封じることにしたのです。」
「じゃあ、こっちにアウトサイダーがいないのは…」
「そう、私が犠牲になったから。元から人間はあまり信用していませんでしたが、その行動は許せませんでした。長男を見殺しにして、弟妹を見捨てた。そして、人間は私の邪魔をした。手足を奪い、芋虫のように地を這わせ、餌として投げた。だから、私は人間を許さない。全ての人類は、平等に私に殺されなければならない。その理由、出来事こそ、メアが憎む理由でしょう。」
「…あなたも、憎んでる?」
赦無は首をかしげる。
咎喰からは、エクリプス・メアのような憎悪は感じなかったからだ。
「憎んでいますよ、邪魔しない限り殺しませんけど。兄妹以外の人間は嫌いです。」
「…そっか。」
本人も理解しているだろう。
自分の感情を理解出来ないことを。
それでも、その行いを許してはいけないから、例えその感情を忘れてしまっていても憎まなければならない。
「…コドクのこと、全然知らないし、聞いたって答えてくれないから、何も分からなかったけど。でも…知れてよかった。得体は知れないし、人をからかって笑うような奴だし、ゼロがどうしてあそこまで信頼してるか分からなかった。だから、何かするんじゃないかって疑ってたけど…敵じゃないって分かった。ありがとう。」
「あはは、それを本人に伝えてあげたらいいのに。」
「絶対に何かしら言われるから、やだ。」
「うーん、こじれすぎてて逆に面倒ですね。今の関係。でも…そうですね、一つ確実に言えるのは…私たちは、いつだって君たちの味方ですよ。」
「…何それ。」
「時が来れば分かります。さ、今日は早いですし、もう寝た方がよろしいかと。」
「…深夜0時過ぎてたんだ、気付かなかった。うん、確かに今日だね。ありがとう、おやすみ。」
「えぇ、おやすみなさい。」
気持ちよさそうに眠る白理の横に寝っ転がると、布団をかけられる。
優しいお母さんがいたらこんな感じなのかな、と思いつつ、赦無の意識は沈んでいった。
それから数時間後。
時刻は早朝四時、今日は学園は休みだ。
何故目を覚ましたのか、それはもちろん侵入者が現れたから。
一番初めに気付いたのは咎喰、そして赦無と白理が続いて目を覚ます。
「こんな時間に侵入者ですか…迷惑というものを考えていらっしゃらないようで。」
「眠い……。」
「私と弟くんは夜更かしをしましたからねぇ。」
三人は部屋を出て、別室で息を潜めて待つ。
少しすると、真っ黒い格好をした、小太りの人間がシーリスとシオンの寝ている部屋に入っていった。
白理と咎喰で退路を塞ぎ、それを確認した赦無は小太りの人間を追って部屋に入る。
「そこの人間、今すぐ地面に伏せろ。」
ハンドガンを片手に脅しをかける。
小太りの人間は驚いて振り向き、腰を抜かした。
「ひ、ひぃぃ!!」
「しゃ、赦無…!助けて…!」
驚いて目を覚ましたシーリスとシオンは、涙目で震えている。
赦無は二人の無事を確認して、小太りの人間に目を向けた。
「お前か、二人をつけ回していたのは。ここまで侵入してくるとはいい度胸だ、このまま警察に突き出してやる。」
「ふ、ふん、警察なんかどうせ人手不足だろう!今更捕まったって、僕には後ろ盾があるんだ!怖かないね!」
小太りの人間は自信ありげに告げた。
賄賂を渡して釈放してもらうことは、今に始まったことではない。
そして、それはつまり、財力がある者が後ろで手を引いているということで間違いないだろう。
「…なら、ここで殺すか。」
「お、お前みたいなガキに殺せるもんか───」
赦無は遠慮なくスレスレに威嚇射撃をする。
戸惑いがない。
「ひっ…。」
「話さないなら、俺はお前を考えつくありとあらゆる方法で痛めつけて吐かせる。」
「わ、分かった!話す!二人を襲ったのはある人間の命令だ!そいつらは二人組で、元々は空き巣まがいのことをしてたヤツらなんだ!僕はそいつらに命令されて仕方なくやってた!姉の方はいいとして、こんなわがままで小さい妹なんてつけ回すもんか!」
「誰が貧乳よ!ぶっ殺すわよ!?」
「被害妄想では?」
「そ、それに僕は大きい方が好きなんだ!」
「いや、知らないよ。」
「この二人より、近くにいた白い髪の女の子の方が断然好みだった!」
「分かった殺す。」
「わーっ!ダメです弟くん!まだ待ってください!殺したら私が叱られてしまいます!」
慌てて咎喰が止めに入る。
話を聞いていた白理は、部屋の外で首をかしげていた。
「なんで止めるの、白のために殺さなきゃ。」
「そうよ!私たちを侮辱したそいつを殺してしまいなさい!」
「あーもう収集がつかないですね!殺すにしても時間と場所を考えましょう!」
「物騒な会話をしているのに誰もツッコまないんですね…。」
ぽそりとシオンが言葉をこぼす。
「それで、あなたに命令したその二人組について、他に情報は?」
「わ、分からない…でも、今夜二人を攫う予定だったんだ!待ち合わせ場所は、ここから一番近い港!」
「ふむ…船で行くにしても時間がかかりますし、口封じに殺す可能性もあります。となると…アルフ族が数人、数十人協力していると思ってよさそうですね。」
「どっちにしても殺されるなら殺す。」
「待ってください弟くん、人を殺してはいけませんよ。大丈夫、人間は私が何とかしておきますから。」
「…………。」
言葉の真意を理解した赦無は、静かにハンドガンを降ろす。
ありがとうございます、と咎喰は笑った。
「それと、こちらの持ち物はあなたの物ですよね?」
咎喰が取り出したのは、ストーカーが落としていった所持品だ。
ストーカーは少しだけ目を丸くした。
「な、なんでそれが僕のだって言える?」
「あなたがいつも持っているものですよね、この携帯。少し解析させていただきました。その結果、あなたので間違いないと判断しました。このままコレクションごと破壊してもいいのですが、懇願すれば返してやらないこともない。」
「最後の最後で素が出た…。」
思わず赦無が呟く。
そして、らしくもなく恐怖を覚えた。
これは、怒らせたらヤバいタイプだと。
「ちなみにバックアップもないので、一生手に入らないデータもありますけど。」
「や、やめてくれ!僕が必死に集めたコレクションなんだ!」
「何の話…?」
「弟くんには、特に関係のない話ですね。というか、この人間以外に関係のない話です。」
「返してください、何でもしますから!」
その言葉を聞いて、咎喰はニヤリと笑った。
そして、ぽいっと小太りの人間に向けて携帯を放り投げる。
「それでは道案内を頼みましょうか。シーリスさんとシオンさんはここにいてください。」
「だ、大丈夫なの…?」
「えぇ、私は姿形が自由に変えられるので、お二人に化けることは容易です。お二人を危険な目に遭わせるわけにもいかないですから、ここで待っていてください。」
「分かりました…お気を付けて。」
「もし怖かったら、枉徒のいる部屋に避難して。事情を説明すれば守ってくれる。」
「枉徒ちゃんはああ見えて銃の扱いが大変上手ですので、頼りになりますよ。それでは失礼します。」
咎喰は分裂した後、シーリスとシオンに姿を変えた。
そして、赦無と白理、小太りの人間とともに、港へと向かった。
シーリスとシオンは赦無たちの授業を見学したり、護衛付きではあるがわりと外出が許されていたため、息苦しさはさほど感じなかった。
「…駄目だ、ストーカーが現れる気配が全然しない。」
赦無は難しい顔でそう呟いた。
咎喰を恐れているのか、それとも警戒されているのか。
どちらにしろ、進展がないのは確かだった。
「随分と悩ましげですね、弟くん。」
「俺は兄…」
ミルクティーを持って現れた咎喰。
呼称を訂正しようかとも考えたが、もしかしたら愛称的なものなのかもしれない、と思い赦無は諦めた。
「ミルクティーです、どうぞ。」
「…ありがとう。」
湯気が立つミルクティーを受け取る。
暗い明かりが、その横顔を淡く照らしている。
「…ねぇ、聞きたいことがあるんだけど。」
「私に答えられる質問であれば。」
咎喰は笑っている。
「あなたはコドク…なんだよね。」
「そうですね…現在では武器ですが、おおよそその認識で合っています。」
「じゃあ、その姿は?どうしてコドクとは姿が違うの?」
「この姿は、私がアウトサイダーになる前の姿です。まだ人間だった、弟妹が死んだ直前の時間の。」
「片腕…ないよね。」
「よく気が付きましたね。」
「いつも右手しか使ってなかったから。」
流石に分かりやすすぎたでしょうか、と咎喰は笑った。
「君の言う通り、私には腕がありません。この手足は、私が勝手に生やして使っているものです。」
「じゃあ、コドクやエクリプス・メアにもないの?」
「そうですね、アウトサイダーになっていなければ、失ったままだと思います。」
「…あの人は、なんであそこまで人間やヘレティクスを憎んでるの?」
「メアは、兄と弟妹が殺され、人間によって人柱にされ、アウトサイダーになり、最も力を得た、いわば全盛期の私です。その記憶と感情は、死と裏切りで形成されています。少し昔話をしましょうか。」
咎喰は近くにあった椅子に腰をかける。
「アウトサイダーは、こちらの表世界で生まれました。私たち兄妹や同年代の子供は、大人がしでかした罪の尻拭いをさせられた。」
「アウトサイダーを殺すこと…?」
「そうです。大人たちはアウトサイダーの正体が何であるかも調べず、いつかは殺せると信じていました。私たちは、それに巻き込まれた被害者でした。もちろん、そんな武器があるはずもなく、子供は次々と死んでいき、狡賢い大人だけが生き残った。長男は時間遡行…タイムループと呼ばれる力を持っていましたが、私たちをかばったことで命を落としてしまったんです。」
「…でも、その力をコドクやあなたたちは受け継いだ?」
「えぇ、死に際に託されました。ですが、その力を扱うには未熟すぎた。結局、弟妹を救えず、"約束"も果たせず、ただただ殺されるのを見ていることしか出来なかった。その時から、私はアウトサイダーを殺すためだけに生きました。例え大英雄だともてはやされ、祀られても、そんなもの無意味で無価値だった。」
ちらりと表情を窺う。
まるで人形のようだ。
起こったことを起こったまま話す、S.10と同じ姿。
「人間など、数千人生き残ればまたやり直せるというのに。人間は勝てた殺し合いを放棄して、私を人柱にして別の空間にアウトサイダーごと封じることにしたのです。」
「じゃあ、こっちにアウトサイダーがいないのは…」
「そう、私が犠牲になったから。元から人間はあまり信用していませんでしたが、その行動は許せませんでした。長男を見殺しにして、弟妹を見捨てた。そして、人間は私の邪魔をした。手足を奪い、芋虫のように地を這わせ、餌として投げた。だから、私は人間を許さない。全ての人類は、平等に私に殺されなければならない。その理由、出来事こそ、メアが憎む理由でしょう。」
「…あなたも、憎んでる?」
赦無は首をかしげる。
咎喰からは、エクリプス・メアのような憎悪は感じなかったからだ。
「憎んでいますよ、邪魔しない限り殺しませんけど。兄妹以外の人間は嫌いです。」
「…そっか。」
本人も理解しているだろう。
自分の感情を理解出来ないことを。
それでも、その行いを許してはいけないから、例えその感情を忘れてしまっていても憎まなければならない。
「…コドクのこと、全然知らないし、聞いたって答えてくれないから、何も分からなかったけど。でも…知れてよかった。得体は知れないし、人をからかって笑うような奴だし、ゼロがどうしてあそこまで信頼してるか分からなかった。だから、何かするんじゃないかって疑ってたけど…敵じゃないって分かった。ありがとう。」
「あはは、それを本人に伝えてあげたらいいのに。」
「絶対に何かしら言われるから、やだ。」
「うーん、こじれすぎてて逆に面倒ですね。今の関係。でも…そうですね、一つ確実に言えるのは…私たちは、いつだって君たちの味方ですよ。」
「…何それ。」
「時が来れば分かります。さ、今日は早いですし、もう寝た方がよろしいかと。」
「…深夜0時過ぎてたんだ、気付かなかった。うん、確かに今日だね。ありがとう、おやすみ。」
「えぇ、おやすみなさい。」
気持ちよさそうに眠る白理の横に寝っ転がると、布団をかけられる。
優しいお母さんがいたらこんな感じなのかな、と思いつつ、赦無の意識は沈んでいった。
それから数時間後。
時刻は早朝四時、今日は学園は休みだ。
何故目を覚ましたのか、それはもちろん侵入者が現れたから。
一番初めに気付いたのは咎喰、そして赦無と白理が続いて目を覚ます。
「こんな時間に侵入者ですか…迷惑というものを考えていらっしゃらないようで。」
「眠い……。」
「私と弟くんは夜更かしをしましたからねぇ。」
三人は部屋を出て、別室で息を潜めて待つ。
少しすると、真っ黒い格好をした、小太りの人間がシーリスとシオンの寝ている部屋に入っていった。
白理と咎喰で退路を塞ぎ、それを確認した赦無は小太りの人間を追って部屋に入る。
「そこの人間、今すぐ地面に伏せろ。」
ハンドガンを片手に脅しをかける。
小太りの人間は驚いて振り向き、腰を抜かした。
「ひ、ひぃぃ!!」
「しゃ、赦無…!助けて…!」
驚いて目を覚ましたシーリスとシオンは、涙目で震えている。
赦無は二人の無事を確認して、小太りの人間に目を向けた。
「お前か、二人をつけ回していたのは。ここまで侵入してくるとはいい度胸だ、このまま警察に突き出してやる。」
「ふ、ふん、警察なんかどうせ人手不足だろう!今更捕まったって、僕には後ろ盾があるんだ!怖かないね!」
小太りの人間は自信ありげに告げた。
賄賂を渡して釈放してもらうことは、今に始まったことではない。
そして、それはつまり、財力がある者が後ろで手を引いているということで間違いないだろう。
「…なら、ここで殺すか。」
「お、お前みたいなガキに殺せるもんか───」
赦無は遠慮なくスレスレに威嚇射撃をする。
戸惑いがない。
「ひっ…。」
「話さないなら、俺はお前を考えつくありとあらゆる方法で痛めつけて吐かせる。」
「わ、分かった!話す!二人を襲ったのはある人間の命令だ!そいつらは二人組で、元々は空き巣まがいのことをしてたヤツらなんだ!僕はそいつらに命令されて仕方なくやってた!姉の方はいいとして、こんなわがままで小さい妹なんてつけ回すもんか!」
「誰が貧乳よ!ぶっ殺すわよ!?」
「被害妄想では?」
「そ、それに僕は大きい方が好きなんだ!」
「いや、知らないよ。」
「この二人より、近くにいた白い髪の女の子の方が断然好みだった!」
「分かった殺す。」
「わーっ!ダメです弟くん!まだ待ってください!殺したら私が叱られてしまいます!」
慌てて咎喰が止めに入る。
話を聞いていた白理は、部屋の外で首をかしげていた。
「なんで止めるの、白のために殺さなきゃ。」
「そうよ!私たちを侮辱したそいつを殺してしまいなさい!」
「あーもう収集がつかないですね!殺すにしても時間と場所を考えましょう!」
「物騒な会話をしているのに誰もツッコまないんですね…。」
ぽそりとシオンが言葉をこぼす。
「それで、あなたに命令したその二人組について、他に情報は?」
「わ、分からない…でも、今夜二人を攫う予定だったんだ!待ち合わせ場所は、ここから一番近い港!」
「ふむ…船で行くにしても時間がかかりますし、口封じに殺す可能性もあります。となると…アルフ族が数人、数十人協力していると思ってよさそうですね。」
「どっちにしても殺されるなら殺す。」
「待ってください弟くん、人を殺してはいけませんよ。大丈夫、人間は私が何とかしておきますから。」
「…………。」
言葉の真意を理解した赦無は、静かにハンドガンを降ろす。
ありがとうございます、と咎喰は笑った。
「それと、こちらの持ち物はあなたの物ですよね?」
咎喰が取り出したのは、ストーカーが落としていった所持品だ。
ストーカーは少しだけ目を丸くした。
「な、なんでそれが僕のだって言える?」
「あなたがいつも持っているものですよね、この携帯。少し解析させていただきました。その結果、あなたので間違いないと判断しました。このままコレクションごと破壊してもいいのですが、懇願すれば返してやらないこともない。」
「最後の最後で素が出た…。」
思わず赦無が呟く。
そして、らしくもなく恐怖を覚えた。
これは、怒らせたらヤバいタイプだと。
「ちなみにバックアップもないので、一生手に入らないデータもありますけど。」
「や、やめてくれ!僕が必死に集めたコレクションなんだ!」
「何の話…?」
「弟くんには、特に関係のない話ですね。というか、この人間以外に関係のない話です。」
「返してください、何でもしますから!」
その言葉を聞いて、咎喰はニヤリと笑った。
そして、ぽいっと小太りの人間に向けて携帯を放り投げる。
「それでは道案内を頼みましょうか。シーリスさんとシオンさんはここにいてください。」
「だ、大丈夫なの…?」
「えぇ、私は姿形が自由に変えられるので、お二人に化けることは容易です。お二人を危険な目に遭わせるわけにもいかないですから、ここで待っていてください。」
「分かりました…お気を付けて。」
「もし怖かったら、枉徒のいる部屋に避難して。事情を説明すれば守ってくれる。」
「枉徒ちゃんはああ見えて銃の扱いが大変上手ですので、頼りになりますよ。それでは失礼します。」
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