Door

ノベルバユーザー369032

Door9 ギーヴル討伐戦

木の上から降りてきたギーヴルは、体長が約15mの大物であり、いつもは焦げ茶色をしているのだが脱皮したての為か、薄茶色をしていた。
ギーヴルはまず正面にいる敵に対して、巨大な口を開けて丸呑みにしようとする。
飲み込めない場合、尻尾を思い切り振りかぶって、敵めがけて横から叩きつける。
それを何度か繰り返し、弱ってきたら捕食する。
対処法はレインが正面からガードして、自分が横から行き、まず尻尾を切断すること。尻尾が無くなれば、こちらがかなり有利になるはずだ。

「コイツはかなりの大物だな。蓮どうする?」
「レインはこのまま奴の正面でガードを維持してくれ。アリスはひらけた場所に罠を設置!自分は横から隙を突いて攻める。」
「「了解!」」

奴はまだこちらを睨みながら警戒している。だが本能でこちらが殺す気でいるのに気づいたのか直ぐにレインに向かってきた。
レインの盾は、西洋の騎士が持っている様な逆三角盾で下の尖った部分を地面に突き刺し、相手のパワーに押されない様に最大限の防御姿勢を取る。
ギーヴルは巨大な口を開け盾に噛み付いて来たが、レインも場数を踏んで来ただけあって1m程押されてだけで踏み止まる。
ギーヴルがレインの盾に食らい付いてる間に、自分はまず双剣の片方だけを抜き両手で構え、タイミングを見極める。

「今だ!蓮 ︎」
「よしっ!」

尻尾が浮き上がったところを狙い、素早く飛び込み下から斬り込んだ。
完全に切断した感覚があったが、いつもより軽く感じた。切り離した尻尾がビチビチと跳ねている。

「柔らかいな。」

脱皮したての為、鱗と身体が柔らかくなっていた。これはまたとないチャンスだ。
しかしながら奴も相当お怒りのご様子で、切れた部位から血を撒き散らしながらバタバタと悶え、呻き声をあげる。

「グゥゥシャァァァア ︎」
「こっからが勝負だな。」
「来る!レイン!」

尻尾を切った恨みからか、今度は自分を狙って来た。

「任せろ!」

そうは行くかとレインはすかさず、蓮の前に出てガードするが、奴もバカではない。
頭はレインの盾に噛みつき尻尾の方(もう切れてるが)でレインを横から、薙ぎ倒そうとしていた。
蓮はすでに何度かギーヴルと戦っている為その行動は読めていた。
双剣のもう片方を抜き剣をクロスさせ尻尾の叩きつけを全力で受け止める。

今はまだ時間を稼ぐ必要があるが、下手に手を出せば毒を出しかねない。
受け止めては押し返し、また受け止める。レインも振り回されそうなのを必死に抑える。
しばらく防御に徹し時間を稼ぐと、遠くからアリスの声が聞こえた。

「罠準備オッケーだよぉぉ!」

声を聞いてレインと目で合図すると、レインは頷き2人同時に力一杯ギーヴルの身体を押し返した。

「レイン、罠まで退くよ!」
「了解だ!」

全力でアリスの後を追いかけ、その間もギーヴルが付いて来ているか後ろを確認する。よし、ちゃんと来てる。
今の所ミスもなく順調だった。後は罠に掛け、頭を切れば勝ちだ。
だが自分も初のリーダーだった為、ここでミスをしてしまった。

しばらく森を走ると、何故かぽっかりと草木の生えてないひらけた場所に出た。
しまった。自分の迂闊さに今気づいた。

普段は自分で罠を使うことが無いので、罠を張る場所はアリスに任せた。事前に調べておくべきだった。
森の中に草木が一本も生えてない場合、あるモンスターの縄張りである可能性が高く、アリスはその事を知らなかった。

しかもギーヴルに狙われない様にアリスは自分達から離れ、モンスターの縄張りのど真ん中に立ってしまっていた。

「おい、ここって!」
「あぁミルメコレオだ、アリーースッ ︎逃げろぉぉぉ ︎ ︎」
「えっ?」

必死で叫んだが一足遅く、地中から巨大なモンスターが飛び出して来た ︎

ミルメコレオ。土虫種
体長は7~10m、とにかく巨大なアリジゴク。だがアリジゴクは流砂の様に砂で罠を作り、その真ん中でアリやダンゴムシを待ち、そいつらの血を吸い取る虫だが、ミルメコレオは砂の中に隠れその前を通ったら、いきなり飛び出し巨大なハサミの様な顎で獲物を捕らえ捕食する。
基本的には砂の中にいて、そのまま泳ぐ様に移動したりもする。

アリスを獲物として狙いを定め、襲いかかるミルメコレオ。
こんな所でまた自分は仲間を失うのか。
嫌だ!何としてもアリスを守りたかった。
その一心で必死に走るが、ギリ間に合わない。だがその時、森の中から何かが飛んで来た。
それがミルメコレオに突き刺さり、アリスの反対方向に仰け反った。
何が起こったか最初は分からなかったが、奴の頭に深く矢が刺さっていた。
自分達の他にも誰かがいる。
だけど今は、誰かを調べる事よりもアリスを助ける方が先だ。

「アリス!こっちだ!」
「うん!」
「俺たちの他にも誰かいやがるな。」
「うん、だけど今は目の前のコイツを何とかしないと。」

とりあえず目の前にいるミルメコレオを早急に倒す必要がある。もたもたしてるとギーヴルまで来て、挟み撃ちになったら流石にキツすぎる。
多少強引だがあの方法で行くか。

「アリス、ビンを用意してくれ。」
「爆弾使うの?何するつもり?」
「自分が奴を倒す。ビンを投げるタイミングの指示を出すから投げられる準備しといて。レインはギーヴルを警戒して自分とアリスの背中を頼む。」
「分かった。任せろ!」

自分はすぐにミルメコレオの横に移動すると、タイミングを見極める。
奴は頭の矢がまだ気になっていたが、自分達に意識を戻すと地形を生かして砂の中に潜ろうとする。
砂に潜ったらこちらの攻撃は通らなくなるからだ。
だが今が一番のチャンス!

「アリス今だ!奴の近くに投げろ ︎」
「オッケー!」

アリスが投げたビンには仕掛けがしてあり、手榴弾と同じで少し時間が経つと爆発する様になっている。
奴はもう既に半分くらい潜っていたがその手前にビンが落ちた。いい所に投げたな、後でアリスを褒めてあげよう。

[ドッォォォーン ︎ ︎ ︎ ︎]

「ギィィィィィ ︎」

かなり効いたな。ミルメコレオは砂の中でも獲物を見つける手段として音にとても敏感であり、爆弾の物理的な衝撃よりも音の衝撃の方がダメージはでかい。
音に驚き頭が上がった所で自分は助走をつけて思いっ切り飛び込んだ。

「そぉぉりゃあ ︎」

逆手に持った双剣二本を奴の頭に突き刺した。

「ギィィ!」

ミルメコレオは少し悲鳴の様な声を上げそのまま後ろに倒れた。
双剣を引き抜き緑色の血を軽く振り払う。直ぐに周囲を見渡すと視線を感じ、アリスはホッとした表情をしていたが、自分は慌てて駆け出そうとした。

ギーヴルはジッと森の中で潜み油断した獲物を狙っていた。
そして蛇特有のウネウネした動きと共にアリスに近づき、一気に加速し襲いかかる。

「危ねぇ!」
「うわぁ ︎」

既に警戒していたレインは、いち早くアリスの前に出てガードする。

「まだ気ぃ抜くな!危ねーぞ。」
「ゴ ゴメン。」

その時またしても矢が飛んで来た。
ギーヴルの胴体に2本突き刺さり、身悶えながらジタバタと暴れ、尻尾の方が森の木の1本に当たると木の上から声がした。

「キャッ!」

ん?女の子の声?
木の上を見ると、弓を持った女の子が木にぶら下がり、今にも落ちそうだった。
ヤバイな。とにかく助ける為に木まで走ると、

「落ちるぅ…」

いや、落ちてるよ。
慌てて受け止める準備。ドンッと衝撃が来て何とか堪えたが、正直キツかった。
落ちて来た女の子は何が起きたか分からず混乱しており、とりあえず声を掛けた。

「だ 大丈夫?」
「ん?あれ?」

ひとまず今はそれどころじゃないので、女の子を腕から下ろしギーヴルを見ると、ブルブルと震えながらこっちを睨んでいた。

「マズイぞ。毒だ!アリス一旦離れるぞ。」
「分かった!」

レインとアリスは離れたが、こちらは後ろに女の子がいるし、奴はこっちに向かって来る。だがここに来てようやく本来の目的が達成された。
偶然にも罠に掛かってくれた。
トラバサミの巨大版の罠はギーヴルの胴体を挟み動けなくした。

今しかない!奴の首を跳ねる為に瞬時に頭の下に潜り込む。

「ハァァァッ ︎ ︎」

下から上に全力で双剣を切り上げる。
声を上げる間も無くギーヴルの頭を跳ね飛ばした。
何とかなった。こんなに疲れたのは久々だ。色々ありすぎだ。アリスがボソリと、

「やった…」

レインは落ち着きながら、

「終わったな。ってあれ、シャルか?」
「レイン、お疲れだったわね。」

アリスが尋ねる。

「えっ、知り合いなの?」
「あぁ、子供の……りあい……でな……」

あれ、おかしい…ギーヴルの……毒か…
そのまま倒れ込んでしまった。

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品