名探偵の推理日記零〜哀情のブラッドジュエル〜

耕一

第2章 暗がりの黒翼 5

 「その怪盗クロウって一体何者なんだ?」

「俺も詳しいことは知らんが、三重県御浜町の海上に最近完成した神志山ホテルってあるだろ?」

「あぁ、あの赤澤財閥のやつか」

「そうそう。その赤澤財閥のトップ、赤澤勉がそいつから予告状を直接受け取ったんだと」

「直接?なんでそんな必要が?」

「さぁな。俺も詳しいことは知らん」

「ちょっと待てよ……」
圭介はそれに思い当たる節があった。昨夜自分の好敵手だと言った宙に浮く謎の男。

寝ぼけていたせいでよく覚えていなかったが確かにカードを直接受け取った記憶だけはあった。

「そいつ、昨日俺のところに来たやつかもしれない!!!」

「何!?本当か?それは?」
鳥羽はテーブルに両手をつき、身を乗り出した。

「あぁ、確かそいつ俺にカードを……」
圭介はそう言ってズボンのポケットを探る。

「あった!!!」
手に触れたカードを卓上の上に勢いよく叩きつけた。

そのカードは黒く、そこに真っ白な字でこう書かれていた。

『月が闇夜を照らす時、紅く輝く血の宝石ブラッドジュエルを手中に収めるべく、神志山ホテルに参上いたします。
             怪盗クロウ』

「これは奴からの挑戦状をお前が受け取ったってことか?」

「そうみたいだな……」
圭介は拳を強く握りしめ、武者震いした。

「望むところだ」

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