名探偵の推理日記零〜哀情のブラッドジュエル〜

耕一

第5章 生贄の檻 14

イワが部屋を出ていくのを確認すると、圭介は急いで倒れている鳥羽の元へと駆け寄った。

「オッサン!!オッサン!!!!」
圭介が思い切り体を揺さぶると、鳥羽は苦しそうに目を開けた。

「気を失ってるだけだったんだ。よかった」
その様子を見ていた亜美が安堵の声をあげる。

「三井……さんは?」
まだ体に力が入らないのか、途切れ途切れで話す鳥羽に圭介は三井さんがテロリスト達に連れて行かれてしまったことを伝えた。

「クソ!!警察がいながら2人も被害者を出しちまうなんて……」
鳥羽は悔しそうな表情を浮かべると、壁にもたれ掛かりながらその場に立ち上がった。

「ちょっと水もらえるか?頭がクラクラする」
鳥羽は後ろ手に掛けられた手錠で動きにくそうにしながら、ベッドの前まで行くと、そこにドッカと座った。

「あぁ、今持って来るよ」
圭介は鳥羽に水を飲ませるために洗面所の扉を開けた。

洗面台の前に立ち、置かれていたグラスを手に取った瞬間、圭介の脳裏にある考えがよぎった。

「これだ。これを使えば……」
圭介は独り言を漏らすと、急いでグラスに水を注いでベッドに座っていた鳥羽に水を持って行った。

手の使えない鳥羽の口にグラスをつけ、水を飲ませると、圭介はグラスを片手にその場に立ち上がった。

「みんな、聞いてくれて。これからみんなでここを脱出する」
全員の視線が一気に圭介に集中する。

「脱出って……一体どうやって?」
藤島が動揺した様子でベッドから立ち上がる。

「相手は拳銃を持っているテロリストですよ?もしその途中で見つかりでもしたらその場で殺されちゃいますよ」
さすがの城ノ口も圭介の突拍子もない言葉に焦りの表情を浮かべる。

「でもそれよりもまず、この中に紛れ込んでいる怪盗クロウの正体を暴く必要がある」
圭介は拳に力を込め、武者震いした。

圭介にとってこれは一か八かの賭けようなものだった。

確かに今までに怪しい行動をしていた人間が1人いたが、それだけでは怪盗クロウを追い詰めることは出来ない。

怪盗クロウの正体はこれからやる実験によって証明するつもりだが、もしこれで成果が上がらなければ、怪盗クロウにうまく言いくるめられ、圭介が立てた作戦が台無しになってしまう。

「クロウは一体誰に化けているの?」
俯いて考え込む圭介に肩を叩いて亜美が顔を覗き込む。

「あぁ、俺の推理が正しければ、怪盗クロウが化けているのは……あなただ!!」
圭介は一抹の不安を感じつつ、ある人を指さした。

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